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ラップ付き小説 ReversCrown 元気ないやつこっちおいで  作者: egubi
単独ライブ編

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33/186

2-2-3 HOMEBASE

mcRC「この小説の歌は実際に聴けるから、聴きながら読んでみてくれよな」

聴く場合はこちら:

コピペしてブラウザに貼り付けて、、、。とぶぞ。


BBQ

https://youtu.be/EtMf8rkKn_0?si=fOf9lmgp2QZR2MKR


HOMEBASE

https://youtu.be/ARSsZ0r8CRc?si=2e8PbVXltjdbNr2Q


feel

https://youtu.be/PAmI_q-HbFU?si=FZuLbe2ZiBzmms51


keep moving

https://youtu.be/QWW73v7L1D0?si=7YEjlRgRRuQhve80


CALL ME OUT

https://youtu.be/Y161l0pX_wA?si=GZjh8_JyrDkMdkLv


READY

https://youtu.be/P2sNZMSjjdU?si=GsE110DD92sYEhr4


SHOWTIME!

https://youtu.be/RrqmZjsded4?si=kZt8W-O5sWGhMJaN


ATTACK

https://youtu.be/tRSOHKXvij8?si=xqiYugwdtS0mTWMu


SAY IT TO ME

https://youtu.be/AdAhmiHwxfM?si=BMBopJs6y9S6hLWM


ORIGIN

https://youtu.be/v7r3_l4mYQM?si=l1vPLtDcNWjW9O6H


nofake

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決めろ!はコチラ

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RUN IT

https://youtu.be/ptZZJdr_2hc?si=1Fw9cRYCdJAd1so4


ORDER

https://youtu.be/AdAhmiHwxfM?si=BMBopJs6y9S6hLWM


HOMEBASEは、もうできていた。


だからこそ、三人はいつもより静かだった。


リバクラボの机の上には、歌詞カードが三枚置かれている。

同じ歌詞。

同じタイトル。

同じ順番。


けれど、その紙の重さは、三人それぞれで少し違っていた。


wataは椅子に浅く腰かけ、黒髪を後ろでくくり直していた。

もう十分まとまっているのに、何度も指で結び目を触る。落ち着かない時の癖だった。


EGUIは水を飲んでいた。

いつも通り短髪で、いつも通り姿勢がいい。

ただ、歌詞カードを見るたびに、ほんの少しだけ目が細くなる。


mcRCは、歌詞カードの一番上を見ていた。


HOME BASE

この基地は 誰が作った


その一行目だけで、もう逃げ道がなかった。


wataが小さく息を吐く。


「……これ、今日出すんやな」


mcRCは頷いた。


「出す」


EGUIも短く言う。


「出す」


wataは歌詞カードを持ち上げ、もう一度最初から目で追った。


「親ってやつは異常だ、か」


mcRCは静かに答えた。


「そこ、強いよな」


「強い。てか、言い切ってる」


「でも、そう思った」


EGUIが水を置く。


「普通じゃできない」


wataは、少しだけ頷いた。


家。

電気。

水。

ガス。

飯。

洗濯。

家賃。

ローン。

生活用品。

時間。

体力。

感情。


それらが自然に湧いていたわけではない。


誰かが削れていた。

誰かが我慢していた。

誰かが、明日も普通の顔で生活を回すために、今日の自分を少しずつ燃やしていた。


それをこの曲は、きれいな言葉に逃がさない。


愛。

感謝。

家族。


そういう言葉だけで包まない。


削れてできた資産。

渡されてきた資源。


mcRCは、そこにこだわった。


wataもEGUIも、最初に読んだ時は少し黙った。


でも、黙った理由は違和感ではなかった。


「これは言わなあかんやつや」と思ったからだった。


待機コメントは、すでに流れていた。


HOMEBASE待機

今日家族で見てます

父さんと見てます

娘に呼ばれました

母が「飯食え」って言ってます

CALL ME OUTから逃げてません

親の前で泣いたらどうしよう

タイトルだけで怖い

EGUIさん今日も飯チェックお願いします


wataがコメントを見て、少しだけ笑った。


「母が飯食えって言ってます」


EGUIが即答する。


「食え」


wataが顔を上げる。


「まだ始まってない」


「大事やろ」


コメント欄はまだ見えていないのに、wataはもう反応が想像できて笑った。


でも、すぐに笑いは引いた。


今日の曲は、飯の話でもある。

でも、いつもの飯ギャグだけでは終われない。


飯があること。

食卓があること。

誰かがそれを出していたこと。


それは、HOMEBASEの芯に近い。


mcRCは、配信開始ボタンに指を置いた。


「最初、短く言う」


wataが頷く。


「説明しすぎない」


EGUIが続ける。


「歌で分からせる」


「分からせるって言うな」


wataが苦笑する。


EGUIは表情を変えない。


「でも、そうやろ」


mcRCは少しだけ笑った。


「まあ、そうやな」


そして、配信が始まった。


画面が切り替わる。


三人が映った瞬間、コメント欄が一気に流れた。


きた!

