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ラップ付き小説 ReversCrown 元気ないやつこっちおいで  作者: egubi
単独ライブ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/56

2-7-10 終演後、ドリンクバーの沼

mcRC「この小説の歌は実際に聴けるから、聴きながら読んでみてくれよな」

聴く場合はこちら:

コピペしてブラウザに貼り付けて、、、。とぶぞ。


small win

https://youtu.be/SwQWUrYHf-E?si=gROitAythWZkGliJ


リバ点呼

https://youtu.be/gxHNR1Utnso?si=GxhyaBuPoYXKMjt4


THAT’S LIVE

https://youtu.be/ujqsLz2TWQA?si=MmEQcLI5hnIdcJpq


green light

https://youtu.be/YR4ECQMRI9E?si=gXQ5EDmQWGXRzpYt


ESCORT

https://youtu.be/U-FlEKJfJ9U?si=m_t-jL5suG1I4umI


Reverse Crown/リバクラ

https://youtu.be/FI0rcVj1WUA?si=YTlhx_1Sq_TaV9Qe


DESTINATION

https://youtu.be/JTYqNX2aSEM?si=XiPvuQManbc7qZ__


UNSEEN HANDS

https://youtu.be/-7JI-GA7Jkg?si=1bDm7SNAOzQLAYts


THAT SEAT

https://youtu.be/RroRseSoJ_8?si=hIIpjx5z-IxxfnTJ


BBQ

https://youtu.be/EtMf8rkKn_0?si=fOf9lmgp2QZR2MKR


HOMEBASE

https://youtu.be/ARSsZ0r8CRc?si=2e8PbVXltjdbNr2Q


feel

https://youtu.be/PAmI_q-HbFU?si=FZuLbe2ZiBzmms51


keep moving

https://youtu.be/QWW73v7L1D0?si=7YEjlRgRRuQhve80


CALL ME OUT

https://youtu.be/Y161l0pX_wA?si=GZjh8_JyrDkMdkLv


READY

https://youtu.be/P2sNZMSjjdU?si=GsE110DD92sYEhr4


SHOWTIME!

