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青春空手道部物語 ~悠久の拳~ 第2部  作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
第4章 大嵐の大激闘! 拳士の闘志に限界なし!
79/106

2-79、競技二日目も終わり・・・・・・

   びゅごおおぉぉぉおおおおおおおおおおおおっ

   ずううおおおおおおおおぉーーーーーーーーーーーーーっ


「さ、先生方、また嵐が強まってきましたから、乗って下さい」

「はっはっは! いや、すまんなぁ。大したことしてないのに、儂の家まで送ってくれるとは、気が利いとるさぁ! よろしく頼みますよぉ!」

「ほっほほぉ。なかなか楽しい時間だったねぇ。孫の試合や、元気な子ども達のエネルギーも見られたし、面白かったさぁ」


 大会の係員が、嘉手本とキヨを自宅まで送っていくらしい。

 島袋は大会副審判長のため、再びブレザーに着替えて会場に残った。矢木はこの大嵐の中、自宅が近いからとそのまま走って帰ってしまったらしい。嵐の風もものともせず、まるで鉄人のように。


   ぶー ぶろろろろぉーーーー  ぶぶーーーーーー


「いやぁ、しかし、嘉手本先生の鎌の演武もすごかったですし、東恩納先生のサンチンも、ものすごかったですねぇ! お弟子さんやお孫さんの活躍も、いい試合だったようで、何よりですよ。今日は演武、本当にありがとうございました」

「ほっほほぉ。いやいや、こちらこそぉ。わしらの演武から、子ども達が何か一つでも感じ取ってくれれば、それでいいんさぁ! わしの孫、東恩納美鈴と東恩納・・・・・・じゃなかった、末永小笹はのぅ、いま、ともに十七歳という若い年齢で、伝統的な空手の基礎を持った上で競技に打ち込んでおる」

「いやぁ、素晴らしいことです、本当に」

「ほっほほぉ。わしらが歩んできた空手とは違い、今は時代が変わって、空手の歩み方も人それぞれ。でも、根本はいつの時代も変わらんと思うねぇ・・・・・・」

「まったくですなぁー。儂の弟子、糸城光羽と、東恩納先生の孫の小笹チャンが当たったときは、いやぁ、年甲斐もなくドキドキしましたなぁー。わあっはっはっは!」

「インターハイっちゅうもんは、明日が最終日なんねぇ? みんな、全力で学び、相手に感謝して、それぞれが行き着くところまで頑張って欲しいさぁー」


   ぶろろろろぉーーーー  ぶろろろろぉーーーー


 車内では、嘉手本とキヨの空手談義が続く。嵐で大きく揺れるサトウキビ畑の合間を抜け、車は走っていく。エンジン音は、車が小さくなるほど、聞こえなくなっていった。


   ワアアアアアアアアアアアアアアアー  ワアアアアアアアアアアアアアアアー

   オオオオオオオオオオオオッ  ザワザワザワザワザワザワザワザワ


「「「「「 二斗先輩、ナイス中段だぁ! ファイ! ファイ! ファイ! 」」」」」

「「「「「 宮崎第二ファイオーッ! ファイオーッ! いけいけ東国原ぅ! 」」」」」


 Dコート最終試合。二斗が宮崎県代表 宮崎第二学園の東国原選手と対戦中。

 スコアは現在、7対8で二斗が1ポイントリード。相手の見た目は、色白の二斗と言った感じで、両者まったく同じタイプの組手。試合時間はもうあと九秒しかない。


「うううぅるるおおおああっしゃぁぁーーいっ!」

「ずぅぅどどどどえええぇやあああしゃぁいっ!」


   ドッゴォン!  ドバキャァッ!  ドスウンッ!  ズシンッ ドッゴンッ!


