3.7.6 竜の襲撃が終わり
「竜が操られていた可能性と、グランスラムに竜がまだ囚われていることについてはわが国の中央部に伝えてもいいですか?」
「バハムートの娘からの情報だと伝えるのは構わん。
できればグランスラムに捕まっている竜を救出してほしいぐらいじゃ。
あと、これは一番大事なことだ。
我がここで戦ったことは秘密にしてもらえぬだろうか」
「それはもちろん」
「では、そろそろお昼ご飯にしましょう。
今日のお昼はうどんです」
侍女が食事の用意をしてくれる。
「この、白い麺は、まさかウートンか?」
「うどんと呼んでますが」
「母様が、白い麺の食べ物ウートンを食べたいと言っておった。
そうか、ウードンというのか」
竜と結婚するような人間。
もしかしたら転生者なのか。
「“うどん”ですね」
「うどん か」
「ところで、ティアマトの母様は、ラルクバッハの建国王の時代と一緒の時期の人ですか」
「ああ、そうだな。幼少の時に建国王シンとなっておる者にあったことがある。
シンの出生の地も我の母の出生の地も教えてもらえなんだが、同郷だと言っておった」
では、二人とも転移者か。
「それでティアマトは箸の使い方がうまいの?」
「ああ、これは母様に習った」
「そうか、ってそういえばレイブリングさんもエイミーも箸の使い方が上手い」
「箸は、兵士の訓練で使うので練習するのだ。
外で食事をする場合、箸は便利だからな。
ラルクバッハでは庶民の間で広まっているが、使える貴族は多いと思うぞ」
へー、そうなんだ。
「では、うどんのほかにそば、ラーメン、唐揚げがありますからそのうち出しましょう」
「ラーメンとはトンコーメンのことか?」
「ああ、豚骨ラーメンね。
塩ラーメンじゃなくて、豚骨味にしましょう」
「あと、カーレーはあるのか?」
「カレーかな。
残念ですが、今のところ香辛料が足りずに再現できてません」
「そうか、母様が生きていたら食べされることができたのに。残念だ」
「ティアマトの母様は、何歳ぐらいまで生きられたの?」
「わしが幼少、20歳ぐらいだったか」
20歳前後で転移してきたなら40前後。
まだ寿命ではないはず。
「良ければ、どういった原因で亡くなったのか教えてもらえれば」
「そうじゃな、あの頃、グランスラム帝国は我らの住む地を攻略していた。
グランスラム帝国にはこのあたりで信仰している3神ではない神を信仰しておる。
当時はその神の力が強くてな。
父様を害そうと手を出していたのだ」
「え、神を殺せる可能性のある竜ですよね」
「ああ、だが数百万の魔物に囲まれては、先ほども言ったが失った魔力はなかなか回復しないのだ。そのために長期戦を強いられると貧窮する」
「数百万、それはまた」
「我らの周りに同時にいくつかのダンジョンを作られたのだ。
飛行可能な魔物も多かった、それらが同時に襲ってきた。
竜は普段、群れで暮らしている。
長期戦になっても群れでいれば魔力が消費されても誰かの魔力がある。
1体でも戦える竜がいればよいのだ。
竜は最強種だからな」
「それでも数百万は多かったと」
「まあな、特に母様は人間だ。竜よりも弱い。
しょうがなかったのだ」
「ティアマトはよく生き残りましたね。小さかったのでしょう」
「わしは父様の背に背負われておった。
後で、父が母様も背負って戦えばと言っておったが、後の祭りじゃ。
鱗を持たぬ人族では、われらの攻撃の余波でも死にそうだからな」
「だが、父様も黙ってやられる方ではない。
なんとか邪神を1体封じることができたのだ。
全体でないが、力の大半を封じることに成功した。
その結果グランスラム帝国は多少弱体化したが、竜族への恨みは相当なものとなった。
おそらくなんらかの呪詛を開発したか、新たな能力者を得たのかだろう」
「そうなんですか」
「ああ、異世界から勇者を呼び出したという噂もある」
メリーナさまが関係せずに勇者の召喚ができるのか!
グランスラム帝国は思ったよりも危険かもしれない。