2.アルセルアという国
更新頻度は遅いですがなるべく1週間に一度くらいだしたいと思います...
アルセルア王国。
発展こそあまりしていないものの、王族と貴族が争うことなく、平和を享受していた。
住民が住む街は活気づいており、人々は買い物を楽しむ。
小さな公園ではたくさんの子供たちがはしゃぎまわり、その様子を親が暖かく見守っていた。
王族と貴族の権力争いがない理由は一つ。
それは王族の女性にのみ現れる特殊な力。
それは古来より女神から与えられたものだと伝えられていた。
その力とは、天候を操る力。
干ばつで雨が降らず砂漠地帯と化した土地に雨を降らせることができ、時には雷を落とし、吹雪を豪雪に変えることさえできる。
その力は誰もが羨み、崇められる力であった。
その力を受け継いでいる現王妃アリアは、容姿端麗、黄金の髪を靡かせ、まさに女神の生まれ変わりともてはやされるほど美しかった。
そして王であるルヒトー・アルセリア。
十年も続いた他国との戦争を終わらせ、アリアの力を借りて大地を作物で甦らせ、平和へと導いた茶髪の美青年である。
この二人が統治するからこそ、このアルセルア王国は平和が成り立っていると言われ、貴族も平民も、この二人を神のごとく崇めたてていた。
そんな平和なある日、おめでたい出来事が起きる。
「あ、また動いたわ」
アリアはとても嬉しそうに夫であるルヒトーに言う。
王族のある一室。アリアはソファーに座り、その美しい髪を靡かせ、手をお腹にあてていた。
もう間もなく、待望の二人目が産まれるということで、ルヒトーも仕事に手が付かない。
「ああ、あともう少しで産まれるんだな。楽しみだ」
とルヒトー。
そろそろ仕事に戻らないと宰相にまた怒られるだろうと思いながらも、アリアの元を離れることができない。
「お母様、ついに産まれるのですね、僕の妹か弟!」
と可愛い男の子の声。
第一王子であるタイルがそう言い、やっと妹か弟ができると目をキラキラと輝かせ、ぴょんぴょん跳ねている。
「タイル、そんなにはしゃがないの。お腹の子がびっくりしちゃうわ。それにルヒトー。そろそろ戻らないと怒られるわよ」
と微笑みながらアリアは言う。
全くこの子たち、本当に親子なのねと、思わずクスクス笑ってしまう。
その三人の様子を侍女達は温かく見守っていた。
数週間後。
アリアの様子がおかしかった。
陣痛がくるのが予定より早く、破水してしまったのだった。
どういうこと…予定日はもっと先だったのに…
そう思っても時は既に遅い。
侍女達に急いで医者を連れてきてもらうよう促す。
「痛い!痛い…!」
アリアはあまりの痛さに涙が滲み、第一子のタイルの時と様子が違うことに気づく。
タイルの時は確かに痛かったが、ここまで激しい痛みはこなかった。
そして何より、この子から膨大な魔力が溢れていることに気づいたのだった。
どういうこと…この子はまさか…
アリアは確信した。
この子が次の女神の力を受け継ぐ子だと。そう、女の子だということを。
「あ…あぅ…」
小さな小さな産声が聞こえた。
だが、それは今にも消え入りそうな声だった。
「ルヒトー…ルヒトーを呼んで!!この子は女の子よ!このままだとこの子の力が溢れすぎて、生命力さえも失ってしまう…!」
侍女達は急いで王を呼んでくる。
アリアはルヒトーになんとかこの子の力を抑え込み、無事に産ませたかった。
バタバタと足音が聞こえ、ルヒトーが到着する。
「アリア!女の子というのは本当か!?」
ルヒトーは焦りつつも平常心を保とうと必死だった。
「このままだとこの子が…魔力を溢れさせて、死んでしまう…」
とアリア。産まれたばかりの子に魔力をコントロールする術はない。
なんとか方法はないかとルヒトーは考え、一つの術を思いついた。
「精霊術…」
精霊術。
それは人に精霊を宿し、力を借り、魔力の溢れを沈め、コントロールさせること。
しかしリスクが伴う。
精霊術は精霊の気まぐれに左右されるため、契約してくれるか分からないのだ。
だが、ルヒトーは諦めなかった。
「アリア…今から精霊術を使う。これしか方法がない。耐えてくれ」
ルヒトーは詠唱を始め、精霊を呼び出した。
ごおぉぉぉぉと大きな音を立て、ベッドの上に一柱の精霊が顕現する。
なんと、現れたのは精霊女王であった。
誰もが驚き、言葉が出なかった。その美しさ、迫力、魔力に、皆が怖気付いた。
『私を呼んだのはだぁれ???凄ーくいい気を持っている子がいるわねえ』
キラキラと輝き、銀色の髪を靡かせた美しい精霊女王はそう言った。
ルヒトーは呆然と精霊女王を見ていたが、ハッと気づき、
「頼む…俺の娘を…救ってくれ!どんな望みでも叶えよう!」
『…普通だったらそう簡単に契約はしないわ。でもその子は…。』
キラキラと魔力が、小さな赤ん坊に注がれる。
『そうね。その子を半精霊として生きさせるわ。生まれながらにして女神の力を持つ者よ。そして、なんと綺麗な気。この子は運命に立ち向かうために産まれたのね。私が力をあげる。貴方達は全力でこの子と共に生き延びなさい。その代わり、、、』
精霊女王は言った。
「ありがとうございます!」
とルヒトーとアリア。
なんと運がいいのだろう。アリアはそう思った。
本来、精霊が力を貸してくれること自体が稀である。
それが、よりにもよって精霊女王が。
この子は生まれながらにして世界に祝福されたのだと思うと、涙が止まらなかった。
『じゃあ頑張りなさい。女神の一族よ』
と妖精女王が言うと、シュンっと消えてしまった。
「ぷぅ…」
と赤ん坊は小さく呻くと、スヤスヤと眠ってしまった。
ルヒトーも妖精女王がいなくなり、ほっとしたのか腰から力が抜けてしまう。
「アリア…よくやった。待望の女の子だ」
ルヒトーは、まだここまでの出来事を信じられないといったふうに呆然と呟いた。
「この子は…世界に愛され、精霊に愛され、女神の力を受け継ぐ子よ。愛してるわ」
ちゅっ、おデコにキスをされたその赤ん坊は、銀色の髪をし、エメラルドグリーンに染まった瞳をそっと開け、キャッキャとアリアに瞳を向けるのだった。




