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第1話 「五十歳から始まる冒険」

第1話

「五十歳から始まる冒険」


坂本修司はため息をついた。

夜の工場。

残業帰り。

気付けば五十歳になっていた。

若い頃は夢があった。

小説家になりたかった。

旅もしたかった。

恋もしたかった。

だが現実は忙しかった。

気付けば夢は全部後回し。

そして五十歳。

「もう遅いよな……」

そう呟いた瞬間だった。

ドォォォン!!

目の前が真っ白になる。

トラックだった。

次に目を開けると。

青空。

草原。

見知らぬ景色。

「ここは……どこだ?」

その時。

頭の中に声が響く。

【転生完了】

【スキル獲得】

【無限成長】

「は?」

修司は固まった。

説明は続く。

【努力した分だけ成長します】

【上限はありません】

「それだけ?」

思わず叫んだ。

もっとこう。

剣聖とか。

最強魔法とか。

そういうのじゃないのか。

すると遠くから悲鳴が聞こえた。

「きゃああああ!」

少女の声だった。

見ると巨大な狼が少女を追いかけている。

考える暇はなかった。

修司は走った。

五十歳とは思えない速度で。

いや。

実際は遅い。

かなり遅い。

狼の方が速い。

少女も叫ぶ。

「来ないでー!」

「いや行くしかないだろ!」

修司は近くの木の枝を拾った。

そして――

思い切り振る。

パキッ。

枝が折れた。

狼は無傷。

修司は絶望した。

「弱っ!」

しかし。

頭の中に文字が浮かぶ。

【木の枝術 Lv1→Lv2】

【勇気 Lv1→Lv2】

「え?」

狼が飛びかかる。

修司は必死に避ける。

転がる。

立ち上がる。

また避ける。

【回避 Lv1→Lv2】

【回避 Lv2→Lv3】

【回避 Lv3→Lv4】

「ちょっと待て!」

成長している。

戦っているだけで。

どんどん。

修司は笑った。

五十年生きてきて。

こんなにワクワクしたことはない。

「なるほどな……」

狼を見ながら言う。

「まだ伸びる」

その瞬間。

修司の目が輝いた。

五十歳。

人生の終わりだと思っていた年齢。

だが違った。

ここから始まるのだ。

新しい人生が。

新しい挑戦が。

新しい成長が。

そして後に世界中の人々は語る。

「史上最強の英雄は五十歳から冒険を始めた」

と。

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