いえ、風紀委員です。貴方を更生します!
「待ちなさい! そこの変態男子!」
職員室からの帰り道、後ろから変態男子と声が聞こえる。変態が出現したのだろうか?
可哀そうに……。俺のように呼び出される運命を背負ってしまうのだろうと思うと、後ろにいるであろう変態男子君に僅かばかり同情する。まあ、こっちは事故だが……。
「待ちなさいと言ってるでしょ!」
どうやら変態男子君は抵抗を続けているらしい。一体何をやらかしたんだろう? 少し興味が湧いてきたなー、振り向いてみよう
「やっと止まったわね!」
見知らぬ先輩と思われる女生徒がこちらを指さしながら睨みつけてくる。
まさかと思いますが変態男子とは俺の事ですか?
でも心当たりがない、人違いだろう。
俺は教室へ再び歩き出す。
「ちょっと! 無視するつもり!」
回り込まれてしまった。どうしよう、まさかと思ったが変態男子の正体はどうやら俺のようだ。
この先輩女子殿に何かしてしまっただろうか? いや、見覚えはないし何もしてないと思うがなー。
もしや櫻子の友達を押し倒してしまった時に見ていた誰かだろうか? それならば納得がいく。
「あれは事故です」
「……何の話をしているの?」
どうやら違うらしい。ならば何故俺が変態男子なのだろうか?
変態オーラが溢れだしているのだろうか?
変態オーラって何だろう? 自分で言っといてなんだが……。
そんなことを考えていると、ご丁寧にも目の前の先輩女子が自己紹介をしてくる。
「私は、沢城 雪菜! 風紀委員よ!」
どうやらこの先輩女子は風紀委員らしい。
言われてみれば腕章がついているなー。
「ところで貴方、名前は?」
この沢城さんとやらは、名前も知らずに俺を変態扱いしていたようです。
やはりオーラが出ているのか?
消し方を教えてくれ。すぐにOFFにするから!
「新谷 良平ですけど……やはりオーラですか?」
「さっきから何の話をしているの……?」
怪訝そうな顔をされてしまった。
勘違いでしたかすみません。叱られて少しばかり卑屈になっていました。
だが、そうとなれば話は別だ。
「何か御用ですか?」
「新谷君! 貴方を更生しに来ました!」
更生? 何を言っているのだろう。
と言うより俺はどうすればいいんだ?
誰か教えてくれ。と言うより助けてください。
そう思っていると1限目を告げるチャイムの音が鳴り響きます。
「よく分からないですけど、授業がありますので!」
「ちょっと!」
腕を掴まれそうになりますが、二度も同じ過ちを繰り返さん。
華麗に交わして走り去る。
「これは長期戦になりそうね……」
◇◇◇
昼休み、妹と弁当を食べるために廊下を歩いていた。
しかし、風紀委員さんが道を断ち塞ぐ。この展開はデジャブだな。
「待っていましたよ! 新谷君」
「……何か用ですか?」
俺は妹と弁当を食べようとすると道を塞がれる呪いでもあるのだろうか?
二日連続で続くと疑わずにはいられないな。
「貴方には、これから風紀委員室に着いて来てもらいます!」
「断ります」
当たり前だ。そんな所に行っていては妹と昼飯を食べれなくなってしまう。
だが、この状況を打破する考えが思いつかない……非常にまずいな。
「いえ、これは強制です」
「ちょ、ちょっと!!」
乱暴に腕を取られる。油断した、不覚だった。
このままでは強制連行されてしまう、それはまずい!
だから、もちろん俺は抵抗する。
「あっ! あそこに変態が!」
「どこですか!?」
古典的な罠にあっさりと引っかかってくれた。案外ちょろい。
腕の拘束が緩くなったのでこのままダッシュで逃げるしかない!
まあ、実際は考えるより先に走り出していたけれども。
「あっ! ちょっと! 騙しましたね!!」
振り返ると怒りながら走って追いかけて来る。
風紀委員として廊下を走るのはどうなんだ?
そんなことを考えながら逃げていると櫻子と昨日の後輩女子の姿が見る。
教室にいると思っていたけどなんで廊下に? 中庭にでもいくのか?
「櫻子ー!!」
「兄さん……叫ばないでください」
声に気づいたのかこちらに振り向いてくれる。
振り返り美人ってああいうのを言うんだろう。
このまま抱きしめたい。
「逃がしません!」
抱きしめたいと思っていたら、後ろから制服を掴まれる。
この展開は……まずいのでは?
そう思うのも束の間、身体のバランスが崩れる。
結果、俺の身体は半回転して風紀委員さんとこんにちは。
「っ!!?」
制服を掴んだ時に前のめりになったのが原因だろう。
覆いかぶさるように風紀委員さんが倒れてくるのがスローモーションで見えます。
分析してる場合じゃない。避けないと、と思うが身体が反応に追い付かない。
「ちょ、ちょっと!」
「キャー!」
可愛い悲鳴を上げて俺の身体にのしかかって来る。
廊下に打ち付けられて地味に背中が痛い。
「痛ったたー」
「っ!!?/////]
恐る恐る見上げると、顔を真っ赤にした風紀委員さんが俺を床ドンしてる。
顔がとても近い……。それに走っていたせいか互いに息遣いが荒い。
これが噂に聞く床ドンか……。制服が汚れるし余り良いものではないなー。
そんなことを考えていると、誰かが近づいてくる足音が聞こえるではないか。
「何をしているんですか? 兄さん?」
声の方へ振り向くとピンク色のパンツが見える。パンツ?
もう少し顔を上げると櫻子の顔が見えた。鬼の形相だ。
「ち、違うんだ! 今回は胸も揉んでいない! ほら!」
俺は勢いよく両手を上げる。けど、それが悪かった。
思いっきりスカートを捲る形になってしまった。
「っ!!?/////」
鬼の形相が恥ずかしそうな真っ赤な顔に変わりました。とても可愛いです。
「ナイスピンク!」
「兄さんの馬鹿ッ!!」
少し身体を震わせ走り去ってしまう。
てっきり蹴られるものだと思っていたけど……。
おお、そうか! 風紀委員さんがいるから! なるほど!
「救いようがない変態……!」
おっと忘れていた、そういえば居たな!
見上げると自分のスカートを抑えながら見下している風紀委員さんと目が合う。
「死んで詫びなさい!!」
股間を蹴り上げられた。 俺は死んだ
「なんでこの人廊下で寝てるの……?」
「気持ち悪いー」
「……変態ね。気持ち悪い……」
その後、廊下で寝っ転がり悶える変態野郎として、学校で噂になるのだった。




