2-7-9 SMALL WIN
mcRC「この小説の歌は実際に聴けるから、聴きながら読んでみてくれよな」
聴く場合はこちら:
コピペしてブラウザに貼り付けて、、、。とぶぞ。
small win
https://youtu.be/SwQWUrYHf-E?si=gROitAythWZkGliJ
リバ点呼
https://youtu.be/gxHNR1Utnso?si=GxhyaBuPoYXKMjt4
THAT’S LIVE
https://youtu.be/ujqsLz2TWQA?si=MmEQcLI5hnIdcJpq
green light
https://youtu.be/YR4ECQMRI9E?si=gXQ5EDmQWGXRzpYt
ESCORT
https://youtu.be/U-FlEKJfJ9U?si=m_t-jL5suG1I4umI
Reverse Crown/リバクラ
https://youtu.be/FI0rcVj1WUA?si=YTlhx_1Sq_TaV9Qe
DESTINATION
https://youtu.be/JTYqNX2aSEM?si=XiPvuQManbc7qZ__
UNSEEN HANDS
https://youtu.be/-7JI-GA7Jkg?si=1bDm7SNAOzQLAYts
THAT SEAT
https://youtu.be/RroRseSoJ_8?si=hIIpjx5z-IxxfnTJ
BBQ
https://youtu.be/EtMf8rkKn_0?si=fOf9lmgp2QZR2MKR
HOMEBASE
https://youtu.be/ARSsZ0r8CRc?si=2e8PbVXltjdbNr2Q
feel
https://youtu.be/PAmI_q-HbFU?si=FZuLbe2ZiBzmms51
keep moving
https://youtu.be/QWW73v7L1D0?si=7YEjlRgRRuQhve80
CALL ME OUT
https://youtu.be/Y161l0pX_wA?si=GZjh8_JyrDkMdkLv
READY
https://youtu.be/P2sNZMSjjdU?si=GsE110DD92sYEhr4
SHOWTIME!
https://youtu.be/RrqmZjsded4?si=kZt8W-O5sWGhMJaN
ATTACK
https://youtu.be/tRSOHKXvij8?si=xqiYugwdtS0mTWMu
SAY IT TO ME
https://youtu.be/AdAhmiHwxfM?si=BMBopJs6y9S6hLWM
ORIGIN
https://youtu.be/v7r3_l4mYQM?si=l1vPLtDcNWjW9O6H
nofake
https://youtu.be/oV7c-3TJMgM?si=WDW85lU6iqQsmqZy
決めろ!はコチラ
https://youtu.be/P_2d3hcx3Uw?si=hvvTW3RMB2adTtwN
RUN IT
https://youtu.be/ptZZJdr_2hc?si=1Fw9cRYCdJAd1so4
ORDER
https://youtu.be/AdAhmiHwxfM?si=BMBopJs6y9S6hLWM
会場の熱は高まっていた。
「ここにいる」
その返事が、まだ壁に残っているようだった。
前方の客も。
中央の客も。
後方の客も。
立てた人も。
手だけを上げた人も。
声が出た人も。
声が出なかった人も。
それぞれの形で、そこにいることを返した。
三人は、少しだけ間を置いた。
wataは水を飲む。
EGUIはタオルで口元を拭く。
mcRCは、客席を見たまま、長く息をする。
本当に、終わりが近づいていた。
会場も、それを感じていた。
さっきまでの点呼の熱が、少しずつ別の温度に変わっていく。
騒ぐための熱ではない。
跳ねるための熱でもない。
