第61話 仲間の決断と、新しい旅路
俺とウィズの両パーティが揃ってランクしたってのに、ウィズの様子がおかしい。
どうしたんだ?
異例の三段階のランクアップを果たし、
「流石俺だぜ!」
などと笑顔でギルドを出ようとした瞬間だった。
「……俺達のパーティーを解散しよう」
背中に刺さるようなウィズの声がした。
「は? なにを?」
思わず振り返ると、ウィズは仲間の前で深く頭を下げていた。
その背中は、いつもの豪快さとは違い、どこか寂しげで、そして決意に満ちていた。
「すまん。俺は……ヒロシについて行きたい」
静かな声だった。
けれど、その言葉には揺るぎない覚悟があった。
カイ、バン、フィリーの三人は驚いたように目を見開き、
次の瞬間、互いに視線を交わして頷き合っている。
「ウィズ……お前、本気か?」
バンが低い声で聞く。
「ああ。本気だ。
ヒロシと一緒に戦って……俺は、もっと強くなりたい。
それに……あいつといると、なんか……楽しいんだよ」
その言葉に、胸がズキッと痛んだ。
――やめろ。
そんな真っ直ぐな目で言うなよ。
だって、お前らはAランクになったばかりなんだぞ。
俺達のパーティーに入ったら、ランクはCに落ちるってのに……
せっかく掴んだ最高ランクを手放すことになるのに、わかってるのか?
そんなの……
「あー、ウィズ。
お前は何を言っているんだ?
せっかくAランクになったばっかりなのに、本当に何を言ってるんだか。
ランク、下がるんだぞ?
俺たちはランクC!
それも理解してないで何を言い出すんだか、バカバカしい」
俺なんかの為にキャリアを潰す必要なんてないんだ。
だから、言ったのに……
ウィズは笑った。
「知ってるよ。
でもな……ランクより大事なもんがあるんだよ」
「大事なもん……?」
「仲間だよ、ヒロシ」
胸が熱くなる。
ずるいぞ……そんなの言われたら泣くだろ。
カイが前に出て、俺を真っ直ぐに見た。
「ヒロシさん。僕達も決めたんです。
ウィズだけじゃない。僕達も……あなた達と一緒に行きたい」
フィリーが胸に手を当て、柔らかく微笑む。
「ヒロシさん達と一緒にいると……不思議と怖くないんですぅ。
あの時も、助けてくれたし……」
バンは腕を組んだまま、ぶっきらぼうに言う。
「……ランクなんざ、また上げりゃいい。
あんたが、言った事だ。
それより……お前と一緒に戦う方が、俺は好きだ」
俺は言葉を失った。
こんなにも真っ直ぐに頼られるなんて、思ってもみなかった。
でも――
「……本当にいいのか?
俺なんかに……ついてきて」
思わず弱音が漏れた。
するとウィズが、いつもの豪快な笑顔で俺の肩を叩いた。
「バカ言え。
俺達は、お前を選んだんだ。
お前がどう思ってようが関係ねぇ。
俺達が決めたんだよ!」
その言葉に、胸の奥の重さがスッと消えていく。
――ああ、こいつらは本気なんだ。
レイラ達をみると……
そうか。
「ありがとう」
俺は小さく呟くとギルドマスターの前に歩き出した。
「ギルドマスター。
戦士ウィズ、弓使いカイ、盾役バン、魔法使いフィリーを……
ヒロシ・ノガミのパーティーメンバーに登録してくれ」
ギルドマスターは微笑み、頷いた。
「承知した。良い仲間に恵まれたな、ノガミ」
手続きが終わると、ウィズ達は正式に俺達の仲間になった。
ウィズが手を差し出してくる。
その手は大きくて、温かかった。
「……ヒロシ、よろしく頼む!」
「こちらこそ。頼りにしてるぞ、ウィズ」
握手を交わすと、カイ、バン、フィリーも次々と手を重ねてくる。
「これからは、同じパーティーですぅ!」
「よろしくお願いします、ヒロシさん」
「……変なことしたら殴るからな」
最後のはバンだ。
お前は本当にぶれないな。
レイラとプロム、ルファス、キャスカも後ろで微笑んでいた。
「ヒロシ、良かったね」
「仲間が増えるのは素敵なことですわ」
「戦力が増えるのはありがたいです」
「ヒロシ様、夜がさらに忙しくなりますね」
「プロム、黙ろうか」
フィリーが完全に引いてるじゃないか。
俺は見境なしか?
ただ、ひとつだけ気がかりがあった。
「悪いな……せっかくAランクになれたのに」
俺が言うと、ウィズは首を振った。
「しつこいぞ!
ランクなんて、また上げりゃいいだけだ。
それより……お前達と一緒に行ける方が大事だ」
カイも笑う。
「そうですよ。僕達は、強くなりたくて冒険者になったんですから」
フィリーも頷く。
「また一緒に頑張るですぅ、ヒロシさん」
バンは鼻を鳴らす。
「どうせすぐ上がるだろ。お前らと一緒ならな」
……なんだよ。
お前ら、そんなに俺を買ってくれてたのか。
胸が熱くなる。
「当然だ!俺だぞ。
すぐにAランクに、いや、Sランクにしてやる!
なにせ、俺だからな!」
「なんの根拠もない!」
「うるさい、キャスカ。
良いんだよ、俺だから」
こうして俺達は、総勢9名の大所帯になった。
ギルドを出た瞬間、風が気持ちよく吹き抜ける。
「よし、行くか。
次の目的地は―― まあ、何とかなるだろう」
「やっぱ、ノープラン!」
「ヒロシ様、せめて地図を見てから……」
「まあまあ、ヒロシらしいじゃない」
「……はぁ、先が思いやられますわ」
仲間達の笑い声が、青空に溶けていく。
こうして俺達は、セガル王国を後にしたのだ。
ウィズが俺たちのパーティに入った。
それにより総勢9名の大所帯。
戦力の底上げになるしメリットもあるのだろう。
何よりウィズ達が納得しているのが何よりも嬉しい。




