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側室出身王女と正室出身王女の世界転覆  作者: 空色 蒼
第一章 貴族院編
23/43

23. 4日目 理不尽

おかしい…。前回の更新から既に一週間以上が経過している(;^ω^)


と、いうわけでお詫びと言っては何ですが、今回の話は長めに書かせて頂きました!

□■□


 「さてと、私はもう疲れたから寝る。レイラ、君も来なさい。添い寝しよう。」


 「…っは?」


 「あっ、そうだ。すまないが包帯を巻きなおすのを手伝ってくれないか?一人でやるのはなかなか難しくてね」


 もう陽が落ちて、外はすっかり暗くなっている。子供は眠る時間だ。


 「……っけるな!」


 「ん?なんだい?」


 「何でボクがお前と寝なきゃなんないんだって言ったんだ!お前、ボクより頭悪いだろ!?自分を殺したいと考えているヤツと寝ようだなんて!王族はみんな、お前みたいな変人なのか?」


 「あー、どうだろうな。私はまだ常識的な方だとは思うが…」


 「……常識的?…自分を殺して良いって言うヤツが…?」


 うん?何やらボソボソ呟いているようだが、手伝うなら早くしてくれないだろうか。いつまでも上半身を晒していると寒い。


 「そもそも、人間族に復讐しない代わりに自分を…だなんて。あぁ、本当にボクはヤバいヤツに捕まちゃったよ……」


 「お~い!レイラ!聞こえているか?聞こえているなら手伝ってくれ~」


 私が声をかけるとぎこちない動きでベッドへと近づいてくる。


 「フフ、なんでそんな可笑しな歩き方をしているんだい?」


 「お前が来いって命令したんじゃないか!これはボクの意志に反して身体が動いたんだっ!!!」


 なるほど。先程の言葉が命令形になっていたから魔法が契約者の命令として認識したのか。ふむ、たしかにレイラの首輪も光っているし、魔法が働いているようだ。レイラがベッドに腰掛けて、私の背中にその手を触れさせる。


 「そうか、まぁ…別に問題無いな?さて、包帯を巻きなおそう。その後は………うん、間違えたな」


 「―――間違えたって何が?」


 「いくら疲れていようと入浴は済ませないとだな。レイラ、浴室へと案内しよう。おいで」


 先程の商談時の演技のせいでレイラの毛に汚れがついてしまっている。


 「うっ、うわっ!!急に手を引っ張るな!」


 一々反応が可愛いな、レイラは。


 「いいじゃないか。それよりも、ほら。私は今も上半身裸で寒いんだぞ?主の健康には気を遣って欲しいな」


 「お前が勝手に脱いだんだ!ボクは関係ない!!!」


 「それに傷周りの所は一人じゃ洗いづらいんだ。レイラ、一緒に入って洗ってくれ」


 「お前、耳が聞こえてないだろ!ボクの話を無視するな!この人間!!!―――っわ!」


 急に立ち止まった私にぶつからないよう、レイラが慌てて脚を止める。しかし、そんな事には構わず私は彼女に向かって振り返り、視線の高さを合わせるために少しだけ脚を屈める。


 「こ、今度は何だ!」


 「なぁ、レイラ。その『お前』とか『人間』と呼ぶのはやめてくれないか?お前の望まぬ結果になってしまったとはいえ、一応私はお前の主だ。名前を呼ぶのが嫌ならせめて『主様』とか、『ご主人様』とか…他の呼び名に……」


 「イヤだね!何でボクがそんな事に気をつかわなきゃいけないんだ。ましてや、いずれ殺す相手になんか―――」


 その考えも解らなくはないんだがな。外でそう呼んでしまうと周囲からお前が何か言われてしまうのだよ。…と説明したところで納得はしてくれそうにはないか。なら、仕方ない。


 「言い忘れていたが……レイラ?君は奴隷がどの様にして魔力を回復するか知っているだろうか?」


 「……知らないけど、それが何?フツーに今みたいにゴハン食べて、寝れば魔力は回復するんじゃないの?そうじゃなきゃ生きていけない」


 「それは間違いでは無い。種族に問わず、きちんとした食事と睡眠さえ取っていれば魔力は時間の経過に従って自然と回復する。しかし、それはどうやら一般的な場合のみらしい」


 「―――イヤな予感がするのはボクの気のせいだと思えば良いよね?」


 大丈夫。たぶん、そんなに苦ではないと思うぞと心の中で呟いておこう。


 「これはあの男に教えられたんだがな?どうやら奴隷が万が一、命令に従わなかったりした場合契約者の身の安全を守るために、術者は奴隷の保有する魔力に細工が出来るらしい」


 「……サイク?」


 「その一つに魔力回復の条件付けというものがあるんだ。例えば朝までには全回復できるように回復速度の上昇をつけてみたり―――被術者に途轍もない痛みが伴うみたいだが。契約者の血を飲まないと回復が始まらないとか…」


 「いっ!いやいやいやいや。そんなの反則すぎる!!!」


 「残念ながら、本当に出来るみたいだぞ?」


 首と手をぶんぶんと左右に振って、今の話が嘘だと決めつけにかかるレイラを落ち着かせるように、私は彼女の頭に手を置く。そのまま二、三度頭を撫でていると、レイラが少し顔を俯むかせて口を開く。


 「……ボクは傷つけないんじゃなかったのか?」


 「もちろん、傷つけやしないさ。ただ呼び名に関しては直してくれないと困るな。言う事を聞いてくれないか?」


 「……イヤだ。お前はお前だ。ボクがいつか殺してやる人間族のオンナだ!」


 彼女は顔を上げると、目を見開いて大声で宣言する。


 「ボクはお前を『ご主人様』だなんて呼んだりしない!!!」


 やれやれ頑固な子だな。だが、そこまで意志が固いなら手段は選んでいられない。この子が外で虐められないためにも主従関係はしっかりさせねばならないからな。ずる賢い主人で悪いな、レイラ。


