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恋よ咲け  作者: Lilly
恋が咲くまでのお話
12/27

第十二話 白谷涼くんの彼女ですわ

『私も、みーさんも、変われる』

 その言葉を聞いて、私は嬉しくなってしまった。

 だって、こんな私でも、変われる。それはつまり、いつか涼さんにも恋をできる日が来るということだ。それが嬉しかった。


 次の日の放課後、涼さんが私の元へやってきた。

「美華、今日生徒会があるんだ。だから・・・一緒に帰れない。ごめん」

「ううん、大丈夫。今日は、瑠璃と帰るよ」

「ごめんね、ありがと」

 ・・・ん?ちょっと待って。いつから私と涼さんは一緒に帰ることになっていたの?別に、一人でも帰れるのに。ていうか、ちょっと涼さんと帰るのを楽しみに待っていた私もいる気がする。


 その話を瑠璃にしたら、瑠璃は目を見開いた後、優しく笑った。

「それは、みーさんも変わりつつあるってことだよ」

「そうかな」

「絶対そう」

 瑠璃は、私の中学時代のことを話しても今のままでいてくれた。しかも、私に気を使わないようにしてくれた。涼さんの言う通りにして良かった。多分、このまま瑠璃に隠していたら、私は壊れていたかもしれない。

 ふと瑠璃を見てみると、どこかソワソワしていた。今日はずっとこれだ。あ、確か・・・瑠璃は春野さんに恋をしていたような気がする。もしかして、春野さんと何かあったのだろうか。

「瑠璃、何かあった?」

「・・・いや、みーさんは私のことをるーさんって呼んでくれないんだなぁと思って」

「え?」

 私がそう聞き返すと瑠璃は頬をぷくぅっと膨らませた。

「だって、みーさんが私のことをるーさんと呼ばない理由はなくなったよね?なのに、なんで呼んでくれないの?」

「でもー」

「でもじゃない!呼んでよ、みーさん」

「瑠璃が、私のことを美華って呼べば?」

「いやだよ。みーさんの事は、一生みーさんって呼ぶんだから」

「そんなに駄々こねないでよ。るーさん」

 私は、ようやく「るーさん」と呼べた。

「え!?い、今、るーさんって、るーさんって、呼んだ!?」

「・・・うん」

 私が頷くと、るーさんは嬉しそうに笑った。

「ありがと!みーさん」

「お礼を言わなきゃなのは、私だよ。るーさんのおかげで、私は過去を乗り越えられたんだから」

「私のおかげっていうか・・・白谷くんのおかげじゃない?」

「そうだね。るーさんと涼さんのおかげ」

 そう言うと、るーさんは明るく笑った。

「みーさんも、変われてきてるんだね」

「るーさんも、だよ?」

「そう?」

「そうだよ」

 るーさんは相手のことを第一に考えてしまうから、自分のことに少しだけ無頓着だ。るーさんも、変われている。だって、昔は強引に「るーさん」と呼ばせようとしなかったのに、今は少しだけ強引になった。それが、嬉しいと感じている私もいる。やっぱり、私も変われてきているのだろうか。

 るーさんと雑談していると、空いている席に誰かが座ってきた。

「失礼致しますわ」

 同じ制服を着た女子高校生は、ニタァっと笑ってきた。

(わたくし)綾小路(あやのこうじ)舞姫(まき)と申しますの。確か・・・円城寺美華さんと、竹宮瑠璃さん・・・でしたっけ?」

 綾小路舞姫は、両手で頬杖をついた。

「そうですけど、何の用ですか?」

 るーさんが喧嘩腰で舞姫に話しかけた。

「ふと、風の噂で聞いたのですが・・・円城寺美華さんって涼くんの彼女・・・ですって?」

「あ、はい・・・。そう・・・です」

 私が頷くと、舞姫はニタァっと開いた口をさらに大きく広げた。

「アハ・・・」

 舞姫はそう言うと、声を上げて笑い出した。

「アハハハハハッ!!」

 周りが舞姫を見ているのが分かる。視線がものすごく痛い。

「失礼致しましたわ。つい・・・笑ってしまいましたの」

 舞姫は涙を拭いながら、そう言った。

「どうして笑っていたのか、理由を聞いても?」

 るーさんが相変わらずの喧嘩腰で尋ねる。

「だって・・・(わたくし)が涼くんの彼女ですのに、あなたのような方が涼くんの彼女のわけないでしょう?」

「どういう意味?」

 るーさんの喧嘩腰は、さらに強くなっていく。

「そのままの意味ですわ。だって、円城寺美華さんのお母様って・・・家を出て行ったような方なのでしょう?」

 なんで、それを・・・。

(わたくし)の家には、とても優秀な探偵がおりますの。その者に頼んで調査させていただきました」

 るーさんが、ふと私を見てきた。

「綾小路舞姫さん、でしたっけ?そんなにみーさんのことを調べるのはなぜですか?」

「簡単ですよ。だって(わたくし)こそが涼くんの彼女なのですから」

 ・・・え?

「もう一度・・・言って、くれますか?」

「いいですわよ?減るものではございませんから。(わたくし)、綾小路舞姫はー」


「白谷涼くんの彼女ですわ」



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