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剣の守人  作者: なめなめ
守人の章
2/85

最期に見るもの(守人の場合)

 大理石の壁に囲まれる六角形の大広間。中央に設置された剣が突き立てられた台座の前では、守人である私と冒険者風の中年男が対峙していた。


「それにしても妙な角を生やしてるとはいえ、こんな小娘が剣の守人とは……正直驚いたぜ」


 男は背中の大刀を抜いて私を“小娘”と挑発してるが、実年齢的には間違いなくこちらが十倍以上は確実に歳上なはずだ。


「ヘヘヘ、まぁ一応警告だけはしてやるよ。大人しくオレに剣を渡せば……そうだなぁ~、ペットとして飼ってやらんこともないぜ?」


 不快なセリフを吐き続ける男。これ以上の会話に付き合う必要がないと判断する私は……


「つまらない戯言(たわごと)はいいから、早くかかって来なさい!」


 槍の切っ先を挑発的に振って戦うように促してやると?


「テメェ……オレをバカにする気か? それなら……遠慮なくブっ殺してやるぜ!!」


 男は激昂(げきこう)して本能のままに襲いかかる!


「うおぉぉぉぉぉーーーー!!」


 激情に駆られて力任せに振り下ろされる大刀たが、そんな単純過ぎる攻撃が私に効くわけがない。


 キィィーーーーン!

 案の定難なく受け流すと、哀れみ全快で問いかける。


「ねぇ。一応訊くけど、これが全力とは言わないでしょうね?」

「な、何だとぉぉぉーーーー!!」


 今のセリフが気に触ったらしく、男はさらに激昂するが!?


「はあぁぁぁぁーーーー!!」


 感情に狂った粗末(そまつ)幼稚(ようち)な攻撃はまったく当たらず、全ては簡単にあしらわれていく。


「ぐぅぅぅ……ガアァァァァァーーーー!!」


 ただそれでも男は一心不乱に大刀を振り続け、ついには……


「うおおおおーーーー!! 当たれ当たれ当たれぇぇぇぇーーーー!!」


 頭に血が上り過ぎて、もはや最低限の知性も感じさせない状態で向かって来る。


「やれやれ、ここまでになると本当に無様としか言い様がないわね」


 あまりにも滑稽な相手に、私は躊躇することなく必殺の槍を突き出す。


 ザシュ!ザス!ザス!!

 正確な軌道で放たれる三段突きは男の喉、胸、腹を無慈悲に貫いた!!


「お、あああ……ガハァ!」


 貫通した三ヶ所の穴から噴き出す大量の血液。それは男がこの世に残した時間が少ないことを示す。


「ば、ばふぁな……」


「バカな……」とで言いたいのだろうか? 喉の穴から空気が漏れるせいでまともな言葉にならない。


「あ、あああ……」


 いよいよ最期の時だ。男の瞳は一体何を見ているのだろうか? 正直興味もなければ知りたくもないが、だいたいの予想だけはつく。


 男が最期に見るもの……それは闇だ。どこまでも深く、どこまでも暗い闇。そして、それは私自身もいつの日か必ず目にする光景でもある。


 そう、いつの日か必ず見るはずなのだ。どこまでも深く、どこまでも暗い闇をこの目で……必ず……

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