https://youtu.be/RrqmZjsded4?si=kZt8W-O5sWGhMJaN


ATTACK

https://youtu.be/tRSOHKXvij8?si=xqiYugwdtS0mTWMu


SAY IT TO ME

https://youtu.be/AdAhmiHwxfM?si=BMBopJs6y9S6hLWM


ORIGIN

https://youtu.be/v7r3_l4mYQM?si=l1vPLtDcNWjW9O6H


nofake

https://youtu.be/oV7c-3TJMgM?si=WDW85lU6iqQsmqZy


決めろ!はコチラ

https://youtu.be/P_2d3hcx3Uw?si=hvvTW3RMB2adTtwN


RUN IT

https://youtu.be/ptZZJdr_2hc?si=1Fw9cRYCdJAd1so4


ORDER

https://youtu.be/AdAhmiHwxfM?si=BMBopJs6y9S6hLWM

暗転のあとも、しばらく拍手は止まらなかった。


ステージはもう見えない。


逆さまのクラウンの光も消えた。

三本のマイクも闇に沈んだ。

さっきまでそこに立っていた三人の姿は、もう客席からは見えなかった。


それでも、誰もすぐには動けなかった。


ライブが終わった。


その事実だけが、少し遅れて会場に降りてくる。


低音の余韻が、まだ胸の奥に残っている。

手のひらは熱い。

喉は少し痛い。

目元は重い。

タオルは湿っている。

ペットボトルは、いつの間にか空に近くなっている。


誰かが、小さく息を吐いた。


それを合図にしたように、会場のあちこちで人が少しずつ動き始める。


立ち上がる人。

座ったまま膝に置いた荷物を見下ろす人。

スマホを確認する人。

何も撮っていない画面を、なぜかしばらく見つめる人。

隣の友人に何か言おうとして、言葉にならず笑う人。


退場の案内が、会場に流れた。


「出口付近が混み合いますので、スタッフの案内に従って、ゆっくりお進みください」


その声は、現実だった。


ライブの魔法を壊す声ではない。


むしろ、魔法を安全に持ち帰らせるための声だった。


客席の前方から、少しずつ列が動き出す。


誰も急がない。


さっきまで叫んでいた人たちが、今は不思議なくらい静かに動いていた。


それは冷めたからではない。


まだ胸の中が熱すぎて、雑に動けなかった。


「足元、気をつけてください」


スタッフが声をかける。


「忘れ物ないようにお願いします」


「物販の追加販売は終了しています」


「出口はこちらです」


その声に、客席が素直に従っていく。


誰かが椅子の下を覗く。

誰かが落ちたタオルを拾って、前の人に渡す。

誰かが、通路側の人に先を譲る。

誰かが、泣いている友人の背中に手を添える。


大きなことではない。


でも、その一つひとつが、さっき歌われた言葉の続きみたいだった。


隣に少し道を譲ったこと。


スタッフさんの案内を聞いたこと。


それが、もう客席の中で始まっていた。


会場は、まだSMALL WINの中にいた。


五人組も、すぐには動けなかった。


Miwaは、椅子に座ったままタオルで目元を押さえている。


Ninaは、立ち上がったものの、バッグの持ち手を握ったまま固まっていた。


Yuiは、スマホで時間を確認している。

終電。

乗り換え。

帰宅時間。

明日の予定。


現実的な確認をしている顔なのに、目元だけは少し赤い。


Saraは、膝の上に置いたバッグを見下ろしていた。


本当は、今すぐ何かを書きたかった。


小さい勝ちも価値。


あの言葉を、忘れる前に文字にしたかった。


でも、今ここでペンを出すと、たぶん止まらなくなる。

だから、今日は頭の中だけで閉じる。


Kateは、最後までステージの方を見ていた。


暗いステージ。


何も見えない。


でも、そこにまだ何かが残っているような気がした。


人が立っていた場所には、しばらく熱が残る。


会議室の椅子でも。

職場の机でも。

ライブのステージでも。


そこに誰かが本気で立ったなら、場所は少しだけ変わる。


Kateは、静かに息を吐いた。


「行こう」


その一言で、五人が動いた。


Miwaが少し慌てて立ち上がる。


「待って、顔大丈夫?」


NinaがMiwaを見る。


「大丈夫じゃない」


「ひどい?」


「ひどいというか、ライブ後の正直な顔」


「やめて。社会人として不適切」


Saraが、少し笑った。


