36. 番外編 作戦立案
これはライリーがまだ王位継承者として正式発表される前のお話です。
□■□
「……姉上はいつも憂いた表情をされている。どうにか笑った顔が見られないものか」
側室出身の私は、母上の側室内の地位が最底辺であることから他の側室出身の王子、王女達以上に正室出身のアリア姉上と会うことを是とされていない。誰かから直接窘められた訳ではないが、周囲の雰囲気が『アリア様と話すな』という脅迫にも近い言葉を放っている。
けど、異母妹であるとは言え家族なんだ。家族に会えない関係性を良しとするほど私は物分かりの良い子供ではない!!!
「という訳で…『姉上を笑わせよう!えいえいおー!作戦』決行だ!!!」
「ライリー様、そのネーミングセンスに私はどういうリアクションを取るのが…正解なのでしょうか?」
ん?何だって?
まったく……ルーナのこのぼそぼそ物を言う癖は直させた方が良いかもな。会話の中でされると返答に困る。
「それで、どのようなモノをお考えですか?」
「すぐに思いついたのは姉上のお好きな物をプレゼントすることなのだが、如何せん日常会話を姉上とする機会が滅多にないからな。……妹として恥ずかしながら、花が好きなのだろうという予測しか立てられない。他の姉上達であれば、装飾品の類いに目がない事は知っているから贈り物の候補を考えやすいのだが……ふぅ、少しぐらい姉上と話せたらな」
「ライリー様……」
まぁ出来もしない事を考えていても時間を無駄にするだけだ。今はアリア姉上に喜んでもらえる物を探し出さないと!
「にして、花と言っても様々な種類があるしその中から姉上の好みを当てるのは一か八かもイイところ。装飾品は………う~ん、最低限には…という感じだし。食べ物はそれこそ苦手なモノも知らないから論外。大道芸の者達が披露するような魔法でのサプライズとか?いや、でも、姉上にとってはそんな贈り物嫌味でしかないだろう」
馬鹿なのか、私は!
「うっ、ここまで思いつかないとは薄情者と言っても差し支えないのではないか?この体たらくで姉上の妹を名乗ることなど…出来ないではないか」
「………ハァ」
「なっ!溜息を吐くとは何だ!私は真剣に考えているのだぞ!!!」
「やはり私のご主人様はどこか抜けている所がある、という事実を再確認したまでで御座います。ライリー様、貴女様は何故そこまでお悩みになられているのですか?」
話を聞いていたのか、君は!?
「だ、だからっ!姉上の好みが分からないために贈り物が決められないんじゃないかっ!!!私だって、もっと姉上について色々知っていたらここまで悩むような事はしないさ!」
「それですよ、ライリー様。分からないのであれば、知らないのであれば―――本人に確認すれば済むお話ではありませんか」
何だ、そのさも―――当然の事でしょう。これぐらいも考えつかないのですか?という目は……と、そんな事よりも!
「本人への贈り物をその当事者に訊ねてどうする!?贈り物の意味が無いではないか!」
君より年下とはいえ、仮にも主なのだぞ。何度も目の前で溜息を吐くのは止めないか。不敬は今更だからどうでもいいとして、侍女長に見られて怒られるのはルーナだぞ。
「ですから―――好みが分からないのに適当に見繕った物を差し上げたとして、アリア様がお喜びになる見込みはどれくらいあるのですか、と聞いているのです」
そんな事一言も訊ねてないだろ!
「そんな不確かな可能性に賭けるよりも確実な方法を取るべきだと僭越ながらに考えます。それに先程、ライリー様がご自身で仰られていたではないですか―――『話せたら』と。なればこそ、お茶会を開くのはいかがですか?」
―――お茶会?
「お茶会を開けばアリア様とお話出来ますし、会話の中でアリア様のお好きな物やお嫌いの物、それ以外にも趣味の事などお聞きになれるのではないですか?そうすれば、次に贈り物を考える時ここまでお時間を取ることもなくなりますよ」




