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ラップ付き小説 ReversCrown 元気ないやつこっちおいで  作者: egubi
sound session編

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158/186

5-3-5 結果発表


Reverse Crownの三曲目が終わったあと、会場にはまだ拍手が残っていた。


笑い声も混じっている。

悲鳴みたいな共感も混じっている。

「休み返して」と叫ぶ声も、どこかから聞こえた。


でも、それはもう、曲の途中の反応ではなかった。


三曲を受け取ったあとの拍手だった。


mcRCは、マイクを下げたまま息を吐いた。


一曲目で、夏の入口を開いた。

二曲目で、街と海と音の波を作った。

三曲目で、休みに置いていかれる大人たちを笑わせた。


三曲とも夏だった。


でも、同じ夏ではなかった。


wataが汗を拭いながら、小さく言う。


「……出し切ったな」


EGUIが頷く。


「出した」


BEEFはターンテーブルの前で、何も言わなかった。


ただ、フェーダーから手を離していた。


それだけで、終わったのだと分かった。


ステージ袖では、SUNNY DRIVEの三人が拍手していた。


顔には悔しさがある。


けれど、否定はなかった。


自分たちの夏も、確かに強かった。


明るく、広く、分かりやすく、会場を真夏へ連れていった。


だからこそ、分かる。


Reverse Crownは、別の夏を持ってきた。


司会者がステージ中央へ戻ってくる。


「SUNNY DRIVE、Reverse Crown、両チームにもう一度大きな拍手を!」


会場が応える。


拍手が二方向に向いた。


SUNNY DRIVEへ。

Reverse Crownへ。


どちらも弱くない。


どちらも、本戦に残ったチームの音だった。


司会者は、マイクを持ち直す。


「それでは、審査結果の発表に入ります」


会場の温度が、少し変わる。


笑っていた人も、姿勢を直す。

タオルを握っていた人も、手を止める。

腕を組んでいたBEEF勢も、ステージへ目を向ける。


司会者が続けた。


「まず、採点について改めて説明します。この大会の採点は、絶対評価ではありません」


スクリーンに、評価枠が映る。


審査員評価 5点

観客評価 5点

変化・チャレンジ評価 2点


合計十二点。


「本戦に残っている時点で、どのチームも非常に高いレベルにあります。ですので、“良かったから満点”“少し劣ったから低得点”という単純な評価ではありません」


会場が静かになる。


前回も聞いた説明だ。


でも、今回はさらに重く聞こえた。


司会者は言葉を続ける。


「審査員評価では、技術完成度、構成力、表現力、独自性、ステージ支配力を見ます」


スクリーンに細目が流れる。


技術完成度

構成力

表現力

独自性

ステージ支配力


「観客評価では、演奏中の拍手、歓声、フック返し、会場の熱、初見客の巻き込み、一体感を見ます」


次の表示。


拍手

歓声

フック返し

会場の熱

初見客の巻き込み

演奏中の一体感


「そして、変化・チャレンジ評価では、前回と違う切り口があるか。同じ型に安住していないか。その日の相手や会場に合わせて、構成や見せ方を変えられているかを見ます」


客席の一部が、小さく反応する。


「そこか」


「今日の勝負、そこ大事だな」


「三曲構成、見られるやつ」


「曲単体じゃないんだ」


司会者は、両チームを順に見た。


「今回、両チームとも“夏”をテーマにしたステージでした」


SUNNY DRIVEのファンが、少し胸を張る。


SUNNY DRIVEは、確かに夏を作った。


明るく、跳ねて、会場を動かした。


司会者の声が、そのままSUNNY DRIVEへ向く。


「SUNNY DRIVEは、観客評価で非常に強い反応を得ました。夏を盛り上げる力、会場を明るく引き上げる力、クラップやフックへの反応。特に演奏中の熱量は、非常に高く評価されています」


