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剣の守人  作者: なめなめ
守人の章
14/85

想像(守人の場合)

 剣の広間にて――――


 槍を深々と突き刺されて絶命した魔法使いの(しかばね)を尻目に、私は地面に片膝を着いて受けたダメージの回復を図っていた。


 ちなみに私自身の回復能力は他の種族に比べても非常に高く、多少の傷なら数分。四股(しこ)を欠損しても二時間程度で再生が可能だ。

 ただし、さすがに首を落とされたり、心臓を潰されたりした場合はどうしようもなく、最低限の注意はどうしても必要になる。


 まぁ今回は幸運にも“多少”程度で生き残れたわけだが……


「さぁ、そろそろ始めるかな」


 ようやく体力を取り戻した私は、無様に転がったままの屍を始末するためにバルコニーへ移動……する前に、刺しっぱなしの槍が邪魔になるので引き抜くことに。


「よっと……あれ? 何か引っ掛かって……えい!!」


 かまわずに強引に抜くと、先端に紐みたいな何かが絡まっているのが目に入った。


「何だろう、これ?」


 取り敢えずほどいて手にしてみたら、それが赤黒く汚れたロケットであることがわかる。


「ふーん、この魔法使い。こんなものを後生大事(ごしょうだいじ)に持っていたのね」


 一応の好奇心もあってか適当に(いじ)っていると、突然蓋が開いて中身の写真が(あらわ)に。


「これは……女の人? 笑ってるみたいだけど……?」


 写真の彼女を少しだけ眺めてみたが、結局は大して重要そうでもないと判断して魔法使いの傷口(ポケット)へ無理矢理にねじ込んでお返しする。


「じゃあ、今度こそバルコニーね!」


 いつも通りに屍の片足を引きずって通路を進む。するとその途中で、何故かロケットの写真について考えていた。


「そういえばあれって……魔法使いが今際(いまわ)(ぎわ)に話していた大切な人だったのかな?」


 正直、そこまでの関心はない。単にそんな人が自分にもいたら、何かが変わったかもと想像したしくらいだ。

 でも、想像はあくまでも想像でしかなく、結局は守人を続ける私は孤独でしかない。やがて、そんな考え方をするのがバカらしいと悟った頃には……


「――――相変わらず風が強いな……」


 強風が吹き荒れる柵なしのバルコニーに到着しており、私はその風に逆らう様に魔法使いを端にまで引きずって移動する。


「じゃあ、アナタとはここでお別れね」


 惜しむでもない別れを告げてやると、片足を掴でいた手を豪快に振り回して物言わぬ彼を目の前の空へ向かって放り投げる。それこそ本当のゴミでも捨てが如く無造作に……だ。


「ふぅ、これで後始末も完了ね」


 ことを済ませて一息つく私は、何気に空を眺めて想像する。


「もし……今のアイツが剣を手に入れていたら、私はこの守人という役目から解放されていたのだろうか?」


 ありもしないに現実を想って漏らしたセリフに特別な意図はない。だからこれ以上は……


「やめよう。考えるだけ無意味だ」


 僅かに(よぎ)ってしまった“もの”を頭の中から消し、用が済んだばかりのバルコニーをあとにする。

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