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66話 平和な朝に拉致

レイラとプロムに俺の真摯な態度が伝わったのか、許してもらえた。

許してもらえた理由を自分なりに分析した結果、理解ある奥さんなのと、俺が真面目で誠実だからだという結論にいたった。

 次の日の朝――


 昨夜のレイラとプロムの怒りは、なんとか俺の誠意(と体力)で鎮火した。


 俺は、そんな理解ある二人を心の底から愛している。


 その代償としてなかなか寝させてもらえなかったのだが、それだけ俺たちが愛し合っているということなのだろう。


 これが真実の愛だ!


 ……などと、しみじみ思いながらも――


 朝のシャワーを浴びるキャスカを、こっそり覗く俺。


 いや、もちろんやましい意味じゃない。

 キャスカはまだ子供だ。

 だからこそ、シャワーの温度が熱すぎたり、魔導水圧が暴走したりしたら危ない。


 俺は、保護者として安全確認をしているだけにすぎないのだ。


 俺が直々に見守りしてるってキャスカが気づいたら気を遣うだろ?

 だからこっそりと扉の隙間から様子をうかがっているのだ。


「うへへ……元気に洗ってるな……」


 だが、俺は断じてロリコンではない!

 天地がひっくり返っても、そんな属性は持ち合わせていない!


 湯気が濃くてシルエットしか見えないのが残念…… いや、安全確認だ、安全確認。



 そんな他愛のない朝の日常を満喫した俺は、ぶらぶらと散歩がてら街に出ていた。


 こそこそと、カイがついてくる。

 気づいていないとでも思っているのだろうか?


 俺は走って角を曲がった。

 カイが慌てて追いかけてきて角を曲がったが、俺が仁王立ちで待ち構えていた。


「何か用?」


 カイは一瞬、心臓が止まったような顔をしたが――


「レイラ様が、ノガミさんの護衛と監視をしろと……」


 観念したのか、正直に白状した。

 そういう事なのね。

 レイラも心配性だねぇ、それに付き合わされてカイも災難だな。

 やめろと言ってもカイに迷惑がかかるだけだろう。


「あー、わかった、わかった。もう隠れなくていいから。

 ただの散歩だけど、暇ならついてこいよ」


 カイの様子から、レイラに十二分に「教育」されたのがよくわかる。


 可哀想に……


 俺が小声で「また良いとこに連れていってやるからな」と言ってやると、

 カイは目を輝かせて喜んだ。


 可愛いやつだ。


ゴーン! ゴーン!……


 街に教会の鐘が鳴り響く。


 俺とカイは顔を見合わせた。


 周囲の人々が、ざわつきながら大通りへ走り出す。


「ムトゥ将軍が帰還されたぞ!」

「戦況はどうなったんだ?」

「もう戦闘が終わったのか?」


 人々が口々に言いながら駆けていく。


「なんだろうな?

 カイ、俺達も見に行こうぜ」


「そうですね。

 行きましょう」


 俺とカイも人の流れに乗って、大通りへ向かった。



 大通りはすでに人で埋め尽くされていた。


 しばらくすると、遠くから数名の騎馬と馬車がこちらへ向かってくるのが見えた。

 周りの声を聴いててわかったが、戦争に行った兵士たちが帰還してきたらしい。


「ん、あれは?」


 馬車の荷台に、お尻に包帯を巻かれて寝かされている男がいた。


 ……グラナス高原でフリチン丸太にしてやった奴じゃないか?

 この国の人間だったのか。

 思ったよりも元気そうじゃないか。

 目があったので軽く手を振ってみたが、すげぇ睨まれた。

 過ぎたことを根に持っているんだろう。


 などと思いながら、通り過ぎていく馬車を眺めた。


「なんか大変そうですね」


 カイが言うので、俺は「そうだね」と答え、街の散策を続けることにした。

 この国の戦争の事など俺には関係がないからな。


 フリチン丸太にしといて言うのもアレだが、今日も平和だ。



 冒険者ギルドに来てみれば、掲示板には戦争関連の依頼ばかりが並んでいた。


 とりあえず、状況は理解した。


 だが、そんな依頼は俺のやるべき事ではない。

 今日は休憩して帰ろう。


「カイ、ちょっと遊んで帰ろうぜ」


 俺は、カイを引き連れ、昨日のリベンジへ向かう。

 カイは二日連続で遊びに行ける喜びに満ち溢れた顔をしていた。


 ウキウキしながら通りを歩く俺達の前に、騎士の一行が現れた。


 ……こっちを見ている。

 なんだろう? 感じが悪いし、いやな予感。

 面倒な事になりそうだ。


「お前達、止まれ」


 声がしたが、俺は無視して歩く。


「お、おい、止まらんか、ちょっと待て!」


 さらに無視して歩く。

 聞こえない、聞こえない。


「そこのお前だよ! さっき目が合っただろう、止まれ!」


 声の主がこちらへ向かってくる。

 俺にやましいとこなどないが、言う事を聞く義理も無いので、


「逃げるぞ」


 俺はカイに言って走り出した。

 後ろで騎士たちが止まれだとなんだの言ってるが、知った事か。


 その時――

 

「二人とも止まれ!」


 走る俺達の前に、女騎士が飛び出してきた!


「わっ! 危ないって!」


 いきなり道をふさいできたが、走ってるのに危ないだろうが!

 何とか、ぶつからないで済んだけど、


「わ、わ、わ、急に止まら……!」


「うぎゃッ!」


 後ろを走っていたカイが止まりきれず、俺にぶつかってきた。

 俺とカイは女騎士の足元にすっころんで倒れた。


 倒れてる俺たち二人を上から観察するように女騎士が見下ろしている。

 何なんだよ?


「……貴様がムトゥを? 引っ捕らえよ!」


 女騎士の声が響く。


「は? え? 何でだよ!」


「ノガミさん!」


 混乱する俺とカイを駆け寄ってきた騎士たちが拘束した。


「いてて、もっと優しくしろ!」


 突然拘束された俺は、女騎士を睨みつける!


 だが、可愛かったので笑顔になってしまった。

拉致られちゃった。

積極的な女だぜ、まったく。

……などと、冗談を言ってる場合じゃないのだろ。

拉致られたからな。

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