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側室出身王女と正室出身王女の世界転覆  作者: 空色 蒼
第一章 貴族院編
42/43

42. 6日目 力の求める先に

作者の都合でサブタイトルの書き方を変更しました。

あまり興味ないでしょうが、一応ご報告です。

□■□



 「まったく…私の授業の時間があまり残ってないではないですか。あの考えなし……放課後はきっちり説教をしてやらないと気が済みませんね。―――それにしても、たかだか二人の生徒にクラスの全員がしてやられるなどと…随分と今年の生徒は能力に差があるようですねぇ」


 「ナ、ナーガリヤ先生……怒っていらっしゃいますか?」


 「っまさか!貴族たる者これしきの事で感情を揺さぶられてどうするのです。ミズ・エルヴィス?」


 そうは言うが……黒板の前で行ったり来たりを繰り返し、杖を何度も手にピシピシと叩きつけていれば誰だって機嫌が悪いのだと考えると思うがなぁ~。


 「…仕方がありませんね。Eクラスの初回授業はミズ・エルヴィスとミスター・ヴィルドの二人にだけ受けていただきましょう。残りは全員補習です!」


 ……すまない、皆。今度見舞いの品でもルーナに見繕わせて家の方へと送らせる事を約束しよう。


 「私は早退させていただきます」


 「おや、それは何故ですか?」


 もちろん今日の失敗を兄上に一刻も早く釈明しに行くためだろう。だが、あの人は言い訳が嫌いな人だから…もしそんな事をすれば逆効果。さらに怒らせる結果となるだけ。ここは一つ、彼の為に助言を送ろう。


 「謝罪以外の言葉を口にした瞬間、貴殿の首は胴体とお別れになることを努々忘れないでいて欲しい」


 「―――っ!」


 そのような眼差しを向けられるのは不愉快だ。私はただ事実を伝えたまでなのだが?


 「………家の都合によるものです。それでは失礼」


 ふぅ。今回の事で兄上の派閥が鳴りを潜めるかどうかは読めないが、意外な手を使ってくることを知れただけでも僥倖。問題は他の継承者達が触発されて私や……姉上の暗殺を企むものが出やしないかという事。


 「…!ミ……ツ。ミズ・エルヴィス!」


 「はっ、はい!」


 「まったく…時間もないのですから、授業に集中してください。あと三十分ほどですが進められるところまではたとえ生徒が貴女だけであろうと進めますよ」


 教師の務めを放棄する訳にはまいりませんからね、だそうだ。こちらとしては先の試合で疲弊とまではいかないが、横になりたい思いだというのに。


 「失礼しました。……ところで、何の授業をするのでしょう?」


 「今日はモンスターの召喚をしていただきます。貴女はクラウスのクラスでしたね。では魔法生物とモンスターの違いは既に教えられていますね?……よろしい。それでは、召喚方法をこれから説明しますのでよく聞いておきなさい」


 さすがに今日教えられた内容だから違いは知っているが、なぜ魔法生物ではなくモンスターを召喚するんだ?


 「質問があるのならば挙手をなさい」


 承知いたしました……面倒くさい先生だな。


 「あえて魔法生物ではなく、モンスターを召喚する理由をお伺いしても?」


 「一つの理由としては、優秀な生徒にわざわざ魔法生物の召喚から教えるのは非効率であるから。もう一つは召喚後の調教に成功すれば有能な使い魔を得られるからです。―――使えるモノが多ければ多いほど、貴女にとって都合が良いのではなくて?」


 「おや、意外と()()をされるのですね。私の観察眼もまだまだのようです」


 「そう云う訳ではありません。ただ……ソチラの方が面白いかと思いましてね。私は読書家ですが、趣味で書き手の真似事をしてましてね。物語は展開の多さが大事ですので……提案したまでです」


 別に私を王にしたい訳ではなく、継承戦を面白くするため……ね。院の教師は全員が一癖も二癖もある方達ばかりで骨が折れる。


 「そうですか。楽しみですね…どのようなモンスターを召喚できるのでしょう」


 「偏にモンスターと呼んでも能力はその個体が秘める魔力量に左右されることが多いのです。ですから、どれぐらいの魔力を回路に流し込めるかが上位のモンスターを呼び出せる鍵となります。召喚に用いる魔力回路は一般利用が可能になるよう簡略化されています。その工程を簡単に説明するのなら…一、属性検知。二、魔力量検知。三、魔力波長の検知。これら三つを測ることでその者に適するモンスターが半径百km以内から選択されるという寸法です」


