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# 第15話 ## 「黒塔の王」

# 第15話


## 「黒塔の王」


七災将グレンとの戦いから三日後。


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天剣山の朝。


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修司は一人で剣を振っていた。


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百回。


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二百回。


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三百回。


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汗が地面に落ちる。


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「まだだ」


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自分に言い聞かせる。


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黒い塔。


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闇の司祭。


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そして。


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《黒塔の王》。


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グレンですら従う存在。


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今のままでは勝てない。


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その時だった。


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「無理ですよ」


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後ろから声。


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ルナだった。


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修司は振り返る。


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「朝から辛辣だな」


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ルナは笑わなかった。


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珍しく真面目な顔だった。


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「黒塔の王には勝てません」


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「……」


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「未来では誰も勝てませんでした」


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風が吹く。


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ルナの黒髪が揺れる。


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その瞳は悲しそうだった。


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修司は聞く。


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「未来で何があった」


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ルナは黙る。


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しばらくして。


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ようやく口を開いた。


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「私」


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「?」


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「未来から来たんです」


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修司は驚かなかった。


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なんとなく気づいていた。


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未来を見るだけではない。


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未来を知りすぎていた。


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ルナは続ける。


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「十年後の世界です」


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その言葉に。


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修司の表情が変わる。


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「十年後……」


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「はい」


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ルナは震えていた。


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「王都は滅びました」


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「……」


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「エルナも」


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「セシリアも」


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「ミーナも」


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言葉が詰まる。


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涙が落ちた。


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「みんな死にました」


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修司は何も言えなかった。


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ルナは拳を握る。


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「だから来たんです」


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「未来を変えるために」


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「みんなを救うために」


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朝日が昇る。


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ルナの涙が光る。


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「お願いです」


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修司を見る。


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「救ってください」


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「未来を」


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修司は静かに答えた。


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「もちろんだ」


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ルナが目を見開く。


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「え?」


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「そのためにここにいる」


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修司は笑った。


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五十歳。


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異世界に来る前は。


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ただの会社員だった。


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特別な才能もない。


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特別な力もない。


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でも。


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挑戦することだけは諦めなかった。


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「未来は変えるためにある」


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ルナは泣きながら笑った。


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その時だった。


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ドォォォォォォン!!


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空が震えた。


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全員が顔を上げる。


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遥か遠く。


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地平線の向こう。


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黒い光が天へ伸びていた。


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「黒い塔……!」


エルナが叫ぶ。


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今までより巨大。


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今までより禍々しい。


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ルナの顔が青ざめる。


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「始まった」


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「何が?」


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「黒塔の王の目覚めです」


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静寂。


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その時。


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ルナの未来視が発動する。


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瞳が赤く輝く。


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見えてしまった。


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黒い塔の最上階。


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巨大な玉座。


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そこに座る男。


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長い黒髪。


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冷たい瞳。


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圧倒的な魔力。


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そして。


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その顔を見た瞬間。


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ルナは息を止めた。


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「そんな……」


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震える。


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信じられない。


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ありえない。


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修司が駆け寄る。


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「ルナ!」


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ルナは震える声で言った。


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「黒塔の王の正体……」


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仲間たちが固唾を呑む。


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そして。


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ルナは告げた。


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「あなたです」


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修司は固まった。


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「……は?」


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世界が静まり返る。


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黒塔の王。


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世界を滅ぼす存在。


---


その正体は。


---


未来の坂本修司だった。


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## 次回予告


### 第16話


**「未来の自分」**


世界を滅ぼす黒塔の王。


その正体は未来の修司だった!?


なぜ英雄が魔王になったのか。


なぜ世界を憎むようになったのか。


そして未来で起きた最大の悲劇とは――。


**「もし仲間を全員失ったら、お前はどうなる?」**


物語最大の謎が明かされる――。


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