 「では、仕方が無い。お前の魔力に条件付けをするとしよう」


 「えっ―――」


 「契約者ライリー・エルヴィスが命ずる。隷属者レイラに条件付けを施す。その条件を満たさない限り、彼女の魔力回復を制限。条件は―――私の身体に一日一回、口づけをすること」


 「はあぁぁぁぁっ!?」


 再び彼女の首輪が光り出した。上手くいったようだな。


 「さぁ、これでレイラの魔力は自然回復が出来なくなった。今日から、どこでも良いから必ず一箇所、私の身体に口づけするんだぞ。あっ、そうそう。それと私の呼び名を変えない限り、これは解除してやらないからそのつもりでいろ」


 「おっ、おっ、お前ホントにやったのかぁぁ!?」


 「あぁ、もう条件付けはしてしまったぞ?ほら、解除して欲しかったら解るだろう?」


 「うっ―――。屈辱だ。こんな、こんなのってナイよ……。クソっ!(あるじ)!これで満足か?満足だよな!じゃあ、とっとと解除しろ!!!」


 「レイラ。それで私が解除すると思ったのか?ふぅ……そんな訳ないだろう」


 「嘘つき!お前さっき言えば解除するって―――」


 「また言った。レイラ、私が要求しているのは日常的に私を『主』と呼ぶことだ。今だけの話じゃないんだよ。…と、いうわけで君がその呼び名を毎日続けられると確証できるまで条件付けの解除はしない!!!さぁ、早く浴室に向かおう。本当にこのままでは風邪を引いてしまう」


 「………。ッチ、この悪魔」


 「悪魔で結構だ。さぁ風呂に入りに行こう!」


□■□


 「ふぅ、気持ちいいなぁ。どうだ、レイラ?熱くないか?」


 「……ブクブク。ん、丁度いい」


 こうして風呂を蕩けきった顔で堪能している姿を見ると、まだまだ幼い子供なんだと思う。にしても、綺麗な毛並みだな。私の髪色とお揃いの黒い尻尾や耳が水を吸って垂れているのが可愛いぞ。


 っん…。傷が沁みるな。昨日よりはマシになったが、まだ治るまでに当分時間が掛かりそうだ。


 「そういえばレイラは獣人なのにお風呂が苦手じゃないんだな?」


 「………」


 「レイラ~。主との会話も大事にしてくれ。でないと、首輪の力を使って命令するぞ?」


 「―――随分と契約者に有利な魔法なんだな」


 私の質問は無視か。まぁ彼女が自発的に質問してくれているんだ。答えてあげるのも主の務めと思おう。


「ん~いや?結構扱いにくい魔法だぞ?そもそも、この契約は魔力量が多い者じゃないと成立しないものだし」


「はっ?……成立しない?」


「あぁ、そうだよ。これだけ被術者に対して多くの事が出来るのは、この魔法にそれだけ逐一魔力をもってかれているからであって……術者にも不利益をもたらしているぞ?さっきも話したように、要求される魔力量が尋常ではないからな。―――奴隷一人と契約できるかどうかも大抵の者は怪しいらしい。多くの者が契約できるか挑戦しているが、契約の準備段階で全魔力を術式にもってかれて死んだヤツもいると聞く。だからオーナーによれば、彼が契約補助をして成立した術者の中だと……多くて三人の奴隷としか契約できなかったみたいだ。」


「はぁ」


「それに、この魔法契約は結べば結ぶほど術者本人の力が弱まる」


「…ソレは……どういうコト?」


 顔を顰めるのも無理はない。私も今日まで知らなかった話だ。


「この魔法に回す魔力量が多すぎて、他の魔法を使える程の魔力が手許に残らないからさ。一人と契約を結んで持ってかれる量は、貴族であっても五、六割いく者もいるらしい。さらに―――奴隷の魔力量によっては、それも左右される。先程三人と契約できた者がいると言ったが、その人物は全て『下級奴隷』と契約したらしい。『上級奴隷』だったら、一人でアウトだったんじゃないか?」


「奴隷の位は魔力量で振り分けられてるの!?それじゃあボクの魔力量は…」


「いや、レイラの場合は言動の悪さのせいだろう。もちろん、魔力量は少ないが、それは今現在の話だ。成長するにつれ、まだ魔力量は増えるだろう。そうすると、私が要求される魔力も多くなるという寸法だ。」


 まぁ、いつまでもこの子と一緒に居るとは思えないがな。


「……長々と話したが、要するに術者に対する弊害も相当なものだということだ」


「ちなみに………ある、あ、主の魔力は今どのぐらい、この魔法に使われているんだ?」


 主と呼ぶのに躊躇いを見せつつ、レイラが自分の首を指差しながら訊ねる。


「う~ん、感覚的なものだが、一割にも満たないぐらいだと思うぞ。―――っぷ。クハハハハッ!落胆する必要はない。私の魔力保有量は王国内随一といっても良いほどだ。決してお前の魔力量が少ない訳ではないのだから気にするな」


 「王国でイチバン……」


 「…………さて、これ以上はのぼせてしまう。レイラ、来なさい。身体を拭いたら髪と尻尾を乾かしてあげよう」


 彼女も十分に身体が温まっていたみたいで、特に反抗することなく風呂から出てくれる。もう夜も更けているし、さっさと部屋に連れて行った方が良さそうだ。


 「行こうか、レイラ」



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