胸の奥に残る熱。
持って帰るための熱だった。
mcRCがマイクを上げた。
「最後の曲です」
会場に、小さな声が広がる。
「えー……」
「まだ……」
「終わらないで……」
その声は、強い拒否ではなかった。
名残惜しさだった。
帰らなければならないことは、みんな分かっている。
終電がある。
明日がある。
仕事がある。
学校がある。
家のことがある。
帰り道がある。
それでも、終わってほしくない。
その気持ちだけが、会場に薄く残った。
mcRCは頷いた。
「分かる」
それだけで、客席が少し笑う。
「俺らも、終わりたくない」
wataが小さく言う。
「かなり」
EGUIも短く続ける。
「でも終わる」
wataがすぐに見る。
「言い方」
会場が笑った。
その笑いが、少しだけ涙を乾かす。
mcRCは、その笑いを待ってから、もう一度話し始めた。
「今日、俺らはたくさん大きい景色を見せてもらいました」
客席が静かになる。
「満員の客席」
「みんなの声」
「物販の列」
「トラブルを越えた瞬間」
「THAT’S LIVEを一緒に作った時間」
「アンコール」
「さっきのリバ点呼」
彼は、会場をゆっくり見渡した。
「正直、でかい勝ちです」
客席から拍手と笑いが起きる。
wataがすぐに乗る。
「でかいです。これはでかい。俺ら、今日だけはちょっと胸張って帰っていい」
EGUIが短く言う。
「ちょっとな」
「ちょっとなん?」
「明日もある」
「厳しい」
また笑いが起きる。
だが、mcRCの声はそこから少し深くなった。
「でも」
その一言で、会場が静まる。
「最後に歌いたいのは、でかい勝ちの歌じゃない」
「小さい勝ちの歌です」
客席の熱が、少し内側に向いた。
小さい勝ち。
その言葉は、派手ではない。
アンコールの最後に置くには、少し地味に見える言葉だった。
でも、だからこそリバクラらしかった。
mcRCは言った。
「勝ちっていうと、誰かに勝つことみたいに聞こえる」
「一番になること」
「数字が伸びること」
「満員にすること」
「拍手をもらうこと」
「もちろん、それも勝ちです」
少しだけ笑う。
「俺らも、そういう勝ちはほしい」
会場が笑う。
「でも、それだけを勝ちって呼んでると」
「自分の中で起きた小さい変化を、見落とす」
wataがマイクを上げる。
「例えば」
「仕事が終わった」
「学校が終わった」
「家のことを終わらせた」
「嫌なことがあったけど、今日を越えた」
「誰にも褒められなかったけど、ちゃんと帰ってきた」
「誰かにありがとうって言えた」
「壊れる前に、もう無理って言えた」
「我慢できないって、ちゃんと出せた」
彼は少し間を置いた。
「それ、でかい表彰状は来ない」
「誰も拍手してくれないかもしれない」
「でも、勝ちです」
EGUIが続ける。
「誰かを倒した勝ちじゃない」
「自分を認めた勝ちだ」
会場が静かになった。
その一言は、深く落ちた。
自分を認める。
簡単そうで、難しい。
人は、失敗には名前をつける。
遅刻。
ミス。
失言。
怠慢。
逃げ。
甘え。
未熟。
でも、できたことには名前をつけない。
今日はちゃんと起きた。
嫌だったけど行った。
笑顔を作れた。
本当は泣きたかったのに、壊れる前に言えた。
誰かの話を聞けた。
帰ってこられた。
それらは名前をもらわないまま、日常の中で流れていく。
mcRCは静かに言った。
「名前がないと、人は見落とす」
「見落としたものは、価値がないみたいに扱われる」
「でも、違う」
「小さい勝ちも、価値です」
その言葉に、客席のあちこちで小さな反応が起きた。
大きな歓声ではない。
息が詰まる音。
膝の上のタオルを握る音。
胸に手を当てる仕草。
目元を押さえる人。
隣をちらっと見る人。
Saraは、その言葉を心の中で繰り返した。
小さい勝ちも、価値。
言葉の形がいいと思った。
勝ちと価値。
音が近い。
でも、意味は違う。
勝ちは、出来事。
価値は、それをどう見るか。
小さい勝ちに価値を与えるには、誰かがそれを見なければならない。
