18. 3日目 救助
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「やれやれ、もう崩れ落ちそうじゃないか」
外に無事脱出した私だが、オークション会場は見ての通り炎に包まれている。少し離れた場所には集団が形成されている。どうやら他の客達も避難が完了しているようで、自分達が購入した商品の受け取りをしている。
(そんなに商品が大事なら、なぜ私のモノも避難させてくれなかったんだ?ひどいじゃないか…)
だが商人魂とは逞しいものだな。あれだけの業火の中、打ち合わせもなく商品を全て運び出すなんて並大抵の度胸がないと出来ないだろう。
それにしても、やはり火は他の建物にも移ってしまっているみたいだな。
「おい!上級のやつらは全員必ず外に出せ!急げ!!!」
(こちらでも避難作業か…)
「早く出ろ、お前等!死にたいのか!!!」
「急がせろ!こいつらを失ったら俺らがオーナーに殺されるぞ!!!」
性急になるのは解るが、何故こんなにも彼らは余裕のない表情を見せているんだ?まだ火が完全に燃え移った訳でもなく、時間の猶予は多少残されているというのに…。まぁ、この裏町は平民しか住んでいないから水魔法の使い手なんて居るはずもないし、消火作業は早々に諦めているのだと思うが…。
(この場で唯一の水魔法が使えるクラウスは先程の戦闘でリタイアだしな)
私も使えない訳じゃないが、クラウス達に私がここに居たことがバレるのは避けたいところでね。人的被害が出ないようなら見過ごす選択をさせてもらうよ。
「あとはあのじゃじゃ馬だけだ!」
「アイツは放っておけ!どうせ今後も使い道はねぇだろ!!!それよりもこいつらが逃げ出さない内に本店に移動するぞ!」
(おいおい…まだ中に人がいるのか!?)
彼らの会話に驚いると、その彼らは馬車に乗ってすぐにどこかに行ってしまった。まさかその様な行動を取られるとは取り残された人物は災難だな。
(まぁ要するに…捨てられたな)
『じゃじゃ馬』と呼称していたし、それだけ扱いづらい人物なのだろうけど…それでもなぁ。流石に目の前で見殺しにされている者を放っておくのは後々嫌な気持ちになりそうだから勘弁願いたい。
「仕方ないか…」
外に出てからも幻影魔法は解除せず、あらかじめ中で黒鳥たちも闇魔法で収納しておいたから、このまま行動に移っても問題はない。
「なら、救出作戦といこうではないか」
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「思っていたよりも、煙が充満しているな。おーい、誰かいないかー。というより居るのは解っているから返事をしてくれー。お前を助けに来たんだ!」
風魔法で室内の煙を外に流しつつ、取り残された者に応答を呼びかける。建物は二階建てで捜索範囲が広いから、できれば声を出してくれると時間をかけずに済むんだが。それにしても、あれだけの人数をどこに住まわせていたんだか…。それに『上級のやつら』と言っていたしここは一体何の店なんだ?
「おーい聞こえないのか!返事をしろ!」
火事の煙で呼吸困難になっている恐れがあるから、急いで煙は外に出したんだが遅かったか…?あーこんな時探知系統の魔法が使えればよかったんだがな。
「お前を助けに来た!だから、返事を―――」
「……ぇ」
「どこだ!どこにいる!!!」
微かだが確かに声が聞こえる。どこにいる!?建物の崩壊まで猶予が無くなってきている、これで見つけるしかない。
「……て!」
クソ!火や風の音で声が掻き消されている。声しか今は頼りになる手掛かりがないというのに。
(この火の中でまだ息が出来ているということは……地下か?)
急いで一階へと駆け下り、全ての部屋の床を見る。どこも火の手が上がっていて私の行く手を阻んでくるが、そんなものは関係ない。これしきのことで、やられるような柔な鍛え方はされてはいない!
(ここはどうだ!?)
奥にある小さな小部屋を蹴り破ると、そこの床には何やら取っ手がついていた。
「ここか?ここにいるんだな!?」
「た、たすけて……」
ようやく見つけたぞ。手間を取らせおって―――。
「あぁ、安心しろ。私はお前を見捨てやしない」
火によって炙られた金属の取っ手に落ちていた棒を引っかけて床の扉を開ける。すると眼前には階段があり、さらに下へと続いているようで急いで降りてみる。随分と適当な造りのようで壁面の石はずさんに積まれていて、これではいつ崩れて生き埋めにされるか解ったものではない。階段はすぐに終わり、目の前にはこれまた大きな檻が置かれている。
その中には獣人族と見られる少女が倒れており、すぐに駆け付け檻を壊して中へと入る。ハッ、ハッ、と舌を出しながら呼吸しているところを見ると、どうやらここもうっすらとだが煙が流れ込んでいたらしい。呼吸が安定せず、浅い呼吸ばかりを繰り返している。
「待たせたな。今ここから出してやる」
「おっ、お前が…?」
「お前とは失礼なやつだ。なるほど『じゃじゃ馬』というのは評判通りみたいだな」
この状況の中で私を睨みつけてくるとは面白いやつだな。だが、ここで話を弾ませるつもりは毛頭ないぞ。
「ほら、急ぐぞ!折角お前を救けに来たというのに脱出が遅れてしまっては元も子もないだろう?さぁ……しっかり掴まっていろ、このじゃじゃ馬娘」
「う…うるさ……」
ほらな…だから急ぐと言ったのに。気絶したやつは完全に力が抜けてしまうから、お前をお姫様抱っこしている私にかかる体重がさらに重くなるじゃないか。
「まったく人助けも楽ではないな…」