「今日は適切じゃなくていいと思う」


Yuiが淡々と言う。


「ただし、公共交通機関に乗れる範囲で」


Ninaが頷いた。


「現実の線引き」


Kateが言う。


「そこは大事」


Miwaは、少しだけ笑った。


泣いたあとに笑うと、顔が変になる。


それでも、今日はそれでいい気がした。


通路に出ると、近くにいた若い男性二人組が、まだ小さな声で話していた。


「俺、今日のSmall win、声出したことやわ」


「お前、途中からめっちゃ出してたやん」


「いや、最初は無理やった」


「でも出たやん」


「うん」


少し間があった。


「……勝ちやな」


「勝ちやろ」


その会話を聞いて、Ninaが小さく肩を震わせた。


笑ったのか、泣きそうになったのか、自分でも分からなかった。


別の列では、親子連れの子どもが、母親の手を引いていた。


「お母さんのSmall winは?」


母親は少し困った顔で笑う。


「えー、何かな」


「今日来たこと?」


「うん。それも勝ち」


「じゃあ、ぼくは?」


「最後まで起きてたこと」


「それ勝ち?」


「かなり勝ち」


子どもは満足そうに頷いた。


「かなり勝ち」


その言い方を聞いて、近くの人が少し笑った。


笑い声は小さい。


でも、温かかった。


誰も大げさに拾わない。

誰もからかわない。

ただ、そこにある小さな会話を、そのまま通す。


それも、この会場の空気だった。


出口に近づくにつれて、夏の夜の匂いが入ってきた。


冷房の効いた会場から、湿った外気へ。


その境目で、身体が少し現実に戻る。


ロビーには、まだスタッフが立っていた。


「本日はありがとうございました」


「足元お気をつけください」


「忘れ物の確認をお願いします」


物販台は、もう片づけに入っている。


さっきまで人が並んでいた場所には、畳まれたクロス。

空になった段ボール。

少しだけ残った案内札。

スタッフ用の飲み物。


熱狂の裏側は、いつもこういう景色になる。


使ったものを戻す。

数える。

畳む。

捨てる。

確認する。

次に使えるようにする。


Yuiは、その景色を見て小さく言った。


「終わった後の方が、仕事っぽい」


Saraが頷く。


「うん。現場だね」


Miwaが、物販台の方を見た。


「私たち、手伝えたのかな」


Kateが答える。


「手伝えた」


短い。


でも、迷いのない声だった。


Miwaは少し驚いたようにKateを見た。


Kateは続けた。


「完璧かどうかじゃなくて、今日必要なところには入れたと思う」


Ninaが口を挟む。


「それ、Small winじゃん」


Yuiがすぐに言う。


「かなり該当する」


Saraが笑った。


「判定早い」


Kateは少しだけ目を伏せた。


「じゃあ、それで」


Miwaが首をかしげる。


「それで?」


Kateは、少しだけ柔らかく笑った。


「今日の私たちのSmall win」


五人は、しばらく黙った。


それは、誰かが大声で言うようなことではなかった。


でも、全員が同じ場所に触れた。


自分たちは、今日ここに来た。


ただ見に来ただけではない。

ただ元部長の晴れ舞台を見届けに来ただけでもない。

できることを探して、少しだけ手を出した。


邪魔をしないように。

出過ぎないように。

でも、必要なところで引っ込まないように。


それは簡単ではなかった。


楽しかっただけでは済まない。

懐かしかっただけでも済まない。

嬉しいだけでは、立てない場所だった。


それでも、今日はそこに立てた。


Miwaが、泣き疲れた顔で笑った。


「勝ちだわ」


Ninaが頷く。


「勝ち」


Yuiが言う。


「小さいけど」


Saraが続ける。


「だからいいんでしょ」


Kateは、何も言わなかった。


ただ、少しだけ頷いた。


ロビーを出ると、外の空気が一気に身体を包んだ。


夜なのに暑い。


アスファルトは、昼の熱をまだ持っている。

街灯の下を、人がゆっくり流れていく。

会場の前では、リバクルーたちが少しずつ駅へ向かっていた。


誰かがタオルを肩にかけている。

誰かがTシャツの背中を見せながら歩いている。

誰かが泣きながら笑っている。

誰かが、もうSNSに感想を書き始めている。

誰かが、何も言わずに空を見ている。


ライブが終わっても、人はすぐには日常に戻れない。


でも、戻らなければならない。


その間にあるのが、帰り道だった。


ライブが終わったあと、五人はしばらく会場の外で立ち尽くしていた。