自分で見てもいい。
誰かに見てもらってもいい。
今日、リバクラはそれをしようとしている。
Saraは胸の中でメモを取った。
実際のペンは出さない。
でも、頭の中のノートに書いた。
小さい勝ちも価値。
Ninaは、さっきまでリバ点呼で誰よりも楽しそうに手を振っていた。
でも今は、タオルを胸の前で握っていた。
笑った。
今日、笑った。
それは彼女にとって、案外大きかった。
最近、笑ってはいた。
でも、ちゃんと腹の底からではなかった気がする。
仕事の合間に笑う。
誰かに合わせて笑う。
場を明るくするために笑う。
そういう笑いはできる。
でも今日の笑いは違った。
THAT’S LIVEで声を出した。
BBQで肉の名前を叫んだ。
リバ点呼で「ここにいる」と返した。
自分の中の子どもみたいな部分が、少し戻ってきた。
Ninaは小さく息を吐いた。
今日、笑えた。
それは勝ちだ。
Yuiは、少し現実的な顔のままステージを見ていた。
明日になれば生活は戻る。
仕事はある。
やることもある。
お金も時間も、魔法みたいには増えない。
帰れば洗濯もあるかもしれないし、スマホには未読もある。
でも、今日来た。
予定を調整して、チケットを用意して、暑い中来て、物販列を手伝うと言えた。
勝ちと言うほどのことか。
一瞬、そう思う。
でも、リバクラは今、それを勝ちと呼んでいいと言っている。
大きくなくていい。
誰かを倒さなくていい。
自分が今日を越えたなら、それでいい。
Yuiは口元だけで少し笑った。
悪くない。
こういう勝ちなら、持って帰れる。
Kateは、ステージから目を逸らさなかった。
今日も勝ったな。
心の中で、そう呟いた。
何かを完全に解決したわけではない。
過去のことも、今のことも、これからのことも、簡単には片づかない。
人は一曲聴いたくらいで別人にはならない。
でも、今日ここに来た。
声を返した。
変わらないものを見た。
変わったものも見た。
それを受け止めた。
今日を負けにしないことはできる。
それで十分だった。
Miwaは、涙を拭きながら小さく笑った。
変わらない。
心の中で、またそう思った。
あの人は、昔からそうだった。
派手に褒めるわけではない。
甘やかすわけでもない。
でも、誰かが自分の価値を見失いそうな時、小さな事実を拾う。
「それ、できてるやん」
「そこは進んだやん」
「昨日よりええやん」
そういう言い方をする人だった。
それが、今は歌になっている。
ステージの上で、たくさんの人に向けて、同じことを言っている。
かわんない。
心の中だけで、続けた。
部長。
すぐに自分で首を振る。
違う。
今はmcRC。
でも、心の奥の呼び名は簡単に変わらない。
そのことが少し恥ずかしくて、少し嬉しかった。
mcRCがマイクを握り直した。
「最後に聴いてください」
「SMALL WIN」
音が鳴った。
派手なイントロではなかった。
強く背中を押す音でもない。
勝利のファンファーレでもない。
大団円の派手なシンセでもない。
最初に鳴ったのは、柔らかい鍵盤の音だった。
夜の終わりに、誰かがそっと部屋の明かりを少し落とすような音。
その上に、軽いビートが入る。
心拍より少しだけ速い。
歩くより少しだけ前向き。
走るほどではない。
帰り道に合うテンポだった。
mcRCの声が入る。
「トラブルなしの物語なんて
誰が見てもつまらない」
客席の何人かが、ふっと笑った。
今日のライブそのものだった。
トラブルがあった。
予定通りにいかなかった。
曲順も変わった。
THAT’S LIVEが生まれた。
でも、それがあったから、今日だけの夜になった。
「壁が立ったなら合図だろ
そこがお前の出番じゃない?」
mcRCは、客席を見ていた。
まっすぐというより、一人ひとりの奥を見るように。
それぞれの壁。
仕事の壁。
学校の壁。
家庭の壁。
人間関係の壁。
自分自身の壁。
その壁が立った時、もう終わりだと思う人もいる。
でも、リバクラは違う角度で言う。
そこがお前の出番じゃない?
