38. 番外編 作戦開始?
□■□
お茶会会場の内装準備やら茶菓子の用意は全てルーナが終わらせてくれた。いや、私が主催の茶会なのだから手伝うと言ったのだが信じられるか!?善意の言葉に対する彼女の返答を!
『貴女様にお任せすると日が暮れてしまいます。どうか何もせず、ただこれからの茶会でアリア王女に振る話題でも考えておいてください。ライリー様の駄目っぷりをこれ以上披露されても困りますから…』
ここまで侍女に罵倒される王女は世界的に見ても私ぐらいのものではないか?自分で考えて情けなくなるな―――。
「ライリー様、まもなくアリア王女が到着される予定ですので迎えの準備を」
「もう、そのような時間になるのか。」
少し緊張してきたな…いざ姉上とお会いになれるのだと考えると手が汗ばんできたぞ。
「行こうか、ルーナ」
ここからはルーナもよそ行きのスタンスを選ぶようで基本的に私に話しかけることはしないそうだ。まぁ侍女は部屋の隅で控えている事が多いし、それ自体に不満はないのだが普段の様子を知っている私からすると、今も後ろから二歩離れた距離でついてくる彼女に違和感を禁じ得ない。
「余計な事は考えないで下さい」
―――君、実はエスパーだろ?
「馬車が見えてきたな」
会場の入り口へと向かってくる馬車が見えており、その馬車の側面には我が王国の紋章が大きく描かれている。
(顕示欲の表れだな…)
エルヴィス王家の紋章には両翼を広げた鳥が用いられている。今よりも遥か昔の人類が存在せず、神々が実在したとされる時代…一柱の神がこの大陸を治めていたそうで、初代国王はその神が使役していた鳥を基にこの紋章を制作したようだ。ちなみに王族は皆、自分だけの紋章を持っている。もちろんメインは王家の鳥だがその背景の絵は個人の性格をよく表していると思う。
たしか―――マクシミリアン兄上は鳥の背景に交差させた二本の剣、エレノア姉上が太陽、アダルウォルフ兄上が正方形の中にバツ印が組み込まれたもので……アナスタシア姉上は尻尾を咥えた蛇だったか?そしてアリア姉上は鳥の影が付け加えてあったな。
「ライリー様、もう馬車が止まられるようですので―――」
―――っといけない。また考え事をしていたな。ありがとう、ルーナ。
御者が馬車の扉を開けようとしているのを確認して、私は一歩前に出る。
「ようこそ、いらっしゃいました。歓迎いたします。アリア姉上」
踏み台を使って馬車から降りる姉上の目の前で軽く頭を下げ、歓迎の意を伝えるが…
「茶会へのご招待ありがとうございます。ライリー様」
どうやら私が考えていたよりも遥かに……私と姉上との間に生まれた溝は深いようだ。