「頑張れ二斗ーっ! 私らも等星も堀庭も、みんな応援してるよーっ!」

「ファイト二斗君! がんばれーっ! いっけぇーっ! あと僅かだよーっ!」

「(ぬぅぅ・・・・・・。九州の名門 宮崎第二、さすがだ・・・・・・。オレにパワー負けしないとは・・・・・・)」

「(日新学院の二斗龍矢! ・・・・・・むむぅぅ! ・・・・・・どげんして逆転すりゃよかと・・・・・・)」


   ドパァンドドンドパァン!  ズドオンッ!  ドゴオンッ!


「うるるおおぉあっしゃぁーーーいっ!」


   シュバッ  ズドバシャアァァッ!


「「「「「 二斗先輩、ナイス中段だぁ! ナイス中段だぁ! ナイス中段だぁ! 」」」」」

「止め! 青、中段蹴り、技有り!」


   ワアアアアアアアアアアアアアアアー  ワアアアアアアアアアアアアアアアー


   ~~~ ピー ピピーッ ~~~


「止め! 10対7。青の、勝ちっ!」


   ワアアアアアアアアアアアアアアアー  パチパチパチパチパチパチパチパチ!


 二斗も、何とか接戦を制して最終日の四回戦へと勝ち上がった。

 沖縄インターハイ空手道競技は、明日の三日目が最終日。いよいよ、激闘もクライマックス間近だ。

 明日は、男女の個人形と個人組手が四回戦からスタート。決勝戦は、団体組手とともに、大会の最後に行われる。

 明日の注目試合では、次のような対戦が行われる。個人形については、男子は残念ながら撃沈のため残っていないが、女子は更なる熾烈な争いだ。

 Eコートは、京都府 花蝶薫風女子 朝香舞子 対 山梨県 山梨学舎大付属 青田ひかり。

 次に、栃木県 県立柏沼 森畑菜美 対 沖縄県 首里琉球学院 新城巳波 の激突。

 Fコートでは、沖縄県 県立うるま金城 東恩納美鈴 対 大阪府 西大阪愛栄 清水希乃が激突。

 Hコートは、 栃木県 海月女学院 末永小笹 対 福井県 若狭海嶺 緑川愛純の対戦だ。

 続いて個人組手。まずは男子のAコート、前年度王者 瀬田谷学堂 水城龍馬 対 岡山県 おかやま白陽 国本億人。

 次に、栃木県 県立柏沼 田村尚久 対 福岡県 福岡天満学園 須藤光則が激突。

 Dコートでは、大阪府 なにわ樫原 朝香光太郎 対 岡山県 おかやま白陽 岬行光。

 そして、熊本県 県立球磨之原 鍋島勧 対 栃木県 日新学院 二斗龍矢がぶつかる。

 女子はEコートにて、前年度女王 等星女子 朝香朋子 対 北海道 学法ラベンダー園 ミランダ野沢シーナが激突。

 そして長野県 松大学園 花田世里奈 対 栃木県 県立柏沼 川田真波の対戦が続く。

 Hコートの試合は、栃木県 海月女学院 末永小笹 対 佐賀県 鎮西学院佐賀北星 森宮由希亜の対戦。

 次に茨城県 東嶺大馬久 日下田頼子 対 京都府 花蝶薫風女子 朝香舞子の対戦だ。

 そして団体組手の決勝、男子が瀬田谷学堂 対 福岡天満学園。女子が花蝶薫風女子 対 学法ラベンダー園といった組み合わせだ。

 どのコートも、目が離せない戦いばかり。柏沼高校男子メンバーは、団体組手こそ瀬田谷学堂に敗れてしまったが、最終日もめいっぱい栃木県勢の応援をすることだろう。


「いよいよ・・・・・・明日で僕たちのインターハイもおしまいか。なんだか激戦ばかりで、実感湧かないや」

「個人戦、組手は栃木県勢が全員勝ち残っているからな。むしろ、女子なんかは今日の三回戦の相手が、かなりの難所だったようにおれには見えた。ま、明日も油断できないがな」


 外はまだまだ嵐が止まない。会場近くの海辺からは、大荒れの波音が聞こえてくる。

 この嵐が止んで、晴れ間が見えたとき、選手たちの心の中はどうなっているのだろう。


   * * * * *


   ~~~二日目の日程が終了しました。明日、最終日の競技は・・・・・・~~~