夜風はあった。


けれど、涼しいというより、熱くなりすぎた身体の表面を少しだけ撫でていく程度だった。


耳の奥では、まだ低音が鳴っている。

手のひらは拍手しすぎて熱い。

喉は叫びすぎて少しざらつく。

目元は、泣いたあとで重い。


なのに、誰も帰ろうとしない。


駅は近い。

終電まではまだある。

明日は普通に仕事だ。

それぞれの生活もある。


それでも、足が動かなかった。


最初に口を開いたのはNinaだった。


「……このまま帰ったら、家でひとり反省会始まる」


Saraがすぐに言う。


「反省することある?」


Ninaは首を横に振った。


「ない。喋りたいだけ」


Yuiがスマホで時間を確認した。


「駅前のファミレス、まだ開いてる」


Kateが静かに頷く。


「行こう」


Miwaが少し笑った。


「反省会?」


Ninaが即答した。


「違う。処理会」


Saraが眉を上げる。


「感情の?」


「そう。今、情緒が未処理ファイルで溢れてる」


Yuiが淡々と言う。


「容量不足」


Kateが小さく笑った。


「外部ストレージとしてファミレス」


Miwaはその言い方に吹き出した。


「やめて。ドリンクバーがクラウドみたいになる」


五人は、駅前のファミレスへ向かった。


会場から少し離れると、街は普通の夜に戻っていく。


信号の電子音。

コンビニの自動ドア。

駅へ向かう人の足音。

居酒屋の前で笑う声。

タクシーのウインカー。


でも、五人の中だけは、まだライブが終わっていなかった。


Reverse Crownの低音。

ESCORTの横に来い。

THAT SEATの重さ。

Unseen Handsの涙。

THAT’S LIVEのざわめき。

BBQの煙。

READYのタオル。

DESTINATIONの向き。

リバ点呼の返事。

SMALL WINの拍手。


全部が、まだ胸の中で鳴っていた。


ファミレスに入ると、冷房の風が一気に当たった。


五人は同時に息を吐いた。


「文明……」


「冷房は文明」


「ドリンクバーも文明」


「ポテトも文明」


「ポテトは勝ち」


「早い。まだ頼んでない」


奥のボックス席に案内される。


五人は席に座るなり、荷物を広げた。


READYタオル。

赤ペン。

物販袋。

逆さまクラウンのTシャツ。

スマホ。

チケットの半券。

少ししわになったうちわ。


テーブルが、一瞬でライブ帰りの作戦本部みたいになった。


Ninaが赤ペンを取り出して、胸の前で掲げる。


「これ、もうお守りだよね」


Saraが頷く。


「聞ける人赤ペン」


Yuiが真顔で言う。


「物販なのに、対人関係改善ツールとして成立している」


Kateが赤ペンを見ながら言った。


「買った人、帰ってから机に置きそう」


Miwaが笑う。


「職場用と家用で二本買ってた人いたよ」


Ninaが目を輝かせる。


「家庭にもCALL ME OUTが導入される」


Saraが即座に言う。


「運用注意。刺すためじゃなくて、聞くための赤ペンです」


Yuiがメニューを開きながら言った。


「注意書き必要だね」


Kateがぽつりと返す。


「“人に向けないでください”」


五人は一斉に笑った。


笑ったら、少しだけ呼吸が戻った。


注文は、ほとんど議論にならなかった。


ポテト二皿。

唐揚げ。

シーザーサラダ。

ドリンクバー五つ。

チョコパフェ。

ミニラーメン。


ミニラーメンを頼んだYuiに、Ninaが目を丸くする。


「ここでラーメン?」


Yuiは淡々と答える。


「体が炭水化物を求めてる」


Miwaがすぐに反応した。


「リバクラーメン?」


Saraが続く。


「リバクライスも付ける?」


Kateが低い声で言った。


「柔軟性ええな」


五人は肩を震わせて笑った。


店員が去ったあと、Ninaが両手をテーブルについた。


「で」


全員が見る。


Ninaは、真剣な顔で言った。


「何から喋る?」


その瞬間、全員が同時に息を吸った。


「Reverse Crownの登場が――」


「いやESCORTの距離感――」


「THAT’S LIVEから行かせて――」


「Unseen Handsがまだ残ってる――」


「SMALL WINは最後にしよ――」


五人は同時に止まった。


そして、また笑った。


Saraが赤ペンを持ち上げる。


「待って。議題整理しよう。このままだと全員同時発火する」


Yuiが頷く。