それは強引な励ましではない。
壁を喜べという意味でもない。
ただ、壁があるということは、そこに自分の物語が立ち上がるということ。
そういう見方だった。
Hookに入る。
「Small win, small win
でかくなくていい」
三人の声が重なる。
「Small win, small win
今日を越えりゃいい」
会場は、すぐには大声で返せなかった。
ただ、口が動いている人がいた。
今日を越えりゃいい。
その言葉を、自分に言い聞かせるように。
「Trouble on your way
でも消えない flame」
照明が、少しだけ客席側へ広がる。
強い光ではない。
顔が見える程度の、温かい光。
「誰も見てない勝ちを
俺らが見てる」
このラインで、客席の何人かが涙を落とした。
誰も見ていない勝ち。
朝起きたこと。
休まず行ったこと。
休むと決めたこと。
謝ったこと。
謝らずに距離を取ったこと。
助けてと言えたこと。
今日は無理だと言えたこと。
誰かにとっては大したことじゃない。
でも本人には、大きかったこと。
それを見てると言われる。
その一言だけで、胸の奥がほどける人がいた。
mcRCのVerseに入る。
「朝のスマホが震えて光る
『もうやってられない』その文字が刺さる」
客席の空気が、さらに静かになる。
これは、誰かの派手な勝利の場面ではない。
朝のスマホ。
そこに届く、弱りきった言葉。
もうやってられない。
我慢できない。
軽く返せる言葉ではない。
mcRCはその景色を、丁寧に置いていく。
駅前の雨。
コンビニの灯り。
濡れたフードで立っている二人。
笑っているけど、目は笑っていない顔。
誰かを助ける時、正解の言葉なんてすぐには出ない。
「頑張れ」だけでは届かない。
「大丈夫」だけでは浅い。
「気にするな」は、相手の痛みを小さくしてしまうことがある。
だからまず、横に立つ。
何があったかを無理に聞かない。
答えを急がない。
でも、一人にはしない。
その景色が、会場の中に沈んでいく。
客席の後方で、若い女性が下を向いた。
隣の友人が何も言わずに、そっと肩に触れた。
それだけだった。
でも、その触れ方がこの曲と同じだった。
解決しない。
でも横にいる。
mcRCは歌う。
「泣きそうな顔で『もう無理』
それを弱音とは呼ばない」
この一行で、Miwaはタオルを口元に押し当てた。
弱音じゃない。
そう言われたかった日が、たぶん誰にでもある。
「壊れる前に出せた声
それはちゃんと生きてる証明」
Saraの目元も揺れた。
言葉は、意味だけではなく、置き場所で効く。
「もう無理」という言葉は、責められることがある。
甘えだ。
逃げだ。
根性がない。
みんな我慢している。
そんな言葉でふさがれてきた声に、mcRCは別の名前をつける。
生きてる証明。
それは、強かった。
「やってられない それでいい
我慢できない それでいい」
会場のどこかで、誰かが小さく頷いた。
「吐き出したなら終わりじゃない
そこから一緒に越えりゃいい」
ここで、mcRCの声が少しだけ熱を帯びた。
一緒に越える。
上から押さない。
置いて走らない。
横にいる。
ESCORTからずっと続いている思想が、ここでまた戻ってくる。
答えなんてすぐ出ない。
でも横にいる。
それは、無力に見える。
でも、無力ではない。
人は、完全な答えより先に、そこにいてくれる誰かを必要とする時がある。
mcRCは、その役目を歌っている。
Pre-Hook。
「誰も拍手しない一言を
俺らは見逃さない」
会場が静かに揺れる。
誰も拍手しない一言。
「もう無理」
「助けて」
「つらい」
「行きたくない」
「我慢できない」
そんな言葉は、表彰されない。
でも、それが出せたこと自体が、壊れる前の大事な一歩だったりする。
「壊れる前に出した声を
弱さなんて呼ばせない」
このラインで、客席から小さな拍手が起きた。
曲の途中なのに。
一人が叩いた。
二人が続いた。
それが少しだけ広がった。
大きな拍手ではない。
でも、強い同意だった。
Hookが戻る。
今度は会場の声が少し返る。
「Small win, small win」
「でかくなくていい」
声は大きくない。
でも、確かに増えている。