こんばんは!

HOMEBASE!

新曲きた!

家族で見てます

父、横にいます

母が音量上げました

娘に見ろって言われました

息子が無言で座った

もう怖い


wataが、いつものように軽く手を振る。


「こんばんは」


EGUIも短く。


「こんばんは」


mcRCは、少し間を置いてから言った。


「こんばんは。Reverse Crownです」


その声だけで、コメントの流れが少し落ち着いた。


mcRCは続けた。


「今日は、新曲を出します」


「タイトルは、HOMEBASE」


コメント欄が一瞬で速くなる。


やっぱり

HOMEBASE

帰る場所?

家族曲?

親の前で聴いていい?

もう父が黙った

母が正座した

待って怖い

でも聴く


mcRCは、画面の向こうを見ながら言葉を選んだ。


「この曲は、家族をきれいに飾る曲ではありません」


コメント欄が少し止まる。


「親って言葉で、全部を許す曲でもない」


EGUIが静かに頷く。


「子どもって言葉で、全部逃げる曲でもない」


wataが続ける。


「家庭によって、いろいろあると思う」


「家が安心だった人もいる」


「そうじゃなかった人もいる」


「親と同じ曲を聴ける人もいる」


「聴けない人もいる」


「でも、コメントの中にあった」


「父さんに紹介されました」


「娘に見せられました」


「家族で見てます」


「それが羨ましいです」


wataは少しだけ息を吸った。


「その横に、“親に感謝しろって言われるのは無理”って声もあった」


mcRCが頷く。


「だから、作りました」


「これは、説教ではありません」


「でも、なかったことにもしたくない」


「自分たちが当たり前に使っていた場所が、誰かの資源でできていたこと」


「今まで見えなかったなら、今ここで気づけること」


「気づいたなら、やれることがあること」


EGUIがマイクに近づいた。


「聴いてください」


mcRCが言う。


「HOMEBASE」


音が入った。


派手な始まりではなかった。


低く、温かいベース。

乾いたキック。

少しだけ湿り気のあるピアノ。

明るくはない。

けれど、暗く沈める音でもない。


家の灯りのような音だった。


三人の声が重なる。


HOME BASE

この基地は 誰が作った


コメント欄が、ふっと止まった。


誰が作った。


いきなり問われる。


家ではなく、基地。

ただ寝る場所ではなく、守られていた場所。


電気も

水も

ガスも

飯も


勝手に湧いたわけじゃない


ここで、コメントが少しずつ流れ始める。


もう刺さる

電気水ガス飯

そこから来るのか

生活費……

父が小さく頷いた

母が笑ってない

これ親の前で聴くのきつい


そして、あの言葉が来る。


親ってやつは

異常だ

普通じゃできない


wataは、自分のパートではないのに、横で一瞬だけ眉を動かした。


言い切った。


親は偉い、ではない。

親は正しい、でもない。

親は異常。


普通じゃできないほど、子どもに資源を注ぐ存在。


コメント欄の速度が落ちる。


異常だ、で泣いた

親が横で笑ったけど泣いてる

普通じゃできないよな

子どもの頃わからんかった

これ父に聴かせてるのしんどい


HOOKに入る。


三人の声が厚くなる。


HOME BASE

誰が作った この基地を

HOME BASE

誰が守った この灯りを


コメント欄が一気に動いた。


この灯りを、やばい

誰が守った

うちの電気代思い出した

当たり前にすんな、刺さる

崩すだけで終わんな、強い

今ここで気づけ

親子で無言になった


mcRCは画面を見ない。


ここで見たら、歌えなくなる。


自分のVerseに入る。


玄関の靴。

揃わないままの生活。

洗濯かごの山。

テーブルの傷。

湯呑みの輪。

冷蔵庫の音。


家というものが、抽象ではなく景色になる。


電気が点いてた

それだけのこと

でもそれは誰かの

残業の跡


コメントが一瞬で止まった。


そして、遅れて流れる。


残業の跡……

これはきつい

父さん……

電気のついた家ってそういうことか

ただいまって言える明かりの裏に残業あるの無理

もう泣いた


mcRCの声は揺れなかった。


揺れないように、景色だけを見る。


俺はそれを

普通だと思った

家ってそういうもんだと

勝手に思った


違うだろ


その「違うだろ」で、コメント欄がざわつく。


うわ

怒られた

でも怒鳴られてない

違うだろ、が痛い

自分に言われた感じ

思春期の俺、聞け


Verseは、さらに生活費へ落ちていく。


家賃。

ローン。

電気代。

水道。

ガス。

食材。

学用品。

部屋の温度。


ひとつひとつが、誰かの計算で成り立っていたこと。


誰かが計算して

誰かが我慢して

誰かが明日の顔して

今日を回してた


コメント欄には、親世代の声が混ざり始める。


明日の顔して今日を回してた、で死んだ

それ親すぎる

子どもの前では普通の顔するんだよ

仕事で疲れても飯作るんだよ

親側に刺さる曲だった


mcRCは、母さんの小言と父さんの沈黙へ進む。


母さんの小言は

ただの noise じゃない

生活が崩れないように

打ってた nail


