エピローグ
――世界政府通達――
瓦礫の撤去が終わった世界政府本部。
かつて戦場だった場所には、静かな風が吹いていた。
誰もが空を見上げる。
あの空にはもう、次元の裂け目はない。
世界は救われた。
少なくとも――この世界は。
最高司令室。
一人の青年が、窓の外を見つめていた。
世界政府最高司令――クロ。
机の上には、一冊の古びた資料。
表紙には、ただ一言。
《MULTIVERSE》
クロは静かにページを閉じる。
「……俺たちは勝った。」
誰へ向けた言葉でもない。
それでも、その声は世界中へと届けられていく。
「だが、その代償として知ってしまった。」
モニターに映し出される無数の世界。
数え切れないほどのバース。
そこには、まだ人類が滅びた世界もある。
怪異に支配された世界もある。
誰も勝てなかった世界もある。
そして――
この世界には存在しない怪異が、確かに存在していた。
クロは深く息を吐く。
「怪異は、人の認識によって姿を変える。」
「曖昧であるほど変化し。」
「認識が強固になるほど、その存在は固定される。」
「怪異は未知であるほど、進化し強大になっていく恐れがある。」
世界中のモニターへ、怪異の映像が映し出される。
ギンたちが戦ってきた怪異。
別世界で発見された未知の怪異。
観測記録すら存在しない異形。
「俺たちだけでは足りない。」
「世界中の目が必要だ。」
「すべての世界の知識が必要だ。」
クロは端末へ手を置く。
静かに、一つの命令を送信した。
世界政府 全職員へ
本日付で、新たな作戦を開始する。
作戦名――
『ANOMALY ARCHIVE PROJECT』
「すべての怪異を記録せよ。」
「発見した怪異。」
「遭遇した怪異。」
「噂で聞いた怪異。」
「どんな些細な情報でも構わない。」
「怪異を正しく記録し。」
「全世界で共有せよ。」
「それが、人類を守る最善の方法となる。」
送信。
その瞬間。
世界中の端末へ、一つの通知が届いた。
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世界政府通達
あなたを本日付で、
世界政府調査部所属職員
として任命する。
あなたの任務は、
未知の怪異を発見し、
その存在を正しく記録すること。
怪異は認識によって変化する。
あなたの報告が、
誰かの命を救う。
【怪異報告書】
□ 怪異名
□ 危険度
□ 発見場所
□ 能力
□ 特徴
□ 対処法
□ 添付資料
職員ポータル https://verse-0-0-web.vercel.app/
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クロはモニターを閉じる。
「これで終わりじゃない。」
「ここから始まる。」
窓の外では、今日も新しい一日が始まろうとしていた。
誰も知らない場所で。
誰も知らない怪異が生まれる。
だが、もう人類は一人ではない。
世界中に。
いや――
すべてのバースに、世界政府職員がいる。
クロは小さく笑った。
「……健闘を祈る。」




