第92話 スローライフ万歳!
世の中に迎合することも時には必要。
そんな作者の柔軟さがいかんなく発揮される今回のお話です。
読者からの感嘆の声が聞こえてくるよ。幻聴だろうけど。
軽キャンクラブの一行がドラゴンの里に帰って、数日が過ぎた頃……
毎日平和で、まことに結構……なのだが、
「暇だ」
最近が忙しかったりと異常だったから、余計にそう思うのだろう。
王国だの、決戦だの、覚醒だの……思えば修羅場の連続だった。
平和になった今だからこそ、スローライフを満喫しよう。
そう、ほのぼのだ。
異世界で、キャンピングカーで、仲間とキャンプ。
火を起こして焚火を囲んで、歌でも歌うか?
結局は、そんなのが好きなんだろう? 世の中は。
「俺だって人気になりてーんだよ!」
PV増やして、評価だって欲しいし。
ん?
誰に?
俺は何を言ってるんだ?
いや、いいじゃん。
そこは深掘りしない!
そう言う訳で、今回はスローライフに挑戦するぞ、俺は!
挑戦しつづける俺、かっこいい。
読者からの好感度が天井知らずだぜ!
「よっしゃ! やりますか」
軽キャン村を散策することにした。
散歩だ。
いかにもスローライフっぽい。
……楽しいか?
いやいや、俺が疑問を持ってどうする。
スローラーーイフ!
歩いてりゃなんか起きるだろう。
そんなイベントが起きないで淡々とするのがスローライフなのでは?
スタートして間もないが、めんどくさくなってき……ダメダメ!
「おう、ウィズ!」
出会った第一村人に声をかける俺。
バドミントンのライバルである勇者・前川がいなくなって、どこか寂しそうじゃないか。
俺が代わりを務めれたら良いんだろうけど、ウィズと張り合えるほどバドミントンが強いわけじゃない。
「女……か?」
そうだよ。
ウィズの寂しさを紛らわせるのは、ウィズのパートナーとなる女性が一番だ。
そもそもウィズ以外、彼女や嫁さんがいるからな。
それで、いじけてる面もあるんだろう。
聞いたわけじゃないけど、どうせそうだ。
「……かわいそうに」
「朝っぱらから、人に向かってかわいそうとか、頭おかしいのか?」
「強がるなよ、ウィズ」
「いや、何が?」
ウィズの奴、意味不明みたいな顔しやがって。
しょうがねぇな。
答えはわかっているが聞いてやるか。
本人に自覚を持たせるのも大切だからな。
「ウィズ。
女が欲しいか?
あー、イエスかノーで答えろ。
ごちゃごちゃ言われても、セリフが長くなって読者が飽きる」
俺は真剣な眼差しでウィズに聞いた。
「い、イエス」
ウィズは、???? となっているが、気にするな。
正直な事は良い事です。
「さてと。
なら決まりだな。
こんな事してらんない」
スローライフ終了。
そんなもんより、仲間の事の方が大切に決まってる。
面白くねぇし。
「じゃ、行くぞ!」
俺はウィズの手をとり、そのまま走り出した。
レイラとプロムの元へ行き、ウィズの女を探してくると伝えた。
「あ、そう。
で、夕飯までに帰ってくる?」
レイラ、またそれか。
夕飯の用意する人間からしたら重要な事だもんな。
ウィズを見る。
「……」
うん。
これは……時間かかりそうだ。
ウィズの奴、自分の事なのにやる気が感じられない。
人より努力しないと、お前なんか好きになってくれる人間などいないだろうに……
(……俺の努力次第だよな、こいつは)
「なんだ?
人の顔をジロジロ見て。
その顔、絶対に俺に対して失礼な事を考えているだろう」
「……別に」
ウィズの野郎、お願いしますだろ。
誰の為に俺が頑張るのか理解できないんだろう。
しょうがねぇ。
俺に任せとけ。
俺は、ウィズに微笑みかけてやった。
「レイラ。
多分数日かかるから、俺の分用意しなくていいからね。
あっ!
あとな、俺がいない間にヘリウスが来たら、悪いけど酒とツマミだしてやって」
「わかった。
こっちは心配しないでいいから、気を付けていってらっしゃい」
「ごめんな、レイラ。
ウィズが、アレだから」
ウィズをちらっと見ると、え? って変な顔をしていた。
「俺が、アレって、どういう意味だ?」
「ん?
気にするようなことはないから、心配するな!
そんな事より、時間が惜しいから急ぐぞ!」
俺とウィズは、ミロースを探して走った。
いた。
いつものように、ヘリウスと軽キャン村に向かって歩いてくるのが見えた。
「ミロース! 町まで、いっちょ運んでくれ」
俺が笑顔で言うと、ヘリウスが「ビールどうするんだ?!」と怒ってきた。
抜かりの無い俺が、レイラ達に頼んであるから酒とつまみの心配しなくて良いと教えてやった。
「なら、行ってよし!」
ヘリウスに許可をもらった。
別に外出に許可など要らないのだろうけど、ミロースに協力してもらうからな。
ちゃんと、ヘリウスに便宜を図る。
当のヘリウスは気にしてなどいないようで、軽キャンに走って行っちゃった。
「……アル中だな、あれは」
嬉々として軽キャンに向かうドラゴンの長の後ろ姿に、自然に声が出た。
「で、どこに行くんだ?」
ぼーっとしている俺にミロースが聞いてきた。
見ると、納得していない顔をしていた。
「悪いなミロース。
悪いけど、女のいるとこならどこでも良いから運んでちょうだい」
ウィズの嫁さんになってくれるような奇特な人間がどこにいるなんて、そんな場所なんか知らない。
ミロースは少し考えてから、ドラゴンに変化してくれた。
そして、乗れとばかりに背中を俺達に向ける。
俺とウィズが、よいしょと乗り込むのを確認したミロースが羽ばたきを開始して、空に浮かんだ。
バサッ、バサッ、バサーー!
「ウィズ!
お前にぴったりの女性が見つかるまで、妥協すんじゃないぞ!」
焦って変な女に引っ掛かったら可哀想だから、俺はウィズに忠告した。
本当に好きな相手とくっついた方が良いに決まってる。
ウィズは、俺の言葉に大きく頷いて、真剣な顔つきになりやがった。
よし、よし。
やる気が出てきたみたいで、結構じゃないか。
「んで、タイプは?」
調査の為、ウィズを尋問する。
「え、えーと、わかりません」
「……」
そうだよね、質問が悪かった。
確かに、ザクッとしすぎだ。
「んじゃね、おっぱいは、大きい方がいい?」
ウィズは、いっちょまえに腕組して考える。
「わかんないっす」
考えて、それか。
そう思ったが、俺は優しいので「そうか」とだけ答える。
「可愛い系と、綺麗系どっちが良い」
ウィズは、また腕組して考える。
「わかんないっす」
うん。
聞いた俺が間違っていた。
(……めんどくせぇし、ウィズの相手は、取り合えず女の子であれば良いだろう)
ミロースが飛行を続けてくれる。
風が気持ちいい。
空は青い。
ウィズは残念。
よし、旅の始まりとしては完璧だ。
責任感と仲間思いが服を着ているような男、俺ヒロシ。
ウィズの為に嫁さんを探してやるってボランティアを思いつきで開始した。
きっとウィズの気に入る女の子がどこかにいる。
玲和の寅さん事、本作だが、ちゃんとくっつけてやるからな、ウィズ!