父さんの沈黙は

無関心じゃない

疲れすぎた人間の

最後の wall


wataは横で、ほんの少しだけ目を伏せた。


このラインは、制作中から強かった。


小言を、ただのうるさい声にしない。

沈黙を、ただの無関心にしない。


そこには、生活を止めないための必死さがある。


コメント欄。


nailが効く

母の小言、釘だったのか

父の沈黙……

無関心だと思ってた

疲れすぎた人間のwall、父だ

これ親にも子にも刺さる


mcRCのVerseが終わるころ、コメント欄には、もう茶化しがほとんどなかった。


俺が悩めた夜は俺だけの夜じゃない、やばい

悩ませてもらってた、って表現きつい

悩める環境も誰かが作ってた

これ気づけなかった

うちの子に聴かせたいけど押しつけたくない


Pre Hookに入る。


ありがとうだけじゃ

軽すぎる

ごめんだけでも

足りやしない


コメント欄が、また少し動く。


ありがとうだけじゃ軽すぎる

これほんとそう

ありがとう言えば済む話じゃない

ごめんでも足りない

行動で返すしかないやつ


HOOKが戻る。


今度は、最初より重い。


同じ言葉なのに、Verseを通った後では意味が違う。


HOME BASE

削れてできた資産だ

HOME BASE

渡されてきた資源だ


この「資産」と「資源」に、コメント欄が反応する。


資産

資源

愛って言葉に逃げてないのがいい

家族を資源で見るの逆にリアル

誰かが削れてるから資源なんだよな

これリバクラだわ


次はwata。


音が少し軽くなる。


でも、内容は軽くない。


my room, my rule

手に入れた自由

白い wall

安い lamp

気分は brand new


コメント欄が少し呼吸する。


wataきた

一人暮らし勢のターン

my room, my rule いい

ここ少し笑えるけど怖い


wataのVerseは、自由の顔をした空白から始まる。


誰にも言われない。

皿はそのまま。

飯を食ったかも聞かれない。


最高のはずだった。


でも、心だけmute。

おしゃれなroomなのに、魂out of tune。


wataらしい言葉遊びに、コメントが少し戻る。


魂out of tune好き

おしゃれな部屋なのに分かる

一人暮らし最初の万能感からの落差

皿そのまま刺さる

飯食ったか聞かれないの自由なのに寂しい


そして、生活の現実が来る。


家賃 光熱 食材 洗剤

全部が monthly に

削ってく life


wataのフロウが少し畳みかける。


ゴミ出し 掃除

洗濯 買い出し

生活ってやつは

地味にしつこい


コメント欄。


生活って地味にしつこいw

ここ笑ったけど本当

洗剤まで来るのリアル

monthlyに削ってくlife

一人暮らし勢死亡

家族というシステム、って言い方すごい


wataは、音に乗りながら、親のありがたみを直接言わない。


請求書で見せる。

掃除で見せる。

冷蔵庫の空で見せる。

小言が消えた後のリズムのなさで見せる。


noise だと思った

母さんの声

pressure だと思った

父さんの目


消えて初めて

あれが rhythm

俺を崩さないための

daily system


コメント欄。


daily systemやばい

親の声がリズムだった

消えて初めて分かるやつ

wataの韻で生活が刺さる

これ歌詞見たい

音源化早く


wataのVerseは、途中でただの懐かしさには行かない。


戻れない。

子どもの顔にも戻れない。

大人になったからこそ、感謝だけでは済ませられない。


それでも

崩すだけは違う

もらった基地なら

今度は直す番だ


コメント欄。


直す番

崩すだけは違う

これ親子喧嘩後に刺さる

綺麗に戻れないけど直す

大人側の責任も入ってるのいい


Bridge。


No perfect home

No perfect love

濁ったままで

still enough


ここで、少し救われる空気が出る。


完璧な家を求めていない。

完璧な愛を歌っていない。


濁ったままでも、それでも守る価値がある。


コメント欄。


No perfect home

ここで救われた

家族しんどい勢にも届く

綺麗じゃないって言ってくれるの助かる

still enough 泣く


Hook 2では、自由だけでは満たせないこと。

静けさだけでは戻れないこと。

誰かの小言が、まだ胸に残ることが歌われる。


そして、家族という言葉が出る。


近いからこそ

傷もつけた family

言えないありがとう

まだ喉で詰まってる


コメント欄。


喉で詰まってる

言えないありがとう、ある

近いから傷つけるんだよな

親の前で聴くの無理

でも一緒に聴けてよかった


EGUIのVerseに入る。


音が一段落ちる。


EGUIの声が、低く、真っ直ぐ入る。


家族って言葉で

全部きれいにするな


親って言葉で

全部許すな


子どもって言葉で

全部逃げるな


コメント欄が止まる。


EGUIは逃がさない。


家族を美化しない。

親を神格化しない。

子どもを無罪にもしない。


でも、切ればいいだけの話にもさせない。


でも