wataのVerse。
彼は、さっきまでより低めに入った。
いつものように軽やかに韻を踏むのではなく、最初の言葉を一つずつ置いた。
「それは弱音じゃない
壊れる前に声を出せた証拠」
この曲の中で、wataは“言い換え”をしていた。
弱音。
愚痴。
逃げ。
甘え。
人を黙らせるために使われがちな言葉を、ひとつずつ取り上げて、置き直す。
「それは愚痴じゃない
飲み込みすぎた心の警報」
Saraが、無意識に頷く。
警報。
その言い換えは、かなり大きい。
愚痴と言われると、恥ずかしくなる。
警報と言われると、聞かなければならないものになる。
同じ言葉でも、名付け方で扱いが変わる。
これが、この曲の芯だった。
名前をつける。
価値が見えるように。
「それは逃げじゃない
自分を守るための判断」
Yuiは、このラインで少し息を吐いた。
逃げと判断。
現実の生活では、その境目が難しい。
でも、全部を逃げと呼んでしまうと、人は壊れる。
離れること。
休むこと。
断ること。
一度止まること。
それらは負けではなく、自分を守る判断の時がある。
wataは、そこを雑にしない。
「それは甘えじゃない
限界を知れた人間の感覚」
Ninaはタオルを握ったまま、少し笑った。
甘え。
その言葉で片づけられたものが、どれだけあるのだろう。
限界を知れた感覚。
そう言われるだけで、少し呼吸ができる。
wataの声は、ここから少しずつ熱を持つ。
「『もう無理』って言えたこと
『我慢できない』って吐けたこと
その一言を責めるな
そこまで耐えた時間を見ろ」
この四行で、会場の奥が揺れた。
そこまで耐えた時間。
誰も見ていない。
黙っていた時間。
笑って流した夜。
平気なふりで戻った朝。
胸の奥で削れていた日々。
表に出た一言だけを見て、「弱い」と言うのは簡単だ。
でも、その一言の前には長い時間がある。
wataはそこを見ろと言う。
韻ではなく、視点を差し出している。
「我慢 我慢で摩耗した感情
黙るたび増えていった反動
限界前に鳴らした反応
それは心を守るための行動」
ここでようやくwataらしい音の連鎖が強くなる。
我慢。
摩耗。
反動。
反応。
行動。
言葉がつながることで、気持ちが整理されていく。
ただ痛いだけだったものが、構造になる。
Ninaが小さく言った。
「これ、怒っていいって言ってるんじゃなくて、気づいていいって言ってるんだ」
Yuiが頷く。
「自分の警報を無視するなってことだね」
Kateが静かに言う。
「判断を、負けにしない」
Miwaは、その言葉を聞きながら涙を拭いた。
負けにしない。
それが、この曲だった。
wataは続ける。
「強いって何だ
全部飲むことか
優しいって何だ
自分を殺すことか」
会場の空気が、少し硬くなる。
これは、たくさんの人が勘違いしてきたことだった。
強い人は我慢できる。
優しい人は怒らない。
大人なら黙って飲み込む。
周りを乱さないのがいい人。
でも、それが続けば人は壊れる。
wataは言う。
「違うだろ
壊れてからじゃ遅いだろ」
その声は、静かな怒りを持っていた。
「離れることも選ぶことも
お前を守る力だろ」
客席の誰かが、胸を押さえた。
離れることも、選ぶことも。
それを勝ちと呼んでいいのか。
そう思っていた人に、wataは名前を渡す。
Small win。
逃げじゃない。
甘えじゃない。
判断だ。
その一歩に名前をつける。
Hookが戻る。
今度は客席の返しがさらに増えた。
「Small win, small win」
「今日を越えりゃいい」
泣きながら歌っている人がいた。
声にならない人もいた。
でも、口元は動いている。
EGUIのVerseへ。
照明が少しだけ落ち着く。
彼はマイクを握り直し、まっすぐ前を見た。
「誰にも褒められなかった日
それでもお前は帰ってきた」
この入りだけで、会場が静かになった。
誰にも褒められなかった日。
それは、多くの日のことだった。
人は、頑張った日に必ず褒められるわけではない。
仕事を終えても、当然だと思われる。
家事をしても、気づかれない。
学校に行っても、普通だと言われる。
心が折れかけても、誰にも見えない。
それでも帰ってきた。