 ですが…と彼女はさらに言葉を続ける。


 「簡略化される前の魔力回路を用いれば術者本人の詳細な情報を回路に取り込ませることが可能となるのですよ!つまり―――」


 「―――つまり、より能力の高いモンスターと呼び出すことも容易であると」


 その通り!と言葉を引き継いだ私に嬉しそうに褒める。…何とも魅力的な提案だがどうせかなりの魔力を消費するなどの一目瞭然のデメリットがあるのだろうなぁ。


 まぁ、やらないという選択肢はないが……掌の上で踊らされている感覚を拭えないのが癪に障る。それにだ…。


 「先生、他の継承者達にも同じことをさせていますね?」


 「―――当然のことです。私は教師ですから生徒達には平等に教育を施さないと。もちろん、そんな事をわざわざ訊ねるぐらいです。貴女もやるのでしょう?」


 当たり前だ。先の試合で消費した魔力が回復していなくとも王子達の中で、私が最も魔力量が多いからな。ここで使える駒を増やしておくのは百利あって一害なし。


 もし調教に成功すれば、姉上の護衛として使えるかもしれないし……。


 「えぇ、是非ともご教授願います」


 「よろしい。では、こちらに魔力回路を写した紙があります。そちらに手をかざし、こう唱えてください」


 『闇魔法―――荒ぶる命の選択』


 この人、私の得意属性が闇であることを知っていたな?わざわざ闇系統での召喚魔法を用意してあるとは…侮れない。


 それにしても…うっ!この魔力消費は今までの魔法とは桁違いだ。これを他の王子達も耐えたというのか…!?マ、マズイ…。魔力が切れそうだ。


 「せ、先生!」


 「すごい!素晴らしいです!!!流石はこの国トップの魔力量を誇る王女です…!い、今までのとは比べ物にならないくらい魔力の渦が視認できるっ……ハァ、こんな輝き方……幸せ♡」


 クソッ…。何でか解らないが興奮し出してるぞ、この人!


 「えぇい!持っていくなら…全て持っていけ!どんなモンスターであろうと私の僕にするのは、こ

っの…確定事項だぁぁ!」


 ビシュンッ!!!


 紫色の光の渦が私の掌を起点に大きくうねったかと思うと、突如として光が消え…それと同時に私達の背後にナニカが出現したのがわかった。冷汗が止まらない私とは違って、好奇心に駆られた先生が一早く後ろを振り向こうとしたが―――


 『ウゴクナ』


 一瞬にして背後から膨れ上がった魔力が、この場にいる私達を殺すには十分すぎることを物語っていた。人語を操るモンスター……そんなモノが召喚できるなんて耳にしてはいないぞ!


 おい、どういう事だ。説明しろという目つきで今だ興奮状態から冷めやまぬ先生を睨みつけると彼女も初めての現象のようでただ首を横に振るだけだった。嬉しそうな顔をするのはやめろ。ハァ……もう体内に残存する魔力は空に等しい。この状態で後ろのバケモノを相手にしろだと?逃げることも叶わないぞ?―――いや、そもそも一歩でも動いたらオワリだな。


 『ヨヲ、ヨンダノハ、キサマダナ』


 魔力の塊が触手のような形となり、私の左肩に触れる。…何とも重く苦しい魔力なんだ。人間の魔力とモンスターとではここまで質に違いが出るのか。この様な状況でなければ今後の研究のために色々と調べたいところだが…とにかくその問いにただ頷くだけしか出来ない。


 『ナヲ、キカセロ』


 名前……


 「それ、は………無理、だ」


 拒絶の言葉を吐いた途端、さきほどの触手は刃へと形を変えて私の頸に当てられる。


 「名前を…。っはぁ……伝えては私が…お前の、主になることが、できないだろう?」


 名前を告げる行為は古くから主従の証として大切にされたものだ。だからこそ、私の最初のレイラへのお願いが名前を告げる事だったんだ。モンスターなんぞに私の名前を軽々しく明かしてやるものか…!


 『ヨノ、スガタヲ、ミルコトモ、カナワナイキサマガ、アルジダト?……ジョウダンデモワラエヌゾ!!!』


 ―――ザシュッ。


 「かひゅっ……」


 怒りの声が放たれた途端、魔力の刃が私の喉を貫いた。

 貫かれた刃は目の前の黒板にまで突き刺さり、その刀身には私の鮮血が塗られている。隣にいる先生も流石に事態の深刻さを把握したようで、私の顔を青ざめた表情で見つめている。


 『スコシマリョクガ、オオイグライデズ二ノルナ』


 ……声を出そうにも貫かれた箇所から空気が漏れ出てしまい、音を出すこともできない。どうか、そこまで怯えた目をこちらに向けないでもらえるか?口からの吐血で顔がひどいことになっていそうだから。


 (今、この場にルーナがいなくて良かった……)


 きっと無謀にも背後のアレに立ち向かおうとして殺されていただろう。


 (出血量自体は…大した量ではないが)