「順番が必要」


Ninaが言う。


「でも順番通りに話せる自信ない」


Kateが静かに返す。


「ないね」


Miwaが小さく言った。


「もうさ、一番喋りたいところからでいいんじゃない?」


Ninaが即答する。


「THAT’S LIVE」


Saraが同時に言う。


「SMALL WIN」


Yuiが言う。


「トラブル対応」


Kateが言う。


「Unseen Hands」


Miwaが少し考えてから言った。


「……部長」


四人がMiwaを見る。


Miwaは慌てて口を押さえた。


「違う、ここ身内だけだから!」


Saraがすぐ紙ナプキンを広げる。


「本日のルールを明文化します」


赤ペンで書く。


外ではmcRCさん。

ここでは心の整理として部長呼び可。

ただし声量注意。

会社名・個人情報・具体的職場話は禁止。


Ninaがそれを覗き込む。


「議事録?」


Saraは真顔で答えた。


「感情はルールがあると安全に暴走できる」


Yuiが頷く。


「名言」


Kateが言う。


「もう暴走してるけどね」


Miwaが顔を両手で覆った。


「やめて……」


ドリンクバーへ向かう。


氷がコップに落ちる音が、からから鳴った。


Miwaがその音で笑う。


「ESCORTのグラスの氷、思い出した」


Saraが炭酸を注ぎながら頷く。


「硬い空気がほどける音だね」


Yuiがお茶を入れながら言う。


「あの曲、二曲目で本当に正解だった」


Kateがコーヒーのボタンを押しながら続けた。


「一曲目で名乗って、二曲目で距離を決めた。あれがあったから、後の重い曲が上からにならなかった」


Ninaが振り向く。


「それ、めちゃくちゃいい」


Kateはコーヒーを取って言った。


「ESCORTが先に“横に来い”を置いてる。だからTHAT SEATもSMALL WINも、説教じゃなくて隣からの言葉になる」


Saraがすぐに反応した。


「それ、席戻ったら書く」


Miwaはココアを持ったまま、小さく呟いた。


「……ほんと、変わらない」


四人は何も言わなかった。


ここでは、それを言っていい。


Miwaは続けた。


「昔から、上から動かす人じゃなかった。横に来る人だった」


Yuiが静かに頷く。


「うん」


Ninaが言う。


「だから今日、あれだけ人が声返したんだと思う」


Saraがコップを持って席に戻りながら言った。


「信頼って、盛り上げの技術だけじゃ作れないからね」


席に戻ると、話題は自然にTHAT’S LIVEへ流れた。


Ninaが前のめりになる。


「あれさ、何なの?」


Miwaが即座に指摘する。


「語彙」


「いや、今回は本当に“何なの”なの! トラブルから、作戦タイムで、決めろ!で、さらに未完成曲を今作るって、普通のライブでそんなこと起きる?」


Yuiが水を飲んでから言った。


「普通は空気が落ちる」


Saraが頷く。


「しかも落ち方が嫌な落ち方になる。客席が不安になるし、スタッフも焦るし、演者も困る」


Kateが続ける。


「でも、隠さなかった。トラブルはあるって言った。でも誰かを責めなかった」


Miwaが、少し目を伏せる。


「“次の曲がうまくいかないんだわ”って、あの言い方がさ」


Ninaが頷く。


「客席に嘘ついてないのに、裏側を見せすぎてない」


Saraが赤ペンでナプキンに書く。


隠さない。

晒さない。

責めない。

ライブに変える。


Yuiが覗き込む。


「それもう危機対応マニュアル」


Kateが言う。


「でもマニュアルだけじゃできない」


Saraが頷いた。


「準備があるから即興が成立する」


Ninaが指を鳴らす。


「それ!」


Miwaが笑う。


「Kateがさっき言ってたやつ」


Kateは少し照れたようにコーヒーを飲む。


「本当にそう思っただけ」


Saraはさらに書いた。


準備があるから即興が成立する。


Ninaが感心する。


「今日のナプキン、捨てられないやつだ」


Yuiが真顔で言う。


「油つく前に写真撮って」


Miwaが慌ててスマホを出す。


「撮る」


五人でナプキンを囲んで写真を撮る。


ファミレスの白い照明。

赤ペンの文字。

少し水滴のついたコップ。

ライブ後の手元。


それだけなのに、なんだか大事なものに見えた。


料理が届いた。


ポテトと唐揚げが置かれると、Ninaが両手を広げた。


「肉体に戻ろう!」


Yuiがミニラーメンを受け取りながら言う。