SUNNY DRIVE側から、大きな拍手が起きる。


「SUNNY DRIVE最高だった!」


「夏だった!」


「めっちゃ上がった!」


「普通に強かった!」


Reverse Crownの三人も、拍手した。


wataが小さく言う。


「そこはほんまに強い」


EGUIも頷く。


「会場、上げてた」


mcRCは、SUNNY DRIVEの方を見た。


「うん」


司会者は続ける。


「ただし、審査員評価と変化・チャレンジ評価では、Reverse Crownがわずかに上回りました」


会場が静かになる。


「理由は、三曲全体の構成です」


その一言で、リバクラ側の空気が締まった。


司会者は、ゆっくり説明する。


「一曲目、Summer Signal。夏が始まる前の期待。準備して外へ出る。誰かに見つけてほしい。でも、自分からは言えない。夏への入口を描きました」


客席のあちこちから、声が漏れる。


「あれ、夏の準備だったな」


「外出るやつ」


「捕まえてほしいけど言えないやつ」


「ただの散歩になるやつ」


司会者は次に続ける。


「二曲目、WAVE。街で感じる羨ましさ、海で揺れる視線、音に乗れない部屋の夜。それらを、上がって下がってまた上がる“波”として描いた」


BEEF勢の一人が腕を組んだまま呟く。


「そこ拾われたな」


隣が頷く。


「二曲目、かなり構成見られてる」


「でん、も評価に入るんか?」


「入るやろ。たぶん危険加点じゃなくて制御込みで」


「危険加点ってなんだよ」


司会者は、三曲目へ進む。


「三曲目、置いてかないで Holiday。夏休み、連休、年末年始。楽しむ予定だけ立てて、実際には何もできなかった。休みの前だけ最強で、休みの中では弱い。季節だけが先に行き、自分が置いていかれる現実を描きました」


会場が少し笑う。


でも、それはさっきの曲中の爆笑とは違った。


受け取ったあとの笑いだった。


「休みの前だけ最強」


「俺ら全員」


「予定だけ立てるの、ほんと刺さる」


「でも救われた」


司会者は、そこで少し間を置いた。


「つまり、Reverse Crownは、同じ“夏”というテーマの中で、三つの別々の視点を並べました」


スクリーンに三つの言葉が出る。


夏への準備

夏の波

夏に置いていかれる現実


「期待。実感。取り残される感覚」


会場が静かに聞いている。


「夏を一枚の明るい絵として見せるのではなく、理想と現実、外へ出る前の気持ち、夏の中で揺れる心、楽しめなかった人の痛みまで、三曲で展開した。その構成力、表現力、独自性が高く評価されました」


リバックラインの五人は、少し離れた席でその言葉を聞いていた。


Miwaは、タオルを握ったまま動かない。


Ninaが小さく息を吐く。


「そこだ」


Kateは前を向いたまま頷いた。


「三曲が、それぞれ違う夏でした」


Saraが静かに言う。


「盛り上げるだけではなく、構成として見せた」


Yuiが、膝の上で指を止めた。


「評価枠に入るなら、構成力、表現力、独自性、変化・チャレンジ評価」


Miwaが小さく言った。


「うん」


少し離れた別の場所で、楽器ケースを抱えた三人も聞いていた。


彼女たちは、リバックラインの声までは聞こえない。


会場の拍手や司会の声は届く。

でも、離れた席の小声の会話までは拾えない。


アコギケースの子が、マスクの下で呟く。


「三つの夏」


バスクラケースの子が頷く。


「入口、波、置いていかれる」


細長いケースの子が、少しだけ目を細める。


「夏なのに、風向きが全部違った」


「それ、今なら少し分かる」


「うん」


司会者は、カードをめくった。


「それでは、点数を発表します」


会場が、一気に締まる。


スクリーンに、まず審査員評価が出る。


SUNNY DRIVE 4.6 / 5.0

Reverse Crown 4.8 / 5.0


会場が「おお」と揺れた。


SUNNY DRIVEも高い。


だが、Reverse Crownが上。


司会者が説明する。


「審査員評価では、SUNNY DRIVEの技術完成度とステージ支配力が高く評価されました。一方、Reverse Crownは、三曲全体の構成力、歌詞の視点の分散、同一テーマを多面的に見せた独自性で、わずかに上回りました」