それは、勝ちだ。
「悔しさ飲み込んだ夜も
ちゃんと今日を越えてきた」
Kateは、目を閉じかけて、すぐに開けた。
今は見ていたかった。
EGUIの声は、慰めではなかった。
認定だった。
お前は今日を越えた。
その事実だけを、まっすぐ置いている。
「俺も強いふりをした
平気な顔で黙っていた」
ここで、客席がわずかに反応した。
EGUIが、自分のことを言った。
彼は普段、あまり自分の弱さを長く語らない。
でも、この曲では言う。
「本当は胸の奥の方で
何度も折れそうになっていた」
その一行で、EGUIの言葉に体温が入った。
上からではない。
強い人が、弱い人へ言っているのではない。
自分も折れそうになったことがある人間が、同じ高さで言っている。
だから届く。
「だから軽く言う気はない
頑張れだけじゃ届かない」
会場の誰かが、深く頷いた。
頑張れ。
いい言葉の時もある。
でも、届かない時もある。
頑張っている人に、さらに頑張れと言うことが、刃になる時もある。
EGUIはそこを避けない。
「だけど見えてるものがある
お前がまだ立ってること」
その一言で、会場の空気が変わった。
まだ立ってる。
それだけ。
でも、それが勝ち。
派手な結果ではない。
誰かを感動させるような物語でもない。
ただ、まだ立っている。
それを見えていると言ってくれる。
「トラブルは嫌でいい
苦しいなら苦しいでいい
でもそこで声を出せたなら
それは負けじゃない」
今日のライブ全体にも重なる。
トラブルは嫌だった。
苦しい瞬間もあった。
不安になった人もいた。
でも、声を出した。
会場は止まらなかった。
それは負けではない。
「大きな夢じゃなくていい
派手な結果じゃなくていい
今日逃げ切らずに向き合った
その事実を俺は認める」
ここで、拍手が起きた。
今度は少し大きかった。
EGUIは拍手を待たず、続ける。
「誰も見てない勝ちを
なかったことにするな
小さすぎるその光が
明日の道を照らすから」
このラインで、照明が少しだけ客席の床を照らした。
足元。
今日、それぞれが歩いてきた足元。
明日もまた歩く場所。
小さすぎる光は、遠くを照らさない。
でも、足元なら照らせる。
それで十分な日がある。
「もう無理って言えたお前
我慢できないって言えたお前
それでもここにいるお前を
俺らはちゃんと見てる」
最後の一行で、会場のあちこちから涙が落ちた。
ちゃんと見てる。
Unseen Handsでも似た感覚があった。
見えている。
見逃さない。
なかったことにしない。
リバクラの思想は、ここでまた繋がった。
Bridge。
三人が少しずつ中央へ寄る。
mcRC。
「雨の朝も small win
震えた声も small win
話を聞くぜ 今行くぜ
一人にしない それが答え」
wata。
「弱音じゃない small win
逃げでもない small win
守った判断 捨てない感情
それが今日のお前の証明」
EGUI。
「誰も知らない small win
お前だけの small win
でも今日は俺らが言う
それは確かに勝ちだ」
会場は、静かに聞いていた。
ここは叫ぶ場所ではなかった。
受け取る場所だった。
そして三人の声が重なる。
「俺の朝も
お前の夜も
あいつの汗も
誰かの涙も」
客席の顔が、少しずつ変わる。
自分だけではない。
隣の人にも朝がある。
夜がある。
汗がある。
涙がある。
バラバラに見えて、同じ火が灯る。
小さい勝ちを持ち寄る。
ここでひとつになる。
Final Hook。
「Small win, small win
でかくなくていい」
三人。
客席が返す。
「Small win, small win
今日を越えりゃいい」
今度は、かなりの人数が声を出していた。
大声ではない。
でも、はっきり。
自分のために言っている声だった。
「Trouble on your way
でも消えない flame」
「誰も見てない勝ちを
俺らが見てる」
「Small win, small win
小さくてもいい」
「Small win, small win
まだ終わっちゃいない」
会場の声が少しずつ太くなる。
「転んだ場所が stage
傷も連れて raise
