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側室出身王女と正室出身王女の世界転覆  作者: 空色 蒼
第一章 貴族院編
17/43

17. 3日目 避難

□■□



 「グオオオォ!ガルルルゥゥ!!!」


 ほぉ、なかなかの大きさだな。あれが黒炎熊か、実物はかなりのものだな。


 「お、おい。…なんで鎖に繋がれていないんだ?」


 まぁ、ソイツは繋がれていないだろうな。なにせ―――


 「―――皆さん!お逃げください!!!あれは商品ではありません!いいですか、あれは商品ではありません!さぁ早く!!!!!!」


 ハハッ、責任者の彼はかなり慌てているな。それもそうか、黒炎熊の雌は雄よりも凶暴で獰猛なことで有名だ。


 だが、まぁ…誰一人としてこの光景を予見していた者はいないのか。母親の子を守る力というのは凄いんだぞ。それこそ自らの危険を顧みずに強敵に立ち向かうものもいるぐらいにな。オークション会場に子供を助けに来るぐらい可能性として考えていなかったのだろうか?


 「おい!押すな!!!」

 「早く行けよ!このままじゃ殺されちまう!」


 やれやれ、自分の命が惜しいのは解るが、やはり見ていて気持ちの良いものではないな。だが、私もこの姿でアレと戦うわけにはいかないし、ここはこの流れにのって逃げるとしよう。一応クラウス達もいることだし、どうにかなるだろう。


 「水魔法―――海流の渦!さぁ、君達も力を貸すんだ!このまま手数で押し切るぞ!」


 「おぉ!いくぜ~風魔法―――鎌鼬(かまいたち)!」


 「氷魔法―――白銀の吹雪!」

 

 なるほどクラウスは水魔法の使い手か。これなら黒炎熊との相性も悪くないし、相手を会場外にまでは追い出せるだろう。他の者達も院に勤めているだけあって、魔法のレベルも低くない。


 「グルアァァア!!!」


 黒炎熊の雄叫びと共に、背後に魔法陣が二つ浮かび上がった。さすがに防戦一方でやられはしないか…。


 (ふむ、折角だし戦いを鑑賞するか。そうそうモンスターと出会うこともないだろうし…)


 「幻影魔法―――夢幻」


 さぁ、これで姿は他の者達から見えなくなったわけだ。思う存分特等席で見学させてもらうとしようじゃないか。背後にいた客から「はっ!?」なんて声が聞こえた気がするが無視だ、無視。


 さて、魔法陣から黒い炎が噴き出している訳なんだが、クラウス達はどう防ぐのだろうか。


 「「複合魔法―――雹風の守護壁!!!」」


 おぉ!!!風と氷の複合魔法か!初めて見たぞ!!!残って正解だったな~なかなかお目にかかれるものじゃないぞ!さぁ、相手に隙が出来たのだから、当然。


 「クラウス、今の内だ!」


 「あぁ。水魔法―――海神の槍!!!」


 あの攻撃魔法で黒炎熊を仕留めるつもりか。タイミングとしては完璧だが、甘いな。


 「ガアアアァァウウウ!!!」


 再び魔法陣が出現し、今度は黒炎の壁が目の前に出されたとともにあの鋭い鉤づめでクラウスを攻撃する。クラウスは咄嗟に防御魔法を展開するも、あれでは強度が弱い。案の定そのまま魔法ごと攻撃を浴びて、顔の前に交差させていた両腕からは大量出血だ。


 「クラウス!?」


 「おい!大丈夫か!!!」


 苦悶の表情だな。あれではもう戦闘の続行は厳しいか……。他二人は戦い慣れをしている様子がないし、このままだと死ぬか。

 まぁ、強度が足りていようと物理攻撃を防ぐのに水魔法は扱いにくいからな、遅かれ早かれ攻撃は受けていただろう。


 「グオオォォォ!ガルルゥゥ!!!」


 うん?どうやら子供を探しに行くみたいだな。まったく…戦闘が長引いているせいで、かなり火の手が上がっている。これはもう近隣の建物にも燃え移っている頃だろうか。


 「クオゥン!クオオオォォ!!!」


 「ガォオオン!!ガオ!」


 さて感動の母娘の再開だが、この火で子熊を閉じ込めていた檻が変形でもしたのか、自力で脱出していたようで五分と経たずに母熊の許に来たな。


 「不味いぞ、クラウス!ここはもう逃げよう!その出血量じゃ、すぐに倒れちまう!」


 「それにあの黒炎熊も、子供を取り戻して落ち着いている。逃げるなら今だ!!!」


 そうだ、そうだ。早く逃げたまえ~。水魔法で熱さを軽減させているとはいえ、この燃え盛る会場にいつまでも居たくはないぞ。


 「くっ!仕方ない…」


 まぁ研究職とはいえ奮闘した方だろう。クラウスを支えながら出口へと向かう二人も良いサポートをしていたし、及第点はもらえるさ。


 「さて、ようやくだな。はやく黒鳥を回収して撤収だ」


 そう忘れてはいけないのは、私が競り落とした黒鳥のことだ。あれを目当てに今日はここに足を運んだのだから、連れ帰らないと。


 「……なるほど。流石は会場責任者というところか」


 商品は全て避難させたようで、商品の待機場所と思われる大部屋には何も残ってはいなかった。一つの例外を除いて。


 「―――なぜ、君らは残されているんだい?」


 大きな檻に閉じ込められた黒鳥たちが鳴き声をあげて、こちらをみてくる。


 「……ハァ、そんなに価値が低いのか、君たちは」


 嘆いていても仕方ないし、取り敢えず連れ帰るが…。


 「納得いかないなぁ…」



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