全部切ればいいって話でもない


ここで、コメント欄にいくつか長文が流れ始める。


ここありがたい

家族しんどい勢にも逃げ道残してる

許せって言われないの助かる

でも切ればいいだけでもない、わかる

EGUIのVerse、強い


そして、核心。


親は異常だ

普通じゃできない


金も

時間も

体も

感情も


自分の人生を削って

子どもの今日に注ぎ込む


コメント欄の親世代が、ここで崩れる。


これは親に刺さる

異常だって言われて初めて報われた気がした

普通じゃできないよ

でもやるんだよ

子どもの今日に注ぎ込む、で泣いた


だが、EGUIはそこで終わらない。


でもな


子どもも異常だ


wataは、横で小さく頷いた。


ここがHOMEBASEのもう一つの核だった。


親だけが与えたのではない。


子どもも、ただそこにいるだけで、親に明日を渡していた。


何も返せない

稼げない

守れない

支えられない


それでも

ただそこにいるだけで

親の明日になってた


コメント欄は、もう速くない。


一つ一つが、重い。


子どもも異常だ、で終わった

親側として泣いた

ただそこにいるだけで、って言ってくれてありがとう

子どもが明日だった

親にも子にも刺すのやめて

でもこれ必要


EGUIの言葉は、さらに真っ直ぐになる。


だから簡単に美化するな

簡単に捨てるな

簡単に壊すな


今まで気づかなかったなら

今気づけ


ここで、最初のHOOKの言葉が戻ってくる。


今ここで気づけ。


怒鳴ってはいない。

でも、逃がしてもいない。


電話しろとは言わない

帰れとも言わない

感謝を今すぐ

綺麗に言えとも言わない


でも

崩すな


雑にするな


コメント欄。


雑にするな

これリバクラの芯だ

人を雑に扱うな、ここにも来た

家族にもそれなんだ

電話しろって言わないのがいい

帰れって言わないのに逃がさない


そして、飯。


会えるなら会え

言えるなら言え

言えないなら

同じテーブルに座れ


飯を食え


コメント欄が、泣きながら少し笑う。


EGUI飯きた

泣いてたのに飯で笑った

でも一番刺さる

同じテーブルに座れ

飯を食え、強すぎる

母が「そうだよ」って言った


EGUIは、飯をギャグにしない。


味噌汁でもいい。

冷えた惣菜でもいい。

コンビニ弁当でもいい。


同じ場所で食え。


勝った話じゃなくていい。

夢の話じゃなくていい。

今日しんどかった、それだけでもいい。


コメント欄。


今日しんどかった、それだけでもいい

これ言えたらいいな

何話していいかわからない親子に刺さる

同じ場所で食え

食卓の曲だった

EGUIが全部持ってった


Verse 3が終わり、3MC Summaryに入る。


三人がそれぞれ、自分の景色を短く回収していく。


mcRCが、部屋と灯りと小言を。

wataが、自由な部屋の空白を。

EGUIが、親と子どもの異常さを。


そして三人で言う。


HOME BASE

親が削れて作った基地

HOME BASE

俺らが気づかず使った日々


コメント欄。


まとめでまた刺す

気づかず使った日々

もう謝りたい

でもありがとうだけじゃ軽いんだよな

今度は守る番


Final Hook。


三人の声は、最初より強い。


同じ言葉が戻ってくる。

でも、曲の中を通ったあとでは、意味がまるで違う。


HOME BASE

誰が作った この基地を

HOME BASE

誰が守った この灯りを


コメント欄はもう、短い言葉ばかりになる。


泣いた

無理

ありがとう

父さんごめん

母さんありがとう

皿洗う

電話する

今日は一緒に飯食う


Final Hookの後半。


父さんも

母さんも

息子も

娘も


役割を脱いで

同じ飯を食おう

それだけで

ほどける夜がある


wataは、この部分を歌いながら、少しだけ目を伏せた。


父さん。

母さん。

息子。

娘。


役割を脱ぐ。


それは、簡単ではない。


親は親でいようとしてしまう。

子どもは子どもでいようとしてしまう。

強がる。

意地を張る。

謝れない。

ありがとうも言えない。


でも、同じ飯を食うだけで、ほどける夜がある。


それは、綺麗ごとではなく、生活の知恵みたいなものだった。


Outroに入る。


音が静かになる。


三人の声が、ほとんど語りのように重なる。


ただいま

言えない日もある


おかえり

返ってこない日もある


ありがとう

まだ喉で詰まる


ごめん

まだ目を見れない


コメント欄が止まった。


最後の言葉。


でも今日は

同じテーブルに座ろう


一緒に飯食べよう


それだけで

ほどけるものがある


音が消えた。


三人は、すぐには喋らなかった。


コメント欄も、一瞬止まっていた。


画面の向こうに、何千人もいるはずなのに、部屋には沈黙が落ちた。


それから、コメントが流れ始めた。


今、父と目が合った

母が泣いてる

息子が皿下げた

娘が無言で隣に座った

親の前で泣いた

今日一緒に飯食う

電話はまだ無理だけど、LINEする

うちは無理だけど、自分のHOMEBASE作る

家族を美化しないでくれてありがとう

親側にも子側にも届いた

飯食えがこんなに重い日ある?


