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ラップ付き小説 ReversCrown 元気ないやつこっちおいで  作者: egubi
sound session編

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143/186

5-2-1 夏の音が鳴っている




夏だった。


朝から空気が重かった。


駅を出た瞬間、アスファルトの照り返しが靴底から上がってくる。

遠くで蝉が鳴いている。

改札から会場方面へ流れる人の列は、すでに普通のイベントのそれではなかった。


Tシャツ。

タオル。

キャップ。

透明なバッグ。

スマホを片手に、チケット画面を何度も確認する人。

友人同士で何かを言い合いながら、すでに声が少し大きくなっている人。

日傘を差したまま、列の先を見ようと背伸びする人。

汗を拭きながら、それでも顔だけは明るい人。


暑い。


けれど、その暑ささえ、今日の一部になっていた。


会場の外には、いくつもの案内板が立っている。


入場ゲート。

手荷物確認。

チケット確認。

関係者受付。

出演者動線。

物販列。

水分補給所。

救護案内。


スタッフたちは、すでに全員動いていた。


白いポロシャツのスタッフ。

黒いスタッフTシャツの誘導係。

無線を耳に当てる人。

列の端で声を張る人。

大きな荷物を持った客を、別導線へ案内する人。


荷物が少ない人たちは、思ったよりも速く流れていく。


チケットは事前購入。

バッグは確認しやすいもの。

止まる人は止まる。

進める人は進む。


それは、冷たく切り捨てる導線ではなかった。


ただ、全員を止めないための導線だった。


一人の確認で、後ろの何百人を止めない。

入口で滞らせない。

暑さの中で、無駄に待たせない。


観客も分かっているのか、列は大きく崩れない。


「バッグ開けとこ」


「チケット出して」


「飲み物、これ大丈夫?」


「スタッフさんに聞いた方が早いって」


そんな声が、あちこちで飛んでいた。


会場に入る前から、もう大会は始まっていた。


客席だけではない。


出演者側の通路にも、夏の熱が入り込んでいた。


リバクラの三人は、関係者動線から中へ入った。


mcRCは黒いキャップを少し深くかぶり、片手に資料を持っている。

wataはスマホと水を交互に見ながら、落ち着きなく周囲を見ていた。

EGUIは、いつも通り水を持っている。

ただし、いつもより少しだけ歩幅が小さい。


BEEFは後ろから来た。


黒いTシャツ。

キャップ。

肩に機材バッグ。

片手にケース。


表情は眠そうなのに、目だけは会場の音を拾っていた。


「でけぇな」


wataが言った。


BEEFは前を見たまま返す。


「音が散りそうだな」


「感想そこ?」


「そこだろ」


EGUIが天井を見た。


「広い」


mcRCも頷く。


「広いな」


ただ広いだけではなかった。


高い。

深い。

遠い。


ステージから最後列までの距離が、まだ立ってもいないのに分かる。


ここで言葉を置く。

ここでフックを返してもらう。

ここで初めての人に届かせる。


そう考えた瞬間、身体の内側が少し重くなる。


wataは、わざと軽く言った。


「今日、ここでリバ点呼したら、返事返ってくるまで時差ありそう」


EGUIが言う。


「音速は足りる」


「理科で返すな」


BEEFがぼそっと言った。


「タイミングずれたら切るぞ」


wataがすぐ見る。


「誰を?」


「音を」


「人じゃなくてよかった」


mcRCは少し笑った。


笑えた。


それは大事だった。


笑えるなら、まだ身体は固まりきっていない。


控室へ向かう通路には、他の出演者たちもいた。


誰かが発声している。

誰かがストレッチしている。

誰かがイヤホンを片耳だけ外し、ビートを確認している。

誰かが仲間と円陣を組んでいる。

