11. ルーナSide① 不安
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「ライリー様も貴族院に通われる御年になられてしまったわ…」
はぁ、いつもは私や他の先輩方に迷惑をかける御方ですが、いらっしゃられないと、それはそれで寂しいものですね。これからは、貴族院があるセオドア区の別宅に一人で住まわれる予定ですし。―――と言うか!王女が何故侍女一人お傍に付けずに過ごそうとしているのですかね!?そして何故王もそれを許可されてしまうのですか!私はもう不思議を通り越して疑念しか湧かないのですが?
「ねぇ――――――するの?」
「い―――でも…」
曲がり角の先で誰かが居るみたいですね。掃除をさぼっているところを侍女長に見つかりでもしたら怒られてしまいますよ~。なんて、そうそうバレる事でもありませんが。何を話しているのか気になりますし、ちょっと盗み聞きしましょうか。
布巾で磨いていた調度品を元の位置にゆっくりと戻してから、背を壁につけるようにして曲がり角まで足を進める。
周囲を警戒しつつ、そっと右側を覗いてみるとそこには案の定二人の侍女が掃除用具を片手に何やら話している。
「ライリー様が十三になられて、もう継承戦も始まってしまったわ。私達もどの御方につくか考えておかないと不味いわよね?」
「えぇ…。けれど継承戦において、その結果に左右されるのは上級貴族達であって、私達にはあまり関係の無い話よ」
「それはそうだけど…。もしもの場合を考えてのことよ。あのマクシミリアン様が王位に就かれたら、きっと他の継承者側に立っていた人達、全員に処罰を下されると思うわ。そんなの私いやよ!」
なるほど。確かにその可能性は否定し切れません。現国王に似てマクシミリアン様は残酷無慈悲な一面をお持ちですから。
……それにしても、その様な事は考えてもみなかったですね。皆さん、てっきり自分がお仕えしている主を応援するものだと思っていましたが、そうでもないんですね。まぁ、元々どの御方の配属になるかは全員その時の雇用人数であったり、状況であったりで侍女長が全て決められてしまいますからね。斯くいう私も別にライリー様の侍女になりたい訳ではありませんでしたし―――なんなら配属当初は嫌がっていました。
ライリー様には内緒です。
「そんな事言ったらマクシミリアン様以外につけないじゃない。…でも、確かにそうかもね。取り敢えず私が思うにライリー様につくのは駄目ね。危険がすぎるわ」
「えぇ、そうね」
(―――はい?今なんて仰いました?ライリー様では駄目?何故?)
「あの御方は幼すぎるわ。それなのに継承候補者の中でも最大の魔力量をお持ちなんていうから、他の王子達からの警戒が尋常じゃないのよね。エレノア王女なんて完全に目の敵にされているし」
「他の御方達に比べて圧倒的な時間不足、準備不足。おそらく最初に継承戦を脱落されるのはライリー様でしょうね」
コンッ。
「そ、それじゃあ、ここの掃除は終わったから東棟の方に行きましょうか」
「っそうね!そうしましょう!!」
想像もしていなかった言葉に驚いて、壁に肘をぶつけてしまいましたが、こっちに向かって来られなくて良かったです。二人が去っていったので曲がり角から出て、彼女たちの先程の言葉を脳内で反芻します。
"ライリー様では駄目"
"最初に脱落される"
「ライリー様。貴女は…このようなところで終わる人間なのですか?」