「精神が先に行きすぎた」


Saraがポテトを取る。


「BBQのあとに唐揚げ。影響されすぎ」


Ninaがポテトを掲げる。


「揚げ加減が命だぜ」


Miwaが吹き出す。


「火の調節どこ行ったの」


Kateがポテトを取りながら言った。


「ささみじゃないんだ」


Yuiが即答する。


「ささみは一旦置いたから」


Saraが低く言う。


「柔軟性えぐない?」


全員がまた崩れた。


笑いすぎて、Miwaが涙を拭く。


「もうだめ、泣いてるのか笑ってるのか分からん」


Ninaが言う。


「情緒がBBQされてる」


Yuiが冷静に返す。


「焦げてるね」


Kateが静かに言った。


「火の調節に気をつけろ」


また笑いが起きた。


でも、Unseen Handsの話題になると、自然に声が落ちた。


Miwaがポテトを置いた。


「あれは……」


言葉が止まる。


Ninaも茶化さなかった。


Saraもペンを止めた。


Miwaは少しだけココアを見つめてから言う。


「見えてないと思ってたものが、見えてるって言われた感じがした」


Yuiが頷く。


「今日、物販少し手伝ったじゃん」


「うん」


「あれ、大きなことじゃないけど、誰かのライブ前の不安をちょっと減らせたかもしれないって思ったら、Unseen Handsが変なところに入ってきた」


Saraが言う。


「見えない手って、掃除とか裏方だけじゃなくて、空気を整えることも含むんだね」


Kateが続ける。


「誰かが困らないように、少し先に動くこと」


Ninaが小さく言う。


「それ、今日の私たちも少しだけできたのかな」


Miwaは頷いた。


「できたと思う」


そして、少し照れたように笑った。


「部長、昔からそういうの見る人だったじゃん」


誰も止めなかった。


Saraだけが小さく指を立てる。


「声量」


Miwaは両手で口を押さえた。


「はい」


Yuiが言う。


「でも分かる。誰にも褒められないことを、後から拾う人だった」


Kateが静かに言う。


「それを今日、歌にして知らない人たちにも渡してた」


Ninaが胸を押さえた。


「そこが、なんか……胸の奥に残る」


Saraがすぐ反応する。


「語彙いい」


Ninaが得意げに笑う。


「成長した」


Miwaがしみじみ言う。


「かわんないね」


Kateが頷く。


「変わったところもある。でも、そこは変わってない」


その言葉で、Miwaの目元が少し熱くなった。


けれど、すぐにNinaがポテトを差し出す。


「泣く前にポテト」


Miwaは受け取る。


「ありがとう」


Yuiが言う。


「それもUnseen Hands」


Saraがメモる。


泣く前にポテト=小さな支え。


Kateが小さく笑った。


「それは書くんだ」


「大事」


話題はSMALL WINへ移った。


Yuiがミニラーメンをすすり終えて、静かに器を置く。


「最後、SMALL WINで締めたのが良かった」


Saraが頷く。


「大きな勝ちを独占しなかったよね」


Ninaが言う。


「満員ライブ成功、トラブル乗り越えた、アンコールもらった。普通なら“俺たち勝ったぜ!”で終わるじゃん」


Kateが続ける。


「でも、最後に“あなたの今日の勝ち”に返した」


Saraがすぐ書く。


成功を独占しない。

客席の明日に分ける。


Miwaがその文字を見つめた。


「それ、ほんとにそう」


Yuiが言う。


「小さい勝ちって、現実だと流れるんだよね。仕事終わった。学校終わった。家のこと終わった。嫌なことあったけど帰ってきた。誰も褒めない」


Ninaが指を折る。


「LINE返した。洗濯した。ご飯食べた。寝る準備した」


Saraが言う。


「それに名前をつけるのがSMALL WIN」


Kateが言う。


「名前があると、見える」


Miwaが小さく呟く。


「小さい勝ちも、価値」


五人は少し黙った。


その言葉は、ファミレスのテーブルに静かに置かれた。


ポテトの湯気。

コップの水滴。

少し溶け始めたパフェ。

赤ペンの文字。

ドリンクバーの氷の音。


どれも派手ではない。


でも、今日の終わりにはちょうどよかった。


Saraがナプキンを新しく広げる。


「今日のSmall Win、発表しよう」


Ninaが目を輝かせる。


「やろう」


Yuiが少し笑う。


「本当に始まった」


Kateが頷く。


「いいと思う」


まずNina。