 ……魔力は空。さらに身動きもとれない状況。ここで殺されるぐらいなら、嫌味の一つでも返してやらないと。


 (人語を操れるのなら、文字も…読めるだろ)


 魔力を指に纏わせ、空中に文字を綴っていく。


 『ソノ、ジョウタイデナニヲシヨウト…』


 姉上を置いて逝く羽目になるんだ。これぐらい言わせてもらうぞ、バケモノ………。


 『私の名はライリー・エルヴィス。来世で貴様を……滅する者だ!』


 死ぬまでこの名を頭に刻め。


 『―――エルヴィス?ッツ、クハハハハハッ……ソウカ、キサマ…アヤツノケイフニ、ナヲツラネルモノデアッタカ。フッ、ヤメダ』


 頸を貫いていた刃が消え、私はその場にへたり込んでしまう。……どうして殺さない?


 『バショヲカエルゾ』


 ……なっ!ここはどこだ!?瞬きをしたら目の前の光景が変わっている。

 ナーガリヤ先生の姿は…見えない。私とコイツだけが移動したのか、だが一体何のために。


 「ここは余の魔力でつくった空間だ。表を上げよ、人間」


 バケモノの声に従って顔を上げるが…アレがバケモノの正体なのか?私の目には玉座に座った黒いもやにしか見えない。


 「余の姿が認識できないか…。まぁ、それも仕方があるまい。今の貴様では声が聞こえているだけ十分と言える」


 「………?」


 「あぁ、喋れないのであったな。少し待て」


 『*******』


 何かを唱えた?


 「これで会話ができるぞ」


 傷口が塞がれ、痕も残っていない……治療魔法を使ったのか。だが人間の扱うソレとは遥かに異なる…。


 「…………貴様は何者だ?なぜ私を殺さない」


 「ふむ、何者か…人間らの言葉で表現するのなら『モンスター』が適当であろう。ただし、そこらの低能と同一視されてはたまらぬ。……とは言っても、余も別に上位に位置するモノではないがな」


 この魔力量で上位ではない、だと…!?

 怖い冗談を言ってくれる。なら、普段冒険者組合が相手しているモンスターはコイツでいうところ、どのレベルになるんだ?


 「それにしても、まさかオーグの末裔が余を呼び出すとは…さてさてダレのいたずらであろうな」


 オーグ?一体誰の話をしている……?

 王家にそのような名の人物は存在しない。王家に所縁のある者の名は一から全て記憶している。間違いはない筈だ。だが、コイツは私の名ではなく家名に反応していた。なら……存在がなかったことにされた人物が?


 「オーグとは誰だ!私を殺さなかったのはそいつと関係あるのか?」


 「―――うるさい」


 うっぐ…!!!

 魔力で…身体が、動かない。潰される………。


 「喋るのを許可したのは、単純な気まぐれだ。これ以上騒ぐのであれば、今すぐにでも永遠にその口を閉ざすぞ―――」


 「……っは、ハァハァ」 


 「まったく、オーグとは似ても似つかぬ。こんなのが子孫と知ればあやつも悲しむだろう」


 「っだから…そのオーグとは一体誰の事を言っている。歴代の王族にオーグ・エルヴィスなどという者は存在しないぞ!」


 「存在しない?そんな筈なかろう。余はあやつが王となるのをこの目でしかと見届けたぞ。……貴様の勘違いは置いておくとして、モンスターを召喚しようとした意図を聞いていなかったな。オーグと同じように国の掌握が狙いか?それとも誰か殺したい者でもおるのか」


 「ある人を、守るため…!」


 まだ身体が重く感じる。それだけのプレッシャーをコイツから浴びせられたのか…。


 「守護ときたか…人類の敵であるモンスターを利用して?なるほど…馬鹿げた目標を掲げるところはあやつとそっくりだ。して、その人物は?」


 「…………私の姉上だ」


 「家族愛だとでも言うつもりか?そういうのは好まん。私を利用したいのであれば、もっと面白い力の使い道を示せ」


 召喚後の調教とやらの代わりがおそらくこの交渉なのだろう。これを成功させないと私の未来は閉ざされるのか?

 いや、一度は諦めかけた未来をまだその手に掴めるというのなら……何でもやってみせる。それが姉上の幸せに繋がるのなら!


 「……を、わ…………やる…」


 「もっと声を張り上げろ。聞こえないぞ」


お前の力を手に入れられるのなら―――いくらでもその代償を払ってやる。


 「従え!その力をこの私によこせ!―――お前が求める力の使い道を世界を壊してでも見せてやる!!!」


 たとえそれが姉上以外の全員を苦しめることになろうと…………。


 格上相手に啖呵を切ったところで、私は意識を失った。



うん…姉上至上主義者ここに極まりて…………。

体力が限界に近付いたら5000字オーバーやめます。

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