今日を越えたお前に
We say, small win」
このフレーズで、客席は大きく揺れた。
転んだ場所がstage。
失敗した場所。
泣いた場所。
立ち止まった場所。
恥をかいた場所。
そこも、歌になる。
そこも、舞台になる。
そこから上がれる。
傷も連れてraise。
傷を隠さなくていい。
なかったことにしなくていい。
連れて上がればいい。
三人の声が重なる。
「Small win, small win
声に出せばいい」
客席。
「Small win, small win
お前はここにいる」
リバ点呼の余韻が、ここで戻ってくる。
ここにいる。
それ自体が勝ちになる。
「トラブルなしじゃ始まらない
傷のない主役はいない
小さな勝ちを抱いて
We rise, small win」
最後のHookが終わる。
音が少しずつ落ちていく。
Outro。
三人の声が、静かに重なる。
「お前の頑張りを
俺らは見逃さない」
会場はもう、誰も茶化さない。
「昨日の自分を
少しでも超えたなら」
mcRCの声が少し震えていた。
「誰も何も言わなくても
俺がお前に拍手を贈ろう」
wataが、マイクを持つ手を少し下げる。
EGUIが、最後の言葉をまっすぐ置く。
「お前の勝ちだ」
三人。
「That’s your small win」
音が消えた。
照明が、すぐには落ちない。
ステージも、客席も、柔らかい光の中に残った。
誰もすぐに叫ばなかった。
拍手も、すぐには来なかった。
それぞれが、自分の中のSmall winを抱えていた。
今日来たこと。
声を出したこと。
泣けたこと。
笑えたこと。
誰かの話を聞けたこと。
自分の限界に気づいたこと。
それを負けではなく、勝ちと呼んでいいのかもしれないと思えたこと。
最初に拍手したのは、後方の誰かだった。
ぱち。
次に、前列の誰か。
ぱち。
それから、中央。
ぱち、ぱち。
やがて、会場全体に広がる。
拍手が、大きくなる。
歓声ではなく、拍手だった。
一人ひとりが、自分の今日に拍手を送るような音だった。
そして、少しずつ声が混ざる。
「ありがとう」
「今日、勝った」
「来てよかった」
「Small win」
「明日も行ける」
「今日を越えた」
wataは、下を向いていた。
笑っている。
でも、顔を上げるまで少し時間がかかった。
EGUIは、客席を見たまま何も言わなかった。
言葉を足す必要がなかった。
mcRCは、ようやくマイクを上げた。
「ありがとう」
声が少し掠れていた。
「ほんまに、ありがとう」
会場から拍手が返る。
mcRCは言う。
「今日のライブは、これで終わりです」
今度の「えー」は、小さかった。
でも、温かかった。
終わりを受け入れたうえで、惜しんでいる声だった。
wataが言う。
「帰り道、気をつけて」
EGUIが続ける。
「水飲め」
客席が笑う。
mcRCも笑う。
「飯も食え」
wataがすぐ乗る。
「ラーメンでも、肉でも、ささみでも」
客席が騒ぐ。
「ささみは嫌!」
「ラーメン!」
「焼肉!」
EGUIが真顔で言う。
「食えればいい」
wataが笑う。
「まとめ方が生活」
会場の笑いが、涙を少しだけ乾かした。
mcRCが最後に言う。
「また会いましょう」
少し間。
「昨日より今日」
客席が返す。
「昨日より今日!」
「小さくても」
「勝ち!」
三人が笑った。
「ありがとう!」
「Reverse Crownでした!」
三人が深く頭を下げる。
長く。
本当に長く。
その背中に、今日のすべてが乗っていた。
逆さまの王冠。
横に来いという距離。
一歩目の青信号。
走った熱。
撃った言葉。
見せた夜。
刺された笑い。
席の責任。
見えない手。
トラブル。
THAT’S LIVE。
BBQ。
READY。
DESTINATION。
リバ点呼。
そして、Small win。
照明がゆっくり落ちていく。
最後に逆さまのクラウンだけが淡く光った。
それは、上から与えられる勝利の王冠ではなかった。
今日を越えた人が、自分の小さな勝ちにそっと置くための印だった。
完全に暗転する。
それでも拍手は続いた。
Kateは、拍手をしながら思った。
今日も勝ったな。
