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今の自分はいずれ死ぬ

(おもったよりふつーの人かなー……)


王女は坐禅では何も考えないように、と言われてハイハイと返事をしたものの、隣で坐っている道安のことを考えていた。父である王からは「よくわからんが、ただ者ではない」と聞かされていたのだが、他の男より露骨ではないとはいえ、やはり自分の「女」には反応しているようだ。ただ者ではないのかもしれないが、所詮は男なのだな、と落胆もしないが冷静な感想を持っていた。


(これっていわゆる瞑想ってやつかな? 頭にいいんじゃないかって学者さんは言ってたけど、正直私、これ以上頭よくなっても意味ないしー……)


王族に生まれ、何もしないで座っているのに慣れている王女はみじろきせず、しかし頭の中では退屈さを感じていた。


ルンビーニ王国第二王女、マショーダワ。彼女はあけすけに言えば、政略結婚のカード No.2 だ。 No.1 は当然第一王女で、巨大な隣国ダッサラ国の王子と結婚済だ。ダッサラ国はルンビーニ王国の最大の貿易相手なので、当然最初のカードとして切られるべき第一王女が嫁ぎに行き、次のカードであるマショーダワは、誰と結婚するかは決まっていなかったものの、次に大きな国のどれかと婚姻関係を結ぶことになるのは誰の目にも明らかだった。


(いやだ! とは言えないけど、なんかモヤモヤするなー……)


そんなマショーダワは、直接的ではないにしろささやかな抵抗に出ることにした。元来優秀な頭脳を持ち、あわや神童かと言われてきた彼女は「頭が良すぎて少々ぶっ飛んでしまった人」を演じ始めた。


狂人の真似とて大路を走らば即ち狂人なり、なんて言葉があるらしいが、マショーダワはそれを地でいくことにした。歴代王女の美貌と明晰な頭脳を駆使し、それを台無しにすることで、「研究者か政治家、もしくは宗教家としては有用かもしれないが、政略結婚のカードとしては使えない」という立ち位置を確立しようとしたのだ。


第一王女たる姉には悪いが、一番の隣国は既に抑えてもらっている以上、自分はまだマシな生き方をしたい。結果マシじゃなかったとしても、私が選んだ生き方をしたい。そんなマショーダワの思いは王に伝わったのか伝わってないのか、結果として西の塔のてっぺんにやんわり隔離されることになった。


しかし、そこに魔王軍が攻めてきて、勇者を召喚することになる。もし勇者が魔王を討ち取れば、王配も視野に入る、というかほぼ確実にそうなるだろう。

そうなれば、第一王女が既に嫁いでいる今、白羽の矢が立つのはマショーダワである。今度は逃げられそうにもなかった。


(しょーがないかな。アハハ……)


やや自暴自棄になって、勇者との初対面ではわざと風呂に入った状態で出迎えてみた。しかし最初に来た勇者は、マショーダワの裸を見たとたん「喝ァツ!!」とか叫んですぐ窓から飛び降りた怪人だった。自分の身体に興奮する愚かなオトコという結果を皮肉るために期待してさえいたが、予想は裏切られたことにマショーダワは唖然とした。異界より召喚された勇者は理外の存在だったようだ。しかし我に返ったマショーダワは、自分の結婚相手があのハゲになる可能性に恐怖した。


幸いにしてその怪人は山に籠もってしまったため、次の勇者が呼ばれたのだが、こちらは中々のイケメンで、しかも恐ろしく強い。おそらく魔王を倒すと噂されるほどに。 よその国の王子よりもよっぽど優良物件だった男に、マショーダワは胸が高鳴るのを感じた。

しかし、所詮は決められた結婚。勇者は私を選んでくれたわけではないし、私も勇者を選んだわけではない。そう思うと、高鳴った胸のときめきも、自分にする言い訳のように感じて、マショーダワは沈んだ気持ちになった。続報で、勇者が他貴族の色仕掛けにかかり、簡単にお手付きをしたこともマショーダワの心に暗い影を落とした。

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