 みな荷物を持ち、宿に戻る準備をした。激動の二日目も、競技日程が終了。

 柏沼メンバーにとっては団体戦に個人戦に、ものすごい試合ばかりだった。ドキドキもしたし、大変だったし、笑いや涙もあったし、目まぐるしい一日だったことだろう。


「いやぁー、すごい試合ばかりだった。明日も実に楽しみだ。先生、空手やりたくなってきちゃったほどだ! 男子団体は残念だったけど、あの相手に善戦できたのは、自信持っていいと思うぞぉ! みんな、今日はしっかり休んで、明日に備えようね!」

「「「「「 はいっ! 」」」」」


 早川先生から今日の締めの言葉があり、メンバーはバスに乗る準備をしてエントランスホールで待っていた。

 島袋がまだ、明日の確認があるとかで、審判控え室から出てこない。それを待っている。


「あー・・・・・・。きっつかったなぁー・・・・・・。いまでもここ、痛いよぉー。きっつい試合だったなぁ、三回戦・・・・・・」

「わー・・・・・・川田せんぱい、脇腹、だいじなんですかぁ?」

「やたらそこ集中されてたもんねぇ、真波。しかし、小笹がやった宮城の岡島玲菜も、真波がやった大阪の藤崎さつきも、闘志というか執念がものすごかったね!」

「いやー・・・・・・。あの試合は、思い出したくないわ・・・・・・。そういえばアタシ、全部は見てないけど、小笹が当たったあの弁当の子も、あれほど接戦になるなんてねぇ!」

「くすっ。・・・・・・ちょぉーっと、ワタシも正直、焦ったかなぁーっ。インターハイ特有の、なぁんて言うんですかねぇ、独特の闘気みたいのがプラスされてたんじゃないかなー」

「あの子、だいじかなー? 小笹が手首砕いたみたいだけど・・・・・・」

「アタシが当たった大阪女、藤崎さつきも、脇腹だいじだったかなぁ? けっこう、ムキになって蹴り込んじゃったしなぁ・・・・・・」


   がやがやがやがやがや がやがやがやがや


 柏沼メンバーと小笹がまとまって話し込んでいると、別な学校がいくつか目の前を過ぎ、大型バスに次々と乗り込んでいった。そしてまた、何校も廊下を歩いてくる。


   ざっ  ざっ  ざっ  ざっ  ざっ・・・・・・

   ざすっ  ざすっ  ざざっ  ざざっ・・・・・・


「・・・・・・柏沼高校、まだいたのか・・・・・・。オレたちは先に行くぞ? ・・・・・・監督も待たせてるんだ・・・・・・。早く行かないと、怒られちゃう・・・・・・」

「二斗ぉ。今日はおつかれぇ。いま、俺らは運転手待ちだねぇー。明日も個人戦、お互いに頑張ろうぜぇ?」

「・・・・・・そうだな。・・・・・・田村、よく癒やした方がいいぞ・・・・・・」

「そうだねぇー。ちょぉーっと、痛いんだよねぇー」

「・・・・・・。お互い、大変だな。・・・・・・よし! 全員揃ったな? 畝松監督がお待ちだ! バスに急ぐぞ! オレに続け!」

「「「「「 うおおおぉーーーっす! 」」」」」


 日新学院メンバーは大型バス二台に乗り込み、ホテルへ向かう。窓から二斗は、そっと田村たちに指であいさつをしていった。


   ぺたり  ぺたり  ぺたり  ぺたり・・・・・・

   ざっ  ざっ  ざっ  ざっ  ざっ  ざっ・・・・・・


「あーっ! 東北ムスメ!」

「あら、噂をすれば・・・・・・藤崎さつきも!」


 続いて、東北商大高校と西大阪愛栄高校が歩いてきた。どちらも大人数を従える部のためか、エントランスホールはものすごい人数に。なにげに、その中に紛れて堀庭もいる。


「・・・・・・くらげ・・・・・・いんや、末永小笹! おめ、まんだ宿さ帰んねぇのけ? はぁ、あんまし遅ぐなっと、ばけもんにやられっちまぁ! はぁ、おらたち、宿さ行ぐかんな?」

