第76録 守る覚悟
「アモン?」
「聞いたことないけど、ベルゼブブと同格ってことは強いのよね?」
ジョルジュとエリスが首を傾げたのを見て、ベルゼブブはため息を吐いた。
「お前、何でサタンは知っててアモン知らねぇんだよ……」
「あー、ほら!ボスとか大ボスとかは超有名ジャン?アモンはあんまり有名じゃないし……」
ベリアルがフォローを入れてもベルゼブブの表情は変わらない。
エリスも肩をすくめながら口を開いた。
「そうですね。
聞いたことがあるのは、ベルゼブブとサタンとルシファーぐらいで……」
「私もテオドールと同じ意見だよ。
そもそも魔法の道にでも進まない限り、悪魔のことを知る機会が少ないからね」
エリスの言葉に賛同したジョルジュを見て、ベルゼブブはただでさえフードで見えにくい顔を手で覆った。
「でも、ボス……。なんでアモンが地上に出てきてるワケ?
オーサマはアタシと「契約」結んでるんだから、喚び出し方知らないデショ?」
「オレ様も知りてぇよ。まぁ、どうにかして魔界の門を突破したんだろうな。サタンはアモンを危惧してるから、そう簡単には地上に出さねぇ」
「なるほど、そのサタンの許可がないと地上には出てこれないんだね?」
確認するように言うジョルジュに、ベリアルがカールした赤紫の髪を揺らして頷いた。
「うん。だから、ボスの予想は当たってると思う」
「…………。
アモンはコントロール魔法が得意だ。
今、各地でモンスターが暴れてるんだろ?アモンが操ってるとみて間違いねぇな」
「えっと、纏めると……。どうにか魔界の門を突破したアモンが偶然父と出会って「契約」を結んだ。そしてモンスターを操って各地を混乱に陥れている。ということだね?」
ジョルジュの言葉に全員が首を縦に振る。
すると、ベリアルが遠慮がちに口を開いた。
「あと、ジルジルには言ったんだケド、オーサマってエベロスへの執着スゴいじゃん?でもプライドも高い。だから、エベロスに復讐した後、こっちに王権取り戻しに来るんじゃないかって」
「十分あり得るな」
「もしかして、モンスターで撹乱させている間にエベロスやアレキサンドルに乗り込んでくるつもりでは?」
「私もその可能性があると思って、エベロスには手紙を出しているし、
町の守りも固めているよ」
そこまで言うと、ジョルジュはエリスに向き直って背筋を伸ばした。
彼の真剣な表情に、思わずエリスも姿勢を正す。
「そこで改めて頼みたいんだ、テオドール。
君の魔法でこの町を――国民を守ってほしいんだ。
……引き受けてくれるかい?」
「はい。できる限り、お力になります」
エリスはジョルジュの目をしっかりと見ながら、迷いのない返事をした。
ジョルジュはようやく頬を緩ませて、かすかに微笑む。
「ありがとう、テオドール。
留まってくれている間は、生活のことは全て私達に任せてほしい」
「お、お世話になります――ひゃっ!?」
突然エリスが短い悲鳴を上げた。
ベリアルが満面の笑みで抱きついてきたからだ。
「エリエリ〜〜!!ありがと〜〜っ!!
もうエリエリが居れば百人力だよ〜〜っ!!」
「百人力は……言い過ぎ、です……。く、苦し……」
ベリアルのふっくらした部位に押しつぶされそうになりながら、
エリスがか細い声を漏らす。
「あっ!?ごめん!!エリエリ――って、わぁ〜〜っ!?」
「お前はとっとと離れろ。何見せつけてんだ」
ベルゼブブが深いため息を吐きながら、エリスからベリアルを引き剥がす。
ジョルジュは顔を赤くしてそっぽを向いていたが、ふと、立ち上がった。
「わ、私は弟のグラドに伝えてくるよ。城内でバッタリ出会って険悪なムードになっても困るから……」
「あの……私も一応用件は済んだので、部屋に向かおうかと思っているのですが……」
「そう?じゃあ一緒に向かおうか。
そうすればグラドに会っても大丈夫だからね。
ベリアル達はどうするんだい?」
ジョルジュに話を振られて、いつの間にか取っ組み合いをしていた2人は動きを止めた。
「オレ様がどうするかなんて考えるまでもねぇだろ」
「あー、アタシは部屋で待機してるね」
ベルゼブブは素早くエリスの背後――定位置につく。
ジョルジュはその様子がおかしかったのか、
小さく笑うとドアを開けた。
今月はあと1回分更新できたらなと思ってます。
3月が1回しか更新できなかったので。