「今日、好きなものを好きって全力で出せた」


四人が静かに聞く。


「普段はちょっと抑えるじゃん。大人だし、周り見るし。でも今日は、点呼も叫んだし、BBQで肉も叫んだし、泣いたし、笑ったし、好きって体から出た」


Miwaが優しく笑う。


「勝ち」


Saraが書く。


Nina:好きなものを好きって出せた。


次にYui。


「私は、現実のことを忘れずに、それでも今日を楽しめたこと」


Ninaが頷く。


「深い」


「明日仕事だし、生活はあるし、お金も時間も有限。でも、それを理由に楽しむのをやめなかった。ちゃんと来た。ちゃんと楽しんだ」


Kateが言う。


「勝ち」


Saraが書く。


Yui:現実を持ったまま楽しめた。


Saraは少し考えてから言った。


「私は、感情を言葉にして残せたこと」


Miwaが微笑む。


「Saraらしい」


「ライブ中、何回も言葉がなくなった。でも、あとでちゃんと拾おうと思えた。流さないで、価値にしたいと思った」


Kateが言った。


「価値にする人だね」


Saraは照れながら書く。


Sara:感情を言葉にして残せた。


Kateの番になる。


Kateは、コーヒーを一口飲んでから言った。


「私は、過去と今を両方見られたこと」


Miwaが顔を上げる。


「前の場所で知っていた人と、今日のmcRCさんを、ちゃんと別のものとして見られた。でも、繋がっていることも否定しなかった。どちらか片方だけにしなくてよかった」


Saraが小さく言った。


「それ、すごい勝ち」


Miwaは少し泣きそうになりながら頷いた。


Saraが書く。


Kate:過去と今を、両方本当として見られた。


最後にMiwa。


全員が見る。


Miwaは、ココアのカップを両手で包んだ。


「私は……ちゃんと好きだって思えたこと」


Ninaが目を丸くする。


Saraが口元を押さえる。


Yuiが少し笑う。


Kateは静かに見ている。


Miwaは慌てて続けた。


「恋とか、そういう意味だけじゃなくて」


Saraが優しく言う。


「うん」


「人として、音楽として、言葉として、今日のリバクラをちゃんと好きだって思えた。前の関係とか、知ってることとか、そういうのを言い訳にして逃げなかった」


Ninaが小さく言う。


「勝ち」


Miwaは照れて俯く。


Saraが書いた。


Miwa:好きだと認めた。


Ninaがそれを覗き込む。


「重い」


Miwaが即座に顔を上げる。


「言うな!」


Yuiが笑う。


「でも勝ち」


Kateが頷く。


「価値でもある」


Saraが赤ペンを置いた。


「小さい勝ちも価値」


五人は、そのナプキンを見た。


ポテトの油が少しついている。

ドリンクバーの水滴で端が少しふやけている。

でも、そこには五人分のSmall Winが書かれていた。


妙に大事なものに見えた。


そして、Ninaがぽつりと言った。


「……あたし、恋になるかもしれない」


Miwaが固まる。


「え?」


Saraが即答する。


「遅い」


「遅いって何!?」


Yuiが唐揚げを取りながら言う。


「私はSMALL WINでかなり持っていかれた」


Miwaが見る。


「Yuiまで?」


Kateが静かに言う。


「私はTHAT’S LIVE」


「Kateまで!?」


Saraが冷静に言う。


「私はUnseen HandsとSMALL WIN」


Ninaが手を叩く。


「じゃあ全員じゃん」


Miwaが両手で顔を覆った。


「待って。全員なの?」


Kateが言う。


「恋かどうかは分からない」


Yuiが続ける。


「でも、心は持っていかれた」


Saraが言う。


「それを世間では沼と言います」


Miwaが呻く。


「やめて……」


Ninaが満面の笑みで言った。


「今日のSmall Win。全員、沼入りを認めた」


Miwaが顔を上げる。


「それ勝ちなの?」


Kateが即答する。


「勝ち」


Saraがナプキンに追加した。


全員:沼入りを認めた。


Yuiが呆れながら笑う。


「それ書くの?」


Saraは真顔で言った。


「記録です」


Ninaがチョコパフェを一口食べる。


「甘い。勝ち」


Miwaが笑いながら言う。


「もう何でも勝ちじゃん」


Kateが静かに返す。


「それでいいんじゃない?」


その言葉に、五人は少しだけ黙った。


それでいい。


今日の夜は、そういう夜だった。