「バス待ってるの。くすっ。ばけもんって、何よぉッ? てか・・・・・・手首や拳ー・・・・・・」

「んあ? 何ともねぇっちゃ、こんぐれぇ! 空手やってりゃ、はぁ、あだりめだんべ!」


 岡島は、包帯が巻かれて添え木で固定された手首を振り回し、小笹に笑いながら話している。


「おめ、パンフレットさ見たら、はぁ、まんだ二年なんだな? おらは三年だから、はぁ、大会で当だっごたぁ、もうねえっちゃ。・・・・・・でも、いづか、次はまげねっちゃ!」

「あははっ! ワタシも、もっと強くなるよぉッ! Ju me battrai encore un jour !!」

「はぁ? んだ、おめ! 津軽弁も話せんのか? おったまげたなぁ!」

「つがる? ちがうよぉーっ! ま、いいや。・・・・・・強かったよぉ、東北のお姉様ッ!」

「ふふふ! ・・・・・・じゃ、まだな! 末永小笹!」


 岡島は東北商大高校のメンバーを引き連れ、小笹や柏沼メンバーに屈託のない笑顔を見せ、会場から出ていった。

 小笹は、バスに乗り込んでいく岡島に向かって、いつの間にか軽く会釈をしている。


「・・・・・・ほんでぇ、きーてきーて! あの時、こーして、こうっ! せや! こうやった! そん時にまぁ、この川田真波が、あーしてこーして、ウチを蹴りよったんや! そんでな、その蹴りがまた、ごっつぅ重いねん! いやー、効いた効いたーっ! な! あんた、あの時無意識に蹴ったんやろ? な? ほんま、えらいこっちゃで! ウチのあの突きで弱ってて、あんなことやるなんて、根性すっごいわぁ! えーか? 西大阪愛栄は浪速のど根性の塊みたいなチームや! な? せやろお前ら? そー思わんかぁ? いっやぁ、それなのにまぁ、この川田真波のど根性はウチを超えてもーた! ・・・・・・ほんでぇ、あーでこーで・・・・・・ぴーちくぱーちく・・・・・・うんたらかんたら・・・・・・」


 小笹と岡島が爽やかにすぱっと分かれたのに、こちらは未だに藤崎のマシンガントークの真っ最中。

 神長と中村は、エントランスのイスで、うとうとして寝そうだ。川田はもう、藤崎のトークに意識が飛びそうになっていた。


「あは・・・・・・。ねぇ、藤崎さつきぃ、アタシ、わかったから・・・・・・。うん、あんたは強かった! もー、それでいいでしょーっ? 終わりにしよーよぉーっ・・・・・・」

「なんでやねん! ウチは、あんたともっと話してみたいんや! だってあんた、ほんまにすごいんやで? ナショナルチーム、一緒に受けたらどーや? そーすれば・・・・・・」

「藤崎主将、外で監督やコーチがお待ちですよ? バスも待っとります。そろそろ・・・・・・」

「なんやて! ホテルのメシに遅れてまうやん! じゃ、もう行くわ。またな、柏沼高校!」


 喋るだけ喋って、藤崎は西大阪愛栄高校の後輩たちを引き連れて、とっととバスでホテルに向かっていった。


「はぁー・・・・・・。試合より疲れたぁー・・・・・・」

「お疲れさん、真波! ほい。これ飲めよ」

「ありがと井上。・・・・・・あ! ぶどうツブツブだぁ!」

「お前、これ、好きだろ?」

「うん! わかってんじゃん! ありがとね! ・・・・・・はぁーっ・・・・・・。長話なんだもんなぁ、藤崎さつき・・・・・・」


 川田は、井上にもらった飲み物を飲みながら、再び苦笑いで床にへたりこんだ。

 前原は起きていたが、あまりの話の長さに、中村や神長は寝てしまっていた。

 なお、どさくさ紛れに堀庭も川田たちに何度もあいさつして去っていったらしいが、気づかれていなかったようだ。気づいていたのは阿部と内山だけだったらしい。


「ばっかものぉぉぉぉっ! 情け無いぃぃっ! 恥を知れ、恥をーーっ!」


   ピシャアンッ!  ピシャアンッッ!