誰かが壁にもたれて目を閉じている。

誰かが笑っている。

誰かが一言も喋らない。


派手な衣装のチームもいた。

黒で統一しているチームもいた。

ダンサーを連れているチームもいた。

バンドのように機材を抱えているチームもいた。

ソロなのか、クルーなのか、まだ分からない人たちもいた。


名前は分からない。


顔も、今は覚えられない。


ただ、全員が気持ちを入れているのは分かった。


軽い現場ではない。


誰かが遊び半分で来ている空気ではなかった。


mcRCは、少しだけ視線を下げた。


見ようと思えば、見える。


他のチームの顔。

動き。

人数。

雰囲気。

誰が中心か。

誰が緊張しているか。

誰が余裕を装っているか。


いつもの彼なら、拾っていたかもしれない。


でも、今はまだ全部は見えない。


いや、見えているのに、入ってこない。


自分たちの一試合目。

一万人を超える初日の客席。

三曲構成。

BEEFとのREBUILD。

リバックラインから渡された注意事項。

リバクルーがどこかにいるかもしれないという感覚。


それだけで、頭の中はかなり埋まっていた。


wataも同じだった。


普段なら、他チームの服装や言葉遣いを拾って、何かしら軽口を言う。

でも今日は、口の端まで出かけた言葉が、何度か戻っていった。


EGUIは、ただ前を見ていた。


それは無関心ではない。


今、見るべきものを絞っている顔だった。


控室に入ると、冷房の風が一気に肌に当たった。


汗が引く。


けれど、熱は引かなかった。


机の上には、水、タオル、簡易タイムテーブル、ステージ進行表。

壁には、今日の出番順が貼られている。


Reverse Crownの名前は、そこにあった。


ちゃんと、あった。


wataはそれを見て、少しだけ息を吐いた。


「あるな」


mcRCが頷く。


「ある」


EGUIも見た。


「出るんやな」


BEEFは機材バッグを下ろし、椅子には座らず、ケースを開けた。


「今さらかよ」


wataが振り向く。


「今さらやけど、今さら来るやん」


「何が」


「実感」


BEEFは返事をしなかった。


代わりに、機材の端子を確認する。


コード。

パッド。

ヘッドホン。

予備ケーブル。

電源。

小さなメモ。


その手つきは、雑ではなかった。


人との距離感は雑なのに、機材への触れ方はやけに丁寧だった。


mcRCは、その手元を見て少し安心した。


BEEFは、ふざけていない。


最初から、そんなことは分かっていた。


けれど、こういう場で見ると、改めて分かる。


この男は、言葉ではなく準備で答える。


BEEFはケーブルを一本出しながら、ふと思い出したように言った。


「よくよく考えたらさ」


wataが嫌な顔をする。


「何」


BEEFは、こちらを見ないまま続けた。


「まだ参加資格もないのに、よく俺を呼んだな」


空気が止まった。


wataの顔から、さっきまでの軽さが消える。


mcRCは、一瞬だけ目を伏せた。


EGUIは静かに水を置いた。


BEEFは機材を並べながら、追い打ちのように言った。


「焦りすぎだろ」


wataが、ゆっくり顔を覆った。


「……それな」


mcRCが低く言う。


「それは、ほんまにそう」


EGUIも短く言った。


「先走った」


その話は、今では笑える。


ぎりぎり笑える。


けれど、あの時はかなり痛かった。


BEEFを呼んだ夜。

暴れ牛管理局ができた夜。

BEEFが「やる」と言った夜。


その少しあとに、リバックLINEが静かに動いた。


Kate@外部連絡:

確認です。

BEEFさんへの連絡は、もう済んだのでしょうか。


その時点で、mcRCは嫌な予感がしていた。


Yui@庶務・作業表:

状態:BEEFさんへの連絡済みの可能性あり


wataは、その時、少し笑っていた。


まだ笑っていた。


次のSaraの一文を見るまでは。


Sara@権利確認:

念のため確認します。

Sound Sessionは、まだ本戦出場が確定していません。

現時点では、出場検討および選考応募準備の段階です。


三人は、その場で止まった。


本当に止まった。


まだ選ばれていなかった。


出ると決めた。

出たいと決めた。

勝ちに行くと決めた。

でも、まだ大会側から選ばれていなかった。


参加資格を得たわけではない。


それなのに、BEEFを呼んだ。


グルチャまで作った。


暴れ牛管理局まで作った。


BEEF@Rebuild Masterまで爆誕した。


wataは当時、机に突っ伏して言った。


「……終わった」


EGUIは静かに言った。


「終わってはいない」


「いや、これは恥ずい」


mcRCは両手で顔を覆っていた。


「これは、あかん」


リバックLINEは容赦がなかった。


Nina@広報:

気持ちは分かります。

大会に出る前提で準備するのは大事です。

でも、外部の方を巻き込む前に、選考通過確認は必要です。


Miwa@物販:

表では落ち着いてます。

でも、ちょっとだけ言わせてください。

焦りすぎです。


Yui@庶務・作業表:

状態:先走り


wataは、その「状態:先走り」で完全に沈んだ。


「Yuiさんの状態管理、刺さる時ほんま刺さる」


Saraはさらに続けた。


Sara@権利確認:

まだ選考にも入っていない段階で、出演前提の依頼に見える動きは注意が必要です。

相手側のスケジュールを押さえる場合も、現状を正確に伝えてください。


Kateも静かに加えた。


Kate@外部連絡:

先に動くこと自体は悪くありません。

ただし、相手に誤解させない言い方が必要です。

「選考通過前ですが、通過した場合に相談したい」という形で伝えるべきでした。


mcRCは、スマホを握ったまま言った。


「……ほんま、その通りです」


EGUIが頷いた。


「これは俺らが悪い」


wataは机に顔を伏せたまま言った。


「勝手に、もう選ばれてる気になってた……」


その言葉は、軽くなかった。


三人とも、少しだけ浮かれていた。


レギュレーションを読んだ。

参加を決めた。

リバックラインが動いた。

BEEFが必要だと分かった。


だから、自然に次へ進んだ。


進んでしまった。


でも、それはまだ、選ばれた側の動きだった。


実際には、まだ選ばれていない。


その事実を、リバックラインに真正面から突きつけられた。


BEEFからも、当然のようにメッセージが来た。


BEEF@Rebuild Master:

まだ選ばれてねぇのかよ


wataが、さらに沈んだ。


wata@Technician:

はい


BEEF@Rebuild Master:

よく俺を呼んだな


wata@Technician:

ごめんなさい


BEEF@Rebuild Master:

まあ、呼ぶ判断自体は間違ってねぇけど


三人は顔を上げた。


BEEFは続けた。


BEEF@Rebuild Master:

通る前提で準備しないと間に合わないこともある

でも、通った気でいるのは違う


短い。


でも、刺さった。


mcRCは、その画面を見たまま、小さく呟いた。


「ちょっと天狗になってたかもしれん」


wataは机から顔を上げた。


「天狗……」


EGUIが静かに言った。


「初心忘るるべからず」


wataがすぐ顔をしかめる。


「長い」


mcRCが続けた。


「心頭滅却」


wataがさらに顔をしかめる。


「方向違う」


EGUIが言った。


「実るほど頭を垂れる稲穂かな」


wataは両手を上げた。


「くどい」


mcRCは、少しだけ笑った。


「俺らっぽい」


wataはため息をついた。


「反省の語彙が全部重いんよ」


BEEFから一言来た。


BEEF@Rebuild Master:

説教くせぇ


三人は、同時に笑った。


笑ったあと、mcRCはすぐに謝罪と訂正を打った。


mcRC@Scene Maker:

BEEF、ごめん。

まだ選考通過前なのに、出演前提みたいに呼んだ。

通過した場合に正式にお願いしたい。

現時点では、予定確認と相談の段階として扱ってほしい。


BEEFの返信は短かった。


BEEF@Rebuild Master:

最初からそう言え


少し間を置いて、もう一文。


BEEF@Rebuild Master:

通れよ


それだけだった。


でも、それがいちばん効いた。


通れよ。


選ばれた気になるな。

でも、選ばれに行け。


その一言で、三人はもう一度姿勢を直した。


そこからが本当の応募準備だった。


リバックラインが資料を整えた。

Kateが外部連絡文を作り直した。

Saraが提出内容と表記を確認した。

Ninaが見え方を整えた。

Yuiが締切とタスクを表にした。

Miwaは「表では落ち着きます」と言いながら、たぶん裏で一番燃えていた。


三人も浮ついた気分を捨てた。


実績。

音源。

活動経歴。

ライブ映像。

曲の説明。

チームの特徴。

ステージで何を届けるか。


リバクラが何者かを、初めて見る人にも伝わる形で出した。


何度も書き直した。

短くした。

削った。

言い換えた。

強すぎる言葉を抑えた。

弱すぎる言葉を立て直した。


そして、選考結果の日。


リバックLINEに、Kateからメッセージが入った。


Kate@外部連絡:

Sound Session本戦出場、選考通過です。


その瞬間、リバクラボラトリーは爆発した。


wataが立ち上がった。

EGUIが水を置いた。

mcRCが深く息を吐いた。


リバックLINEも同時に爆発した。


Miwa@物販:

ぎゃーーーーーーーー!!!!!!


Nina@広報:

通った!!!!!!!!


Yui@庶務・作業表:

状態:本戦出場確定


Sara@権利確認:

ここから正式対応に入ります。


Kate@外部連絡:

おめでとうございます。

ここからが本番です。


そして、少し遅れてBEEFから来た。


BEEF@Rebuild Master:

通ったか


wataが即返した。


wata@Technician:

通った


BEEFの返信は一言だった。


BEEF@Rebuild Master:

なら壊せるな


その一言で、やっと本当に始まった気がした。


その回想を、今日の控室でBEEFが思い出させてきた。


BEEFはケーブルを確認しながら、何でもない顔で言う。


「ほんと、よく通ったな」


wataが言い返す。


「通ったんやからええやろ」


「通ったから今言ってる」


「落ちたら?」


「黒歴史」


mcRCが目を閉じた。


「やめろ。ほんまにやめろ」


EGUIが淡々と言う。


「落ちていたら、暴れ牛管理局だけが残っていた」


wataが吹き出した。


「最悪すぎる」


BEEFは少しだけ口元を動かした。


笑ったのかもしれない。


分かりにくい。


「まあ」


BEEFは、ヘッドホンを持ち上げながら言った。


「先走った分、今日はちゃんと走れ」


その言葉に、三人は黙った。


BEEFは相変わらず言い方が雑だった。


でも、悪くない。


先走った。


確かにそうだった。


でも、そこで止まらなかった。

浮かれていたことを認めた。

頭を下げた。

準備し直した。

選考を通った。


だから今、ここにいる。


控室の壁に貼られた進行表には、Reverse Crownの名前がある。


それはもう、勝手に思い込んだ名前ではない。


選ばれた名前だった。


wataは、椅子に座ってスマホを開いた。


リバックLINEを見る。


通知は多くない。


むしろ、思ったより静かだった。


それが少し怖い。


wataが画面を見せる。


Kate@外部連絡:

入場完了しました。

観客席にいます。

表では落ち着いています。


Miwa@物販:

表では!!!!!!


