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第23遭遇

 長いとはいえない足を、右、左と交互に前に出しながら必死になって、走るんですが。


「はあ、はあ、はあ」


 才華ちゃんのほうがくらべものにならないぐらい足が長く、更に運動神経までも良いので追いつけるはずもなく。

 王子さまがどこにいるのかなんて、わからないですし。

 どうしたものかと、それでも足を止めることが出来ずに走りながら考えていると、


『――――!!!』


 なにやら少し離れたところから、悲鳴のようなものが聞こえてきました。

 

「・・・・・・」


 いや~な予感がするのは気のせいでしょうか?

 このタイミングでの悲鳴って、なんだかとっても才華ちゃんが関わってそうです。

 とりあえず確認だけでもと、慌てて方向転換をして声の聞こえた方へと足を進めます。

 私たちの学校の校舎は、L字型の新校舎とI字型の旧校舎とで全体でコの字型になっているんですが、そのコの字の真ん中に中庭があり、どうも騒がしいのはその中庭みたいです。

 辿り着けば、そこには仁王立ちしている才華ちゃんの後ろ姿と、騒いでいる女の人たちが多数。

 そして

 お尻を地面について目を見開きながら才華ちゃんを見上げる、王子様がいました。

 その制服の胸元には、はっきりくっきりと、足跡がひとつ。

 才華ちゃんの、必殺とび蹴り炸裂ですか!!

 こんな時でなければ、見たかったです!!

 が

 

「王子様になんてことするのよ!!」

「謝りなさいよ!!」

「ひどいわ!!」


 騒ぎ立てる女の人たちの声に、見たかったなんて言ってる場合じゃないと才華ちゃんに近寄ります。

 そんな周りの声なんて華麗にすべてスルーして、才華ちゃんは『それ外国の人には絶対やっちゃダメです!!』ポーズをした上で


「顔洗って出直しな!!」


 才華ちゃん!!

 カッコ良すぎです!!

 惚れ惚れするほど素敵です!!

 

 ってそんなこと言ってる場合でもありませんよね。

 才華ちゃんはわたしの為にやってくれたんですから。

 見惚れたことで止まってしまっていた足を再び動かし、やっちゃいけないポーズをしている才華ちゃんの腕にしがみつきます。


「才華ちゃん!!」

「ん? 彩音か、どうした?」


 まったくもって動じていない才華ちゃんに笑いかけながら


「ありがとうございます。けど、こういったことはちゃんと自分でケリをつけないといけないと思います」


 そう言うと才華ちゃんはひとつ頷き、一歩後ろに下がってくれました。

 こういう「自分のことは自分で」という考えは、私も才華ちゃんにも共通した事です。

 通常であれば才華ちゃんもこういった行動をせず私にちゃんと任せてくれるんですが、王子様の発言があまりにもあんまりだったようで。

 本当は昨日にきちんと平手打ちをしてるので、更に才華ちゃんからのとび蹴りまで食らう羽目になった王子様には少し同情もしてしまいますが。

 やっぱり発言が悪すぎました。

 一瞬、事情を説明しにきてくれていたアルちゃんの姿が頭を過りました。


 そういえば、異世界からきたとかなんとか言っていた気がするんですが


 お話を聞く前に、寝てしまいましたし。

 更にこんな状況にもなってしまいましたので、ちょっと申し訳ないです。

 それでもきちんと言うべきことは言わないといけませんよね。

 地べたに座ったままの王子様の前にしっかりと立ち、その琥珀色の瞳を正面から見つめ 


「王子様、才華ちゃんが失礼しました」


 まずは、才華ちゃんの行動についての謝罪。

 いくら私の為とはいえ、問答無用のとび蹴りでしたので、才華ちゃんが謝る必要はないと思いますが私から一言があってもいいと思うので。

 そして


「けど、昨日の件は丁重にお断りさせていただきます」


 言うだけ言って、頭をひとつ下げて。

 頭をあげて王子様を見れば、引き続き驚いた顔。

 それは「絶対零度の瞳」ではなく、年相応の温度が見えちょっと可愛らしかったです。

 それに満足して、後ろにいた才華ちゃんを促して一緒に教室に向かいます。

 背後でなにやら悲鳴のような金切声のような言葉になっていない声が聞こえましたが、無視です、無視。

 才華ちゃんに至ってはわたしの態度がお気に召したのか、ご機嫌みたいですね。

 才華ちゃんがご機嫌なのなら、私も気分が良いです。

 だからふたりで笑いあいながら教室に戻っていきました。

ここまで読んでいただいて、感謝、多謝vv

数年ぶりの更新をしてみました。もしまた読んでやろうという奇特な方がいらっしゃったらとてもうれしいです。

こちらも徐々に進めていければな、と思います。

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