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十八話 憧れとの再会


「………」

「………」


迷宮都市の都内にある人気のカフェ店。

少し上品なこの店では、都市でも有数の金持ちや冒険者が訪れる。


静寂に包まれた空間。

フォークとスプーンがお皿に当たる心地いい音。

ズズズ、とグラスに入った飲み物を啜る音が聞こえる。


この店に居る客の皆が皆、堂々とこの空間で豪華なランチとワインやコーヒーを優雅に嗜んでいる。


そんな場所で一人だけ、異様に浮ついている少年が居る。

食べ慣れないランチや飲み慣れないコーヒー、優雅で上品な場に圧倒される。

隣には、見慣れた顔の女性が居る。

が、何よりも彼を酷く困惑させているのは、彼の対面に座る人物。


「ズズ…、悪くない。」


彼女は、ワインを啜り艶やかな笑みでそう言葉を漏らす。

その雰囲気は異様に、この場に相応しかった。

まるで彼女の為に用意された空間のような。


店の雰囲気とマッチする、綺麗な装い。

長い髪は後ろで束ねられ、服装は銀色のドレス。

彼女はこの都市で知らない者は居ない程の知名度と人気度を誇る人物。

その名前は、アルレイヤ・ウェールズ。


一体、どうしてこうなった…と。


ジークは、心の中で声を漏らす。



時は遡って数時間前。


ジークはディオメデスと共に迷宮都市の街中を歩いていた。

今日、アテナスは何か大切な用事があるらしく拠点を離れた。

その間、謹慎を受け迷宮に潜れないディオメデスがジークをデートに誘い買い物に付き合っていた。


「あと二日程で謹慎が解ける。楽しみだな。」

「そうですね…ディオメデスさんの足手纏いならないか心配ですよ。」


ジークの心配も杞憂ではない。

ディオメデスのランクは3《スリー》。

冒険者の中でも優秀な実力者だ。

迷宮ダンジョンは単独で中層の半分は攻略できるだろう。


一方のジークはランク1《ワン》。

ようやく冒険者としてのスタート地点に並んだばかり。

自分が潜れるのはせめて上層の5階層までだろう。

それでもランク0の時は1階層でもギリギリだったので成長したと言える。


それでも、2人の間には埋められない力の差がある。

なので少しでも近付けるために経験も実力も豊富なディオメデスに暇な時は鍛錬に付き合って貰っている。


「そう言えば明日も、例の女と迷宮ダンジョンに潜るんだろ?」

「うん。」


明日は、早朝からペネロペと迷宮ダンジョンに潜る約束をしている。

それに新しく手に入れた魔法にも慣れておきたい。


「お、あそこは有名なカフェだ。」


ディオメデスは、羨ましそうにその店を眺める。


「行ってみますか?」

「え、あー、ああいうオシャレな場所、私には似合わないよ。」

「似合うとか似合わないとか、関係ないでしょう。ほら、行きましょう。」


俺は遠慮する彼女の手を取り、思い切って店に入る。

店に入ると、心地良い空間が広がる。

優雅な音楽。

スプーンとフォーク、ナイフと皿がぶつかり合う音。

コーヒーの渋い香りが、鼻を包み込む。


「いらっしゃいませ。お席にご案内します。」


カフェの店員が俺達を出迎え、席へと案内される。

通された席には、先客が座っていた。


「ほう、珍しい客が来たな。」


俺は、その人物を見て固まってしまう。

ディオメデスさんも、唖然としている。


なんで、彼女が此処に…


「アルレイヤさん…お久しぶりです。」

「ああ、久しぶりだな少年。聞いたよ、ランクアップおめでとう。」


彼女のいや、アストレア・パーティーの耳にも入っていたのか。


「そうなんですよ!諦めないで良かったって思ってます。」

「フッ、そうだな。」


アルレイヤさんは、そう言ってコーヒーを啜る。

熱がってる、うーん猫舌なのかな?