Nina@広報:

会場、想像以上です。

でも、みんなちゃんと入れてます。導線かなり良いです。


Sara@権利確認:

撮影禁止エリア、録音関連の案内も確認しました。

必要なら後で共有します。


Yui@庶務・作業表:

状態:全員着席

水分補給済

タオル確認済

叫ぶ準備あり


wataは笑った。


「最後だけ観客すぎる」


mcRCも画面を覗き込んだ。


「全員いるな」


EGUIが頷く。


「いる」


その言葉は、短いのに大きかった。


リバックラインは、観客席にいる。


仕事ではない。

裏方として走り回っているわけでもない。

今日は、まず見届ける側にいる。


外部連絡も。

物販も。

広報も。

権利確認も。

庶務・作業表も。


全員、客席にいる。


見られる。


それは緊張でもあり、支えでもあった。


mcRCは短く返信した。


mcRC@Scene Maker:

ありがとう。

見てて。


すぐ既読がついた。


返信は、Kateからだった。


Kate@外部連絡:

見ています。


そのあと、Miwa。


Miwa@物販:

泣いてません!!!!!!


Nina。


Nina@広報:

まだ、です。


Sara。


Sara@権利確認:

始まる前に泣くのは早いです。


Yui。


Yui@庶務・作業表:

涙タイミング:未発生


wataは腹を押さえた。


「リバックライン、通常運転」


EGUIが言った。


「落ち着くな」


mcRCも少し笑った。


緊張の中に、いつもの誰かがいる。


それだけで、少し呼吸が戻る。


スタッフが控室のドアをノックした。


「Reverse Crownさん、五分前です」


空気が変わった。


wataがスマホを伏せる。


EGUIが水のキャップを閉める。


mcRCが立ち上がる。


BEEFはヘッドホンを首にかけ、機材ケースを持った。


スタッフが確認する。


「移動お願いします」


mcRCは頷いた。


「お願いします」


通路へ出る。


冷房の空気から、ステージ裏の熱へ変わる。


遠くから歓声が聞こえる。


まだ自分たちへの歓声ではない。


前のチームか。

MCか。

会場全体のざわめきか。


分からない。


ただ、熱はある。


人がいる。


期待がある。


誰かの本気が、もう鳴っている。


通路の壁には、スタッフ用の進行表が貼られていた。


時間。

転換。

照明。

音響。

出演者名。


その中に、自分たちの名前がある。


Reverse Crown。


mcRCは、一瞬だけ足を止めかけた。


だが、止まらなかった。


wataが隣に来る。


「行くか」


mcRCは頷く。


「行こう」


EGUIが後ろから言った。


「勝ちに行く」


wataが振り向く。


「でも?」


EGUIは前を見たまま言った。


「勝ちだけ見ない」


mcRCは小さく笑った。


この言葉は、もう確認だった。


何度も言うための合言葉ではない。


忘れないための芯だった。


BEEFが、後ろからぼそっと言った。


「喋ってる暇あったら歩け」


wataが振り返る。


「お前、余韻壊すな」


BEEFは平然と返す。


「余韻はステージで作れ」


EGUIが短く言った。


「正しい」


wataは悔しそうに笑った。


「ほんま、腹立つ正論やな」


ステージ袖に着く。


黒い幕の向こうから、会場の音が近くなる。


さっきまで遠かった熱が、すぐそこにある。


フロアの足音。

歓声。

低音。

拍手。

誰かが叫ぶ声。

スタッフの無線。

ケーブルを踏まないように動く靴音。


mcRCは、幕の隙間から客席を見た。


見えたのは、ほんの一部だけだった。


照明の海。

タオル。

手。

顔。

熱。

色。


多すぎて、まだ一人ひとりは見えない。


でも、それでよかった。


これから見る。


これから拾う。


これから声を置く。


スタッフが手を上げる。


「Reverse Crownさん、スタンバイお願いします」


wataがマイクを握る。


EGUIが一歩前へ出る。


mcRCが深く息を吸う。


BEEFは機材を持ったまま、何も言わない。


ただ、目だけが少し鋭くなっていた。


スタッフの声が飛ぶ。


「次、Reverse Crownです」


その瞬間、客席のどこかから歓声が上がった。


それがリバクルーなのか、初めて名前を聞いた誰かなのか、まだ分からない。


分からなくていい。


mcRCは、一歩前へ出た。


夏の熱が、幕の向こうから押し寄せてくる。


大会が、始まる。

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