SUNNY DRIVEの一人が、小さく頷いた。


悔しそうではある。


でも、分かるという顔だった。


wataが、スクリーンを見ながら息を吐く。


「審査員評価、取れたんか」


EGUIが短く言う。


「構成やろな」


mcRCは、小さく頷いた。


「三曲で見てくれた」


BEEFは、無言のままスクリーンを見ていた。


次に、観客評価。


SUNNY DRIVE 4.8 / 5.0

Reverse Crown 4.6 / 5.0


SUNNY DRIVE側が沸いた。


「よし!」


「そこは取った!」


「会場上げてたもん!」


「SUNNY DRIVE強かった!」


司会者が頷く。


「観客評価では、SUNNY DRIVEが上回りました。演奏中の熱量、クラップ、フックへの反応、明るい一体感。ここは非常に強かったです」


SUNNY DRIVEの三人が、客席へ頭を下げる。


その拍手は大きかった。


Reverse Crownの三人も拍手した。


wataが言う。


「そこは負けたな」


EGUIが頷く。


「盛り上げの瞬発力は向こうが上や」


mcRCも言う。


「認めるしかない」


BEEFが、ぼそっと言った。


「悪くない負け方だ」


wataが振り向く。


「今の、かなり褒めてる?」


BEEFは答えない。


EGUIが短く言う。


「褒めてるな」


BEEFは無視した。


最後に、変化・チャレンジ評価。


会場が少し静かになる。


ここは、今日の差が出る可能性がある。


スクリーンが切り替わる。


SUNNY DRIVE 1.5 / 2.0

Reverse Crown 1.9 / 2.0


リバクルーの一部が、そこで大きく沸いた。


「そこ!」


「やっぱり!」


「三曲全部違った!」


「同じ夏であれだけ変えたもんな!」


「一曲目と三曲目、全然違った!」


司会者が説明する。


「変化・チャレンジ評価では、Reverse Crownが大きく伸ばしました。SUNNY DRIVEは一貫した夏の盛り上げを高い完成度で届けました。一方Reverse Crownは、同じ夏というテーマの中で、準備、波、置いていかれる現実という三つの切り口を見せた」


司会者は、さらに言う。


「一曲ごとに視点が変わりながら、最後には“夏とは、明るいだけではなく、人の理想と現実がぶつかる季節でもある”という一本の流れにまとめた。そこが、今回の変化・チャレンジ評価につながりました」