「「「「「 監督! 申し訳ありません! 」」」」」


 そしてまた、廊下の奥からものすごい怒声と、強く乾いた音が響く。


「「「「「 な、なんだぁ! なんだなんだ! 」」」」」


 堀庭があれほど何度もあいさつして声かけてたのに、この声には柏沼メンバーはみな即座に反応。

 聞き慣れた怒声。見慣れた光景。ほとんどの学校が会場を後にしていたが、いくつか残っているうちのひとつは、等星女子高。その瀧本熊夫監督の嗄れた怒声が響き渡っていた。


「お前たちのように、甘く弱い者は、等星女子高の空手ではないぃっ! なんだ、あのザマは! 昨年も花蝶薫風女子に負けたと思ったら、今年は学法ラベンダー園だと? そんなどこの馬の骨かもわからん学校にまで黒星をつけられおって! 貴様らは、わが等星の恥世代だと思え! いいか!」


 火山が噴火するかのごとき、瀧本監督の憤怒の表情。

 朝香、崎岡、大澤、矢萩、川島のレギュラー五人は軍隊式に立たされ、視線を落として、ただ黙っている。


「崎岡ァァッ!」

「・・・・・・はい」

「貴様、等星女子高の主将として、この失態をどう考えておるっ!」

「申し訳ありません。・・・・・・力及ばず、等星を全国一に導けませんでした・・・・・・」

「儂がお前たちをわが等星女子高にどんな想いで迎えたと思う! そしてお前たちは、等星の選手として全国制覇、全国連覇を掲げたんじゃなかったのかぁッ! こんな失態を招いておいて、たるんどるっ! たるみすぎとるっ! 稽古量を増やし、もっと自分を追い詰めて磨き上げ直しだ! 等星に負けは許されん! 朝香! そうだろうっ!」

「・・・・・・。・・・・・・はい。・・・・・・負けは、許されません。特に私は・・・・・・」

「宿に着いたら、徹底的に反省だ! 嵐など関係ないっ! 外で精神を叩き直してやる!」


 インターハイ女子団体三位だって、一般的なチームから見ればものすごい実績だ。しかし、等星ほどの名門では、頂点以外はみな同じ「敗け」と言うことなのだろう。


「うひー。相変わらず等星は、軍隊みたいだねぇー。監督がいる時といない時で、あいつら、別人みたいじゃんかぁ。朝香朋子までも、張り詰めた表情だねぇ。ま、しゃーないか」

「田村・・・・・・。笑ってる場合じゃないよ。アタシ、さっきの個人組手は、朝香に助けられたようなもんだ。・・・・・・アタシ、あの監督にちょっと言ってくる!」

「ま、待ってよ川田さん! だめだって! ここで揉めちゃ、後々まずいよぉ!」

「そうだよ真波。しゃーないよ。あれが等星なんだから。彼女らも覚悟の上だよ・・・・・・」

「(朝香。あんたは負けらんないんだものね・・・・・・。たるんでなんかないのに・・・・・・)」


 瀧本監督に連れられてゆく等星女子メンバーを、複雑そうな表情で見つめる川田。

 その姿を見つめる田村は、静かに何か考えているような感じだった。


「いやー。待たせて悪かったさぁ! じゃ、民宿まで、みんな戻ろうかぁ」


 そうしている中、島袋が審判控え室から戻り、柏沼メンバーと小笹はバスに乗って宿へ戻る。

 道中、川田は窓の外を見たまま終始無言。田村はそれを、静かに黙って横目で見ていた。


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