「アルレイヤさん…頼みがあります。

僕に戦い方を教えてくれませんか!」


そんな事、言うつもりはなかった。 

でも何故か、自然と言葉に出てしまった。


「…君は、どうして強くなりたい?」

「俺は、貴方みたいになりたい…貴方のように強く、勇敢な冒険者になりたいんです。」


彼女は、きっかけだ。

俺が再び夢を追いかけ始めるキッカケをくれた恩人だ。

そして知りたい、彼女の強さの理由を…


「ディオメデス殿、君は良いのかい?敵ではないが…他所のパーティーメンバーに自分のパーティーメンバーが師事を受けるのは…」

「個人的に思う所はあるが…ジークが夢に少しでも近付けるなら私は賛成だ。」

「そうか。分かったいいだろう…なら今日、このあと時間はあるかい?」

「…ッ!ハイ!」



ーー


まさか、本当にあのアルレイヤさんと鍛錬が出来るなんて夢にも思わなかった。

嬉しい反面、少し複雑だ。

確かに憧れだが、少し劣等感も抱いてる身としてはやり切れない。


でも折角、巡って来た好機だ。

俺の目指す、高みに最も近い冒険者から学べる事は多い。


「さ、何処からでも来たまえ。」


アルレイヤさんが、木剣を構える。


今の自分が彼女に対して何処までやれるか分からないけど、やるなら全力でぶつかりに行く。

魔法も使って良いと言われたので、躊躇うことなく使わせてもらう。


剣を構える。


そして、勢いよく地を蹴る。


彼女は動かない。

でも、隙が全くない。

正面から行くのは、愚策。


背後へ回り込む。

そして、剣を振り下ろす。


しかし、渾身の一撃は木剣でいとも容易く受け止められる。

そして剣を握っていた腕を捕まれ、地面に叩きつけられる。


「ぐっ!?」


「正面から来ると思わせて背後に回り込む、悪くない。

が、1発で終わると思うな、次の一手を模索しろ。

君よりも強い魔物には通用しなくなる。」

「はい!」


背中に奔る痛みを無視して、再び剣を握り駆ける。

ありとあらゆる方法で剣撃を繰り出すが、彼女はその全てを軽く受け流す。

攻撃しているのは自分なのに、逆に自分が傷を追っている。


刺突を繰り出す。

木剣の握り部分で止められる。

意識が僅かにそっちに向いた。

今しかない。


「ーー装填ルーン、『グングニル』!」

「ッ!?」


短い、詠唱。

掌より、轟々と燃える焔の槍が放たれる。

タイミングは完璧だった。


しかし、相手はランク(セブン)

その反応速度は、異次元。

身体を逸らし、回避された。


(超短文詠唱だと?しかも、あの威力…ランク(ワン)の扱う魔法のレベルを超えている。)


一体、いつの間にここまで成長を?


アルレイヤは、驚愕せざる得なかった。


鍛錬を続けている内に、ある事に気付く。


この少年は強くなっている。

剣を打ち合う度に、強く疾く、また強く疾くなっている。

本当に先程と同じ人物か?と錯覚してしまう程の成長速度。


きっと、測り知れない努力と研鑽を重ねて来たのだろう。

決して才能ではない。

積み重ねて来た努力の証は、彼女の心に熱く響いてくる。


気紛れで師事する事を承諾したが、結果的に最良の選択だったと言える。


ふと、少年の瞳を見る。


ああ、やはり。


熱く燃え滾っている。


あの時よりも激しく、そして大きく。


あらゆる感情が、彼の瞳の中で走り廻っている。


美しいーーそう思った。


「ぐあっ!?」


剣を弾き飛ばされ、地に崩れ落ちる。


「よしここまでにしよう。明日も迷宮ダンジョンに行くんだろ?

なら、今日はもう休んだ方がいい…私も明日から遠征だしな。

次の鍛錬はいつになるか分からないが、楽しみにしてるよ。」

「ありがとうございました!」


ジークは、そう礼を言った。

鍛錬を終えた少年の顔は、何処か凛々しく勇ましく見えた。

そんな少年の背中を見送り、去ろうとする。


「もう良いの〜?」


彼女の前に立っていたのは、同じパーティーに属するメンバー。


腰まで伸びた純白の髪にギラギラと燁く銀眼。

美しく逞しい顔立ちに加え褐色の肌に兎の様な耳。

兎人(アルナブル)の女性。


「アルミラ、居たのか?」

「うん。なんか楽しそうな事してんなと思ってさ、あの子って最弱英雄だろ?」

「アルミラ、その言い方は好きじゃない。」

「…ま、そりゃそうだな。んで、どうなんだ?」

「まるで別人だ、これからが楽しみだ。」


彼女はそう、嬉しそうに微笑んだ。

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