会場が、大きく拍手する。


これは「どっちが人間臭いか」ではなかった。


評価されたのは、公式基準の中にあるものだった。


構成力。

表現力。

独自性。

そして、変化・チャレンジ。


夏を盛り上げる完成度ではSUNNY DRIVEが強かった。

だが、三曲構成で夏を多面的に見せる力では、Reverse Crownが上回った。


リバックラインの席で、Saraが小さく言う。


「ちゃんと評価基準に入っています」


Kateが頷く。


「人間臭さ、ではなく、構成と表現ですね」


Ninaが言う。


「それで勝てるのがいい」


Yuiが静かに続ける。


「変化・チャレンジ評価、1.9」


Miwaは、少し泣きそうな声で言った。


「三曲、ちゃんと届いた」


別の場所で、楽器ケースの三人もスクリーンを見ていた。


アコギケースの子が、指先でケースの持ち手をなぞる。


「1.9」


バスクラケースの子が言う。


「変えたから」


細長いケースの子が、小さく頷く。


「同じ夏で、風が三回変わった」


ステージ上で、wataがBEEFを見る。


「1.9やって」


BEEFは機材を見たまま言う。


「満点じゃない」


wataが笑う。


「そこ言う?」


EGUIが言う。


「でも、次がある」


mcRCがスクリーンを見つめたまま言った。


「あるな」


スクリーンに合計点が出る。


SUNNY DRIVE 10.9 / 12.0

Reverse Crown 11.3 / 12.0


一瞬、会場が止まった。


司会者が、マイクを近づける。


「勝者――Reverse Crown!」


声援が爆発した。


「リバクラ!」


「勝った!」


「Reverse Crown!」


「mcRC!」


「wata!」


「EGUI!」


「BEEF!」


あちこちから声が飛ぶ。


ただし、リバックラインの五人は、席で固まったままだった。


声を出したい。


たぶん、全員出したい。


でも、今日は客席の中にいる。


関係者ではなく、ただの観客として見ている。


Miwaはタオルを口元に押し当てる。


Ninaが横で小さく言った。


「声、だめ」


Miwaは何度も頷く。


「出してません」


Yuiが淡々と見る。


「涙は出ています」


「それは出てます」


Kateが目元を少し押さえた。


「よかったですね」


Saraは、静かに拍手していた。


「はい」


離れた席では、楽器ケースの三人も拍手していた。


彼女たちは、リバックラインの反応までは知らない。


ただ、ステージを見ている。


アコギケースの子が、マスクの下で笑う。


「勝った」


バスクラケースの子が頷く。


「うん」


細長いケースの子が、少しだけ首を傾ける。


「夏に勝ったんじゃなくて、夏を分けて見せた」


「それ、好き」


「うん」


SUNNY DRIVEの三人は、一瞬だけ悔しそうに顔を伏せた。


でも、すぐに顔を上げた。


そして、Reverse Crownへ拍手した。


その拍手は、弱くなかった。


負けたから仕方なくではない。


認めている拍手だった。


SUNNY DRIVEの一人が、小さく言う。


「観客評価は取った」


別の一人が頷く。


「でも、三曲構成で負けた」


三人目が、客席を見たまま言う。


「夏を盛り上げるだけじゃなくて、夏の中身を分けてきた」


最初の一人が、悔しそうに笑う。


「やられたな」


その声には、納得があった。


ステージ中央で、mcRCは深く頭を下げた。


wataも、サングラスの奥で少しだけ目を閉じて、頭を下げる。


EGUIは、SUNNY DRIVEの方をまっすぐ見てから、礼をした。


BEEFは、少し遅れて、軽く顎を下げる。


司会者が、会場の熱を受けて声を張る。


「Reverse Crown、二回戦突破です!」


また、拍手が広がる。


ただ勝っただけではない。


今回は、前回と違う勝ち方だった。


一回戦は、入口を作り、名前を残し、会場を動かした。


二回戦は、同じテーマを三つに割り、理想と現実を並べた。


夏を盛り上げる相手に対して、夏を解像した。


その差が、数字になった。


mcRCがマイクを持つ。


少しだけ息を整える。


「SUNNY DRIVE、めちゃくちゃ強かったです」


SUNNY DRIVE側から拍手が起きる。


mcRCは続ける。


「俺ら、あそこまで真っ直ぐ夏を明るくするのは、たぶんできないです」


wataが横で小さく言う。


「できんやろな」


EGUIが頷く。


「できんな」


客席が少し笑う。


mcRCも笑った。


「でも、夏って、明るいだけじゃないと思ってます」


会場が静かになる。


「出たいけど出られない日もある。楽しんでる人を見て羨ましい日もある。休みがあったのに何もできなくて、置いていかれた気がする日もある」


mcRCは、客席を見渡した。


「そういうやつも、夏に入れていいと思って三曲やりました」


拍手が起こる。


大きくはない。


でも、深い拍手だった。


EGUIがマイクを上げる。


「勝てて嬉しいです。でも、相手が弱かったとは思ってません」


SUNNY DRIVEの三人が、その言葉に頷く。


wataが続ける。


「今日は、盛り上げる夏と、揺れる夏の勝負やったと思ってます」


少し間を置いて、wataは笑った。


「で、うちはだいぶ揺れてた」


客席が笑う。


EGUIが短く言う。


「揺れすぎたところもあった」


wataが即座に返す。


「そこは言うな」


BEEFが後ろでぼそっと言った。


「切った」


会場が笑う。


「BEEF!」


「切ったな!」


「でんのとこ!」


「ちゃんと切ってた!」


wataが振り返る。


「お前、そこで存在感出すな」


BEEFは無表情で返す。


「仕事だ」


EGUIが言う。


「仕事ではある」


mcRCも笑う。


「今日は、BEEFも含めて勝ちました」


客席が沸いた。


BEEFは、キャップのつばを少し下げる。


その横の小さな逆さクラウンが、照明を受けて一瞬だけ光った。


客席のどこかから声が飛ぶ。


「BEEF、ロゴ似合ってるぞ!」


BEEFは反応しない。


反応しないが、wataは見逃さない。


「照れてる?」


BEEFが即座に返す。


「違う」


wataが笑う。


「早い」


EGUIが頷く。


「早い時はだいたい図星」


BEEFがEGUIを見る。


「お前まで言うな」


会場が笑った。


司会者が笑いを受けながら締める。


「改めて、Reverse Crown、二回戦突破です!」


拍手がもう一度、大きくなる。


照明が少しずつ落ちていく。


SUNNY DRIVEは、袖から拍手を続けていた。


Reverse Crownの三人は、最後にもう一度頭を下げる。


BEEFも、ほんの少しだけ顎を下げた。


二回戦。


Reverse Crown、勝利。


観客評価ではSUNNY DRIVE。

構成と表現、変化・チャレンジでReverse Crown。


勝因は、人間臭さではない。


同じ夏を、三つの違う視点で見せたこと。


夏への準備。

夏の波。

夏に置いていかれる現実。


その三曲が、ひとつのステージとして評価された。


だから、Reverse Crownは勝った。

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