表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青春空手道部物語 ~悠久の拳~ 第2部  作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
第4章 大嵐の大激闘! 拳士の闘志に限界なし!
54/106

2-54、マシンガントーク

   ~~~低気圧により、今日の沖縄諸島は風が強く、暴風波浪注意報がー・・・・・・~~~


   びゅごおおおおおおおおおおおおお!

   ずおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーおおおおおおおおお!

   ざざぁぁぁぁぁーーーーっ  ざざぁぁぁぁぁーーーーっ


 叩きつけるような大雨。島を突っ切り、一気に吹き荒れる強風。

 昨日までとはうってかわって、今朝はものすごい荒れた天気。気象庁からの警報も発表されているほどらしい。


   ガタガタガガガガガガ  ガタガタン ガガガガガッ


 風が、民宿の窓枠を思い切り叩く。家屋全体が揺れているかのような錯覚に陥る。


「ねー、おばーちゃぁーん。ボロだからぁ、窓ごと飛ばされちゃうよぉーッ? あははっ!」

「まったく、ボロとはひどいねぇ。わしは、ここにずーっと何十年も住んどるんよぉ? この程度で飛ばされたらぁ、沖縄じゃやっていけんさぁー。ほっほほぉ!」


   ずぅおおおおおおおおおおおおおおぉぉ!  ごおおおぉぉぉぉぉおおおおおお!


「こ、これで・・・・・・『この程度』なんですか? なんか、すごいね、中村君・・・・・・」

「これじゃまるで台風だ。おれたちの地元だったら、こりゃ大変なことになるぞ」

「台風来たら、もっとさぁ。こりゃ、そよ風かねぇー」

「「「「「 えええぇぇーーーーーーっ! 」」」」」

「さぁさ、そろそろ行こうかねぇ。遅れたら大変さぁ!」


   ぶろろろろぉーーーーーーー  ぽすんぽすん  ぶろろろろーーーーーーーー


 柏沼メンバーは大荒れの天気の中、島袋のバスで再び会場へ向かう。

 今日はインターハイ二日目。団体組手の四回戦と準決勝、個人戦は形と組手が三回戦まで行われる。


   ばばばばばばばばばっ  ばたばたばたばたばた


 会場前ののぼり旗も、「はためく」という表現が当てはまらないほどに、ものすごい風に吹き流されている。


「二日目か。天気はまぁ、こんな感じだけど、俺たち室内種目だからよかったねぇー」

「田村。さっき、アタシの友達から連絡あってさ、弓道部が団体優勝したって! 剣道部も、団体で決勝まで行ったってさ! ね? 幸先いいよ! アタシらも続こうよ!」

「おぉー。そいつは、いいねぇ! 川田、なんだかやけに今朝は機嫌いいけど、どした?」

「なぁによ? アタシがニコニコるんるんしてちゃ、変だって言うのー?」

「いや、そーじゃねーけど。なんかよくわかんねーけど、まぁ、何もないならいいや」

「アタシは、早く試合したくてウズウズしてるのよ! さぁ、みんな、たくさん暴れるよ!」

「「「「「 よぉっしゃあぁーーーーーーーーっ! 」」」」」


   だだだだだだだだっ  すたたたたたたたたたっ   ・・・・・・どかっ!


「いったぁ! ・・・・・・ちょっとぉーッ! 気をつけてよぉッ! いたいなぁー」

「あ! だいじょうぶ、末永さん? 田村君、ちょっと待ってー。末永さんがー」

「ん? どしたー?」


 小笹は誰かとぶつかり、その場で尻もちをついてしまった。

 心配した前原が、先を行く田村たちを呼び止めた。


「あぁ! すまんすまん! 急いでて、ぶつかってしもたわ! ほんま、許してな?」

「まぁ、いーけどぉ・・・・・・。ケガしたら大変だから、気をつけてよぉー?」

「ほんま、すまんなぁ! ・・・・・・ん? あんたら、栃木のチームなん?」

「え? そうだけど? 関西弁・・・・・・なんだね?」


 小笹とぶつかったのは、関西弁を話す爽やかな雰囲気の女子選手。

 首からスポーツタオルをかけ、それは肩口から胸元までかかっており、どこの学校かは見えなかった。関西の人らしきその人は、後輩二人を連れ、選手待機所へ向かうところだったようだ。


「そぉや。・・・・・・あ、わかったわ! 柏沼高校と、くらげ女学院ってとこのひとやろーっ? なにわ樫原が負けたっちゅー、公立やん。よぉやりよったなぁーッ!」

「はぁ、どーも。てか、おたくは誰かねぇー? ・・・・・・大阪の女子代表なんかい?」

「ちょっとぉッ! ワタシ、くらげ女学院じゃないって! か・い・げ・つ女学院!」

「アッハハハハ! すまんなぁ! 間違えてもーたぁ。くらげとちゃうんやな? 失礼!ウチは、西大阪愛栄高校の主将やっとる、藤崎さつきや! さっきはぶつかって悪かったわぁ。海月女学院て、ウワサ、聞ーたで! 県予選で、個人形、等星の諸岡里央を下したっちゅーとこやろ? あんたