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側室出身王女と正室出身王女の世界転覆  作者: 空色 蒼
第一章 貴族院編
33/43

33. 6日目 お手本

余裕があればもう一話投稿しようかと…

□■□



 ようやくレイラの騒動が解決したが、その間の授業を休んでしまったから誰かに教えてもらわないといけないな。順当に考えれば、担任のクラウスだが…そういえばオークション会場で怪我をしていたが、彼は貴族院に来ているだろうか。


 「まぁ治療魔法師に診てもらうのが普通か」


 訳ありの私とは違って、貴族院勤務の彼ならすでに治療をしていると考えていいな。まぁ、もし来ていなかったとしてもクラスメイトの誰かに見せてもらえば問題はない。


 ……結局派閥形成がどのような結果に至ったのかは知らないが、院生活での支障は無いはず。取り敢えずは中立のままかな。


 「おはよう」


 「あっ、お、おはようございます。ライリー様」


 「ごきげんよう、ライリー様」


 教室に入ると初日の時みたいな品定めの視線は無くなったのは感じるが、そのかわりに『久々に見たな、コイツ』みたいな視線が突き刺さる。……主に教壇前で会話をしていた男子生徒諸君から。あ~あやっぱりか。


 「これはこれは、第四王女であられるライリー様ではございませんか。お久しぶりにご尊顔が拝見でき、このカイル・ヴィルド嬉しい限りです」


 「カイル殿、どうか王女と言うのはよしてくれないか。私も君もこの貴族院の生徒であり、立場は同じだ。院の敷地内において、私は王女ではなくただの女子生徒だよ。それと敬語も不要だ」


 カイル・ヴィルド―――この国で、こと魔法に関しては絶大な発言力を誇る魔法省局長の次男であり、侯爵家の中でも上位の家柄である。下位の公爵家と同等の権力を握っているヴィルド家の一員である彼は……マクシミリアン兄上の派閥に属している。彼の兄が兄上と同学年ということもあり、ヴィルド家は兄上に従うことを選んだ。


 ……だから彼は私の事を嫌っており、そして私自身も魔法省が嫌いという水と油の関係だ。ただ私も彼も貴族である以上、ソレを表に出すことはせずお互いに言葉を交わす。


 「お気遣い感謝致します。けれど、いくら院の規則といえどこの国の王族である貴女様を私のような一貴族が同じ立場につくなど…恐れ多い」


 「べつに不敬罪などに問うつもりはないんだがな。まぁ…カイル殿の自由だ。強要するつもりはないさ。それよりも今日の授業の内容を知っているなら教えてもらえるとありがたい。休んでいたせいで知らなくてね」


 ほんと~に嫌なヤツだな。私達の会話を聞いていた生徒達はもう私に敬語無しで接しようとはしないだろう。


 「一限目はクラウス先生でしたね。たしか魔法生物学に関する基礎知識を問う授業をされるそうです」


 「そうか。それは楽しみだ」


 「おはよう、生徒諸君。それでは席につきたまえ。授業を始めよう」


 「では失礼いたします。ライリー様」


 「あぁ」


 ……はぁ、朝から疲れるな。


 「ん?ライリー・エルヴィスか、久々だな」


 「おはようございます、クラウス先生。私事で暫し休ませていただきました」


 「そうか。では―――事前の連絡無しに休んでいた君には、今日の授業を手伝ってもらおうと思うのだがよろしいか?」


 う~ん、これは怒っているな。まぁ、自分が悪いのだし手伝いくらい甘んじて受けよう。


 「もちろんです」


 「よし。それではこれより魔法生物学の授業を始める。今日は君らの知識がどれほどまでのモノかを確認するためにテストを行う。ライリー・エルヴィス、前に」


 「はい」


 皆の視線が集まる中、とりあえず教壇へと向かう。

 階段を下りる途中、カイルと目が合うがすぐに彼の方から視線を外してきた。私も見つめ合いたいわけではないから助かるが、嫌な感じだ。


 「さて、魔法生物と言っても一括りできるものでもない。その理由が解るか?」


 「魔法生物の中にモンスターと呼ばれる部類がいるから―――でしょうか?」


 前方に座っていた女子生徒からの解答にクラウスは満足そうに頷く。


 「その通りだ。モンスターも魔法生物ではあるが、アレラの場合、その凶暴性、内に秘める魔力量、そして人肉を好むという特徴からモンスターと呼称され冒険者組合が討伐をしている。では、そのプロでも討伐するのに入念の準備をするモンスターを君達には狩ってもらう」


 「「「「えっ?」」」」


 ん?クラウス?君は今何と言った?


 「ライリー・エルヴィス。君には討伐のお手本を見せてもらおう。水魔法―――水龍の巣窟」


 巨大な渦が現れると、そこから一匹の水の檻に入れられたモンスターが出てきた。コイツは―――


 「―――黒炎熊ですか」


 「その通りだ。今から結界を張るから君にはここでこの黒炎熊を倒してほしい。その手段は問わない。また倒す条件だが、殺す必要はない。戦闘不能状態となれば良いだろう―――ただし、これは知識を問うテストであることを忘れないように。力任せな戦闘は望んではいないぞ」


 いいな?と問いかけてくる眼差しは私は了解の意を示すために頷き、黒炎熊から一歩だけ後ろに下がる。それを見たクラウスが水の結界を張る詠唱を唱え、他の生徒達が座る場所まで階段を上る。そして振り向き、私がすでに臨戦態勢に入っているのを確認して檻の魔法を解除した。


 「では、始め!!!」


 「水魔法―――双頭の大蛇」


 檻から解放された黒炎熊が飛び出してくると同時に発動させた魔法が、モンスターを襲う。魔法生物の体内には魔石が埋め込まれており、コレに溜められた魔力を使って生物達は魔法を行使する。もちろん魔石の位置はその個体ごとにバラバラで規則性は存在しない。けれど結局の所、この魔石さえ封じ込めてしまえばモンスターなど取るに足らないモノでしかない。…と私は思う。


 だからこの魔法は丁度いいのさ。


 「これで戦闘不能状態に持ち込みました。テストは終了でよろしいですか、先生?」


 水の蛇に捕らえられ、身動きの取れない黒炎熊を前に私は笑顔で生徒達の方へと振り向く。あまりの速さに呆気に取られたのか言葉を失っていたクラウスだったが、私の問い掛けから数十秒後、『あぁ』という返事を貰い、私は自席に戻った。



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