表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/40

宰相君のご栄達

 

 宰相君は、山蔭卿の後継者として大内裏(だいだいり)に出仕するようになった。彼は次第に、御上(みかど)のご寵愛を受けるようになっていく。


 宰相君の取り回しや話の面白さ、頭の良さ、全てが御上のお気に召したのである。

 彼は大和、河内、伊賀の三国を賜る、という異例の大出世を遂げることになったが、誰も異を唱えることはなかった。


 ある日のこと、御所で宰相君は懐かしい人と再会した。姫の鉢が取れた日の前夜、山蔭卿の屋敷で宴を共にした博士である。


 実は、博士は宰相君のことを、「世に優れた方はたくさんいらっしゃいますが、心から信用できる方は、そうそうお目にかかれません。彼は数少ないお一人です」と、御上に推挙してくれていたのだ。


 宰相君は、改めて博士にお礼を言った。

 博士は目を細めて言う。

「ご立派になられた。私は、自分の見る目があることを嬉しく思っています」

「ありがとうございます。今後も、より一層政務に励むつもりです」


「奥様は、お元気でいらっしゃいますか?」

「はい。あの日、博士どのが下さった御守が、妻と家を出る後押しをしてくれたのです。あの御守のおかげで、不安は無くなりましたので。妻には内緒にしていますが」

「それは良いご判断だ。ご夫婦といえど、全てを言う必要はない。お幸せに」


 博士と別れた後、宰相君はふと思った。

(姫は、未だに自分の出自を教えてくれない。きちんと養育された、高貴な身分の方とは思うのだが)


 以前、尋ねた時は、姫は困ったように黙り込んでしまっていた。

 それは、『言いたいけれど言えない』という様子であった。

 実は、姫は隠し事はしたくないと思いつつ、自分の事を全て話すと、父上や継母に恥をかかせることにならないか心配だったのである。


 宰相君はそんな様子を見て、それ以上追及することはなかった。

「あなたが何処の生まれで、どういう御身分だったか、そんなことはどうでもいい。ただ、私やお子たちを置いて天に帰ったりしないで下さいよ。……そうだ。天女の羽衣を私が貰っておけばいいんだった」

「宰相さま……あっ」


 ふざけるように言って、宰相君は姫の着物を一枚また一枚と脱がせていく。

「これでもう、あなたは何処へも行けませんよ」

 かきくどくように言う宰相君は、姫の体に夢中である。

 秋の夜は長く、恋人たちにとっては短い。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