大きくなくてもいい。

派手じゃなくてもいい。

誰かに勝たなくてもいい。


今日、自分を少し認められたなら。


それがSmall Win。


ファミレスの窓の外を、終演後の人たちがぽつぽつ歩いていく。


逆さまクラウンのTシャツを着た人。

READYタオルを首にかけた人。

赤ペンを胸ポケットに挿した人。


みんな、それぞれの帰り道へ向かっている。


明日になれば、また日常が始まる。


でも今夜だけは、少しだけ違う。


誰も言わなくても、自分で言える。


今日、勝った。


Ninaがパフェのスプーンを置いて言った。


「明日、仕事行けるかな」


Yuiが即答する。


「行く」


Saraが頷く。


「行く。小さい勝ち積む」


Kateがコーヒーを飲み干した。


「コツコツやろう」


Miwaが、少しだけ天井を見た。


「うん」


そして、笑った。


「今日も勝ったな」


五人は顔を見合わせた。


それから、誰からともなく笑った。


笑いすぎて、また少し泣きそうになった。


でも、それも含めて。


今夜のSmall Winだった。

mcRC「この小説の歌は実際に聴けるから、聴きながら読んでみてくれよな」

聴く場合はこちら:

コピペしてブラウザに貼り付けて、、、。とぶぞ。


small win

https://youtu.be/SwQWUrYHf-E?si=gROitAythWZkGliJ


リバ点呼

https://youtu.be/gxHNR1Utnso?si=GxhyaBuPoYXKMjt4


THAT’S LIVE

https://youtu.be/ujqsLz2TWQA?si=MmEQcLI5hnIdcJpq


green light

https://youtu.be/YR4ECQMRI9E?si=gXQ5EDmQWGXRzpYt


ESCORT

https://youtu.be/U-FlEKJfJ9U?si=m_t-jL5suG1I4umI


Reverse Crown/リバクラ

https://youtu.be/FI0rcVj1WUA?si=YTlhx_1Sq_TaV9Qe


DESTINATION

https://youtu.be/JTYqNX2aSEM?si=XiPvuQManbc7qZ__


UNSEEN HANDS

https://youtu.be/-7JI-GA7Jkg?si=1bDm7SNAOzQLAYts


THAT SEAT

https://youtu.be/RroRseSoJ_8?si=hIIpjx5z-IxxfnTJ


BBQ

https://youtu.be/EtMf8rkKn_0?si=fOf9lmgp2QZR2MKR


HOMEBASE

https://youtu.be/ARSsZ0r8CRc?si=2e8PbVXltjdbNr2Q


feel

https://youtu.be/PAmI_q-HbFU?si=FZuLbe2ZiBzmms51


keep moving

https://youtu.be/QWW73v7L1D0?si=7YEjlRgRRuQhve80


CALL ME OUT

https://youtu.be/Y161l0pX_wA?si=GZjh8_JyrDkMdkLv


READY

https://youtu.be/P2sNZMSjjdU?si=GsE110DD92sYEhr4


SHOWTIME!

https://youtu.be/RrqmZjsded4?si=kZt8W-O5sWGhMJaN


ATTACK

https://youtu.be/tRSOHKXvij8?si=xqiYugwdtS0mTWMu


SAY IT TO ME

https://youtu.be/AdAhmiHwxfM?si=BMBopJs6y9S6hLWM


ORIGIN

https://youtu.be/v7r3_l4mYQM?si=l1vPLtDcNWjW9O6H


nofake

https://youtu.be/oV7c-3TJMgM?si=WDW85lU6iqQsmqZy


決めろ!はコチラ

https://youtu.be/P_2d3hcx3Uw?si=hvvTW3RMB2adTtwN


RUN IT

https://youtu.be/ptZZJdr_2hc?si=1Fw9cRYCdJAd1so4


ORDER

https://youtu.be/AdAhmiHwxfM?si=BMBopJs6y9S6hLWM

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