40. 6日目 組手
ここ最近の話が短すぎたので、長めに書きました。
皆さん、一話につき何字ぐらいが好みですか?もしよろしければ、感想などにて教えていただけると幸いです。
作者自身、読み手側として言うならば長い方が好みです←いらん情報…てか自分がそうなら長く書けよって話なんですけどね
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「よぉ、お前等。俺はイムランだ。これから魔法戦闘学について教えるが―――俺は何分にも口下手でな。身体で覚えてもらうことを推奨している。って訳で、今からお前等の実力を見極めるためにも魔法戦闘組手を行う。組手の相手は誰でも良い。別に性別にも拘る必要はねぇからな」
どうやら彼の授業は下級生達の間でも有名らしく、生徒達は各自の対戦相手をすでに決めていたらしい。私もカイル殿と手合わせするのは前もって決めていたことだしな。
「全員組めたな?じゃあ組手においてのルールを言うぞ。一つ、使用属性は一種のみ。二つ、どちらかが戦闘不能となるまで組手を続ける。三つ、手を抜くな」
おやおや、随分と解りやすい性格の教師だ。褐色肌か……確か戦闘狂が多い民族がいた気もするが、褐色肌の人間なぞこの世に万と存在する。推測の域も出ない事を考えるのは止めにしよう。
「手を抜くな―――とは、王族相手に酷な事を仰る先生ですね。貴族とは忖度を常に考える生き物であることをご存じないのでしょうか」
「そう言ってやるな。それに…良いじゃないか。もし主君が間違った道に進もうとしているのなら、それを止めるのは臣下の役目。その事を思えば学生の頃から王族と対等であると教え込まれるのは悪い事ではない」
「そもそも我が国ではその様な愚王が生まれること自体ありえない話ですが、ライリー様の御言葉とあれば肝に銘じておきましょう」
カイル殿の言う通り、その可能性は万に一つもありはしない。けれど例外というのはいつだって欲深い人間達の思惑を超えて生まれるものだ。最悪の想定はいくらしたって損になりはしないさ。
「おい!順番に組手を見ていくぞ。そこの手前のお前等!最初に見てやるから、とっととコッチに来い!!!」
ハリソン殿にステラ嬢のペアじゃないか。……彼らも男女で組手を行うのか。
「ハリー、よろしくね」
「お手柔らかに頼むよ」
お手柔らかに、というハリソン殿の言葉にイムラン先生の片眉がピクッと動いたが最初の授業ということもあってか怒りはしないようだ。
……命拾いしたな、ハリソン殿。
「それでは、これよりハリソン・クォードとステラ・シノックの両名における魔法戦闘組手を執り行う。二人とも一足一刀の間合いで始めるぞ。……位置についたな?それでは第一組目、試合開始!」
一時間目の授業で二人の魔法は見させてもらったが、ハリソン殿は緻密なコントロールを武器にしている節があったな。一度に放出できる魔力の量に限りがあるとは本人から聞いたが、貴族では多い特徴だし対人想定では弱点と言えるものではない。
反対にステラ嬢は範囲攻撃を得意としていて、悪く言えば力任せな魔法。更に操作技術は特段褒められたレベルではなかった。……さて、どういう試合になるのやら。
「風魔法―――鎌鼬の息吹」
「光魔法―――聖甲」
お互いに魔法を身体に纏ったか。
「光魔法―――フラッシュ!」
「なっ!やっぱりそう来たか」
目くらましの光はどうやら読んでいたみたいだな。ハリソン殿の周囲の風がさらに速く流れ出した。
「読まれているのなんて百も承知!でも、ハリーは爪が甘いのよ」
ステラ嬢は私と話す時とは打って変わった口調で笑顔で風の鎧にその拳を打ち込んでいく。光魔法は自身の肉体の活性化に長けた属性だ。おそらく、あれぐらいの攻撃は痛くもなんともないのだろう。反撃の隙を与えないために彼女の連撃は四方八方から飛んでくるが…そろそろ彼も準備が終わったんじゃないか?
「いくら打撃戦が得意だからって一辺倒なやり方はレディ―としてはしたないよ。風魔法―――霧雨。さらに風魔法―――風雲の追加だよ」
雨かと感じるほどの小さい風の攻撃がステラ嬢の動きを止めるが、防御に徹させないために彼はもう一工夫しているな。
「きゃっ!」
悲鳴とともに彼女の真下から風が渦巻き、一瞬にして空高くにその身体を飛ばしてしまった。組手のために女子生徒は全員動きやすいスラックスに履き替えさせられたが、どうやら正解だったようだ。
―――ハリソン殿はここで決める気か。
「ステラ、もう少し頭を使った戦闘をしようか。せっかく人間として生まれたのなら、その脳を使わない手はないよ?」
風魔法―――暴風。
「だから~~、爪が甘いって何度言わせるの!光魔法―――光弾。あなたの風魔法はコツさえ掴めば消し去れるの忘れた?」
……いや、コツではなく単なる魔力のゴリ押しではないか。光と風で比較するならば、多種多様な攻撃手段を持つ風の方が有利な筈なんだ。
(フフッ。面白いコだ…)
ハリソン殿は風の流れをうまく利用して、攻撃を受け流しているみたいだが防御に意識を割きすぎだ。頭の回転が速いのだろうが、自分の想定外の事が起こると途端に対応力の悪さが目立つな。明らかな経験不足からくる弱点だと言える。つまりは、経験さえ積めばそこそこの魔法使いにはなりそうだ。
反対にステラ嬢は、ハリソン殿の言う通り肉弾戦をメインの戦闘手段として頼りすぎな印象を受ける。彼女の性格とは随分とかけ離れたスタイルだな…。今も勝機と見るや、接近戦を持ち掛けて幼馴染を容赦なく殴り、蹴っている。
「ほらほらハリー!このままじゃ、いつも通り私に負けちゃうよ!」
幼馴染相手だからこその砕けた口調なのか、それとも………。いや、いい。考えるのはよそう。
「そぉぉぉれーーーー!」
「っっぐっへぇ……」
お~強烈なのを腹にもらったな。これは勝負ありだ。
「そこまで!勝者、ステラ・シノック!!!」
なるほどね。お手柔らかにとは、この結末を想定しての言葉だったようだな。魔法を扱う貴族において、力の優劣な単純に性の差で言い表すことはできないから、この結果に驚きはしないが。
(最後の呻き声はどうかと思うぞ)
担架に乗せられる彼を見て、ただただそう思った。