Saraは、目元を押さえながら、心の中でメモを閉じた。
小さい勝ちも価値。
Ninaは、笑いながら泣いていた。
今日、ちゃんと笑えた。
Yuiは、息を吐いた。
明日も現実はある。
でも、今日を勝ちにして帰れる。
Miwaは、ステージが暗くなったあとも、しばらく前を見ていた。
かわんない。
本当に、かわんない。
心の中だけで、そっと呼ぶ。
部長。
すぐに、もう一つの名前を重ねる。
mcRC。
その二つが、今夜だけは喧嘩しなかった。
どちらも、彼女にとって本当だった。
そして、会場のどこかで、誰かが小さく言った。
「今日、勝ったな」
隣の誰かが答える。
「うん」
「小さいけど」
「それがいいんだろ」
その声は、ステージには届かなかったかもしれない。
でも、この夜には届いていた。
帰り道の一歩目にも。
明日の朝にも。
きっと、少しだけ残る。
mcRC「この小説の歌は実際に聴けるから、聴きながら読んでみてくれよな」
聴く場合はこちら:
コピペしてブラウザに貼り付けて、、、。とぶぞ。
small win
https://youtu.be/SwQWUrYHf-E?si=gROitAythWZkGliJ
リバ点呼
https://youtu.be/gxHNR1Utnso?si=GxhyaBuPoYXKMjt4
THAT’S LIVE
https://youtu.be/ujqsLz2TWQA?si=MmEQcLI5hnIdcJpq
green light
https://youtu.be/YR4ECQMRI9E?si=gXQ5EDmQWGXRzpYt
ESCORT
https://youtu.be/U-FlEKJfJ9U?si=m_t-jL5suG1I4umI
Reverse Crown/リバクラ
https://youtu.be/FI0rcVj1WUA?si=YTlhx_1Sq_TaV9Qe
DESTINATION
https://youtu.be/JTYqNX2aSEM?si=XiPvuQManbc7qZ__
UNSEEN HANDS
https://youtu.be/-7JI-GA7Jkg?si=1bDm7SNAOzQLAYts
THAT SEAT
https://youtu.be/RroRseSoJ_8?si=hIIpjx5z-IxxfnTJ
BBQ
https://youtu.be/EtMf8rkKn_0?si=fOf9lmgp2QZR2MKR
HOMEBASE
https://youtu.be/ARSsZ0r8CRc?si=2e8PbVXltjdbNr2Q
feel
https://youtu.be/PAmI_q-HbFU?si=FZuLbe2ZiBzmms51
keep moving
https://youtu.be/QWW73v7L1D0?si=7YEjlRgRRuQhve80
CALL ME OUT
https://youtu.be/Y161l0pX_wA?si=GZjh8_JyrDkMdkLv
READY
https://youtu.be/P2sNZMSjjdU?si=GsE110DD92sYEhr4
SHOWTIME!
https://youtu.be/RrqmZjsded4?si=kZt8W-O5sWGhMJaN
ATTACK
https://youtu.be/tRSOHKXvij8?si=xqiYugwdtS0mTWMu
SAY IT TO ME
https://youtu.be/AdAhmiHwxfM?si=BMBopJs6y9S6hLWM
ORIGIN
https://youtu.be/v7r3_l4mYQM?si=l1vPLtDcNWjW9O6H
nofake
https://youtu.be/oV7c-3TJMgM?si=WDW85lU6iqQsmqZy
決めろ!はコチラ
https://youtu.be/P_2d3hcx3Uw?si=hvvTW3RMB2adTtwN
RUN IT
https://youtu.be/ptZZJdr_2hc?si=1Fw9cRYCdJAd1so4
ORDER
https://youtu.be/AdAhmiHwxfM?si=BMBopJs6y9S6hLWM