wataは、しばらく画面を見ていた。


いつものようにすぐ茶化さない。


EGUIも黙っていた。


mcRCは、ようやく小さく息を吐いた。


「……ありがとう」


それだけ言った。


コメント欄は止まらない。


こっちがありがとう

これは音源化して

歌詞読みたい

親に送りたい

でも押しつけたくない

自分で聴く

HOMEBASEやばい

リバクラ、こういう曲もできるのか


wataが、少しだけ笑った。


「歌詞、出します」


EGUIが頷く。


「出せ」


mcRCも頷いた。


「ちゃんと出します」


「この曲は、歌詞も読んでほしい」


「音源も、準備します」


wataが少し肩を回す。


「また申請作業が増えるな」


「増える」


EGUIが言う。


「やれ」


wataが笑った。


「余韻を事務作業で殴るな」


mcRCも少し笑った。


でも、それも現実だった。


曲は配信で歌って終わりではない。


音源にする。

動画にする。

歌詞を整える。

表記を揃える。

配信申請をする。

聴いてもらう。

読んでもらう。

ライブで返ってくるまで、曲を育てる。


HOMEBASEは、今ここで生まれた。

でも、ここからさらに届かせなければならない。


mcRCは最後に言った。


「今日は、ここまでにします」


コメント欄。


ありがとう

飯食って

今日は早く寝て

親にLINEしてくる

皿洗ってくる

家族で飯食ってくる

HOMEBASEありがとう


EGUIがマイクに近づいた。


「飯食え」


コメント欄が、泣き笑いに変わる。


はい

食います

EGUIさんありがとう

今日の飯は重い

飯食えが優しい

もう飯って言葉で泣く


wataが笑いながら言った。


「飯食えで締まる曲、なかなかないぞ」


mcRCも笑った。


「でも、HOMEBASEやからな」


配信が終わった。


画面が暗くなる。


ライトだけが残る。


しばらく、三人は何も言わなかった。


その沈黙を破ったのは、wataだった。


「……飯行きたい」


あまりにも正直な声だった。


mcRCは、思わず笑った。


「早いな」


「いや、あれ歌ったあとやぞ」


wataは天井を見た。


「同じテーブルに座ろう、一緒に飯食べよう、って言ったやん」


EGUIが即答する。


「外食禁止」


wataは固まった。


「……は?」


「READY中」


「いやいやいや」


EGUIはコンビニ袋を机の上に置いた。


中から出てきたのは、ささみ。

ゆで卵。

野菜スティック。

無糖ヨーグルト。

プロテイン。


wataの顔から光が消えた。


「HOMEBASE歌ったあとに、これ?」


EGUIは頷く。


「体を作る」


「いや、違うやん」


「何が」


「今の流れは、ラーメンやろ」


「違う」


「チャーシューやろ」


「違う」


「餃子もつけて」


「禁止」


wataは机に突っ伏した。


「HOMEBASEの余韻でささみ食わせるな」


mcRCは笑いながらも、袋の中を見た。


「まあ、READY中やからな」


wataが顔だけ上げる。


「READY、便利に俺らを縛りすぎやろ」


EGUIが言う。


「自分で歌った」


「自分たちの歌詞に殴られる期間、長すぎる」


mcRCは、ささみを一つ取った。


「でもさ」


wataが見る。


「なに」


「飯が出てくるって、やっぱすごかったんやな」


その一言で、少しだけ空気が変わった。


wataも、EGUIも、ささみを見る。


mcRCは続けた。


「今、俺ら自分で考えてるやん」


「何を食うか」


「何を食わないか」


「何時に寝るか」


「明日動けるか」


「体を作れるか」


「昔は、かなりの部分を誰かが背負ってたんやなって」


wataは、ささみのパックを手に取った。


「……親、異常やな」


EGUIが頷く。


「異常」


wataはパックを見つめる。


「毎日飯出すって、普通におかしい」


mcRCが頷く。


「おかしい」


「自分の仕事もあって、金も考えて、栄養も考えて、買い物して、作って、片付けて」


EGUIが言う。


「それを普通の顔でやる」


wataは、ささみを開けながら小さく笑った。


「すげえ曲歌ったあとに、すげえ現実くるやん」


「HOMEBASEって、歌って終わりじゃないな」


mcRCが言うと、EGUIが短く返した。


「生活やからな」


wataは、ささみを一口食べた。


数秒、黙る。


「……ささみはもう勘弁してくれ」


mcRCは吹き出した。


EGUIが真顔で言う。


「食え」


「食うけど!」


wataは、水で流し込みながら言った。


「俺は今、焼肉屋の前で泣いてる心を、ささみで黙らせてる」


mcRCが笑う。


「表現が重い」


「重いよ! こっちはHOMEBASEのあとやぞ!」


EGUIがゆで卵を剥きながら言う。


「肉体もBASE」


wataが箸を止めた。


「うまいこと言ったみたいな顔すんな」


EGUIは真顔だった。


「言ってない」


「それが腹立つ」


三人は、同じテーブルで、ささみを食べた。


ラーメンではない。

焼肉でもない。

チャーシューでもない。

にんにくでもない。


でも、同じテーブルではあった。


wataは不満そうにささみを噛みながら、ぽつりと言った。


「……親の飯、ありがたかったな」


mcRCは頷いた。


「うん」


EGUIも短く。


「ありがたい」


少しだけ静かになる。


そして、wataがまた顔を上げた。


「でも、ささみは勘弁してくれ」


mcRCが笑う。


「そこ戻るんか」


「戻る。俺は人間やから」


EGUIが言う。


「人間なら食え」


「人間だから焼きたいんや!」


「何を」


「肉を!」


mcRCは笑いながら、ささみの袋を片付けた。


HOMEBASEの灯りは、まだ消えていなかった。


でも、その灯りの下で、三人はもう次の欲望を見ていた。


帰る場所。

飯。

体作り。

我慢。

ささみ。

肉。


wataの目が、少しだけ危険な光を帯びていた。


まだ誰も曲名にはしない。


でも、その夜、リバクラボの空気に、ほんの少しだけ煙とタレの匂いが混ざった気がした。

mcRC「この小説の歌は実際に聴けるから、聴きながら読んでみてくれよな」

聴く場合はこちら:

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https://youtu.be/ptZZJdr_2hc?si=1Fw9cRYCdJAd1so4


ORDER

https://youtu.be/AdAhmiHwxfM?si=BMBopJs6y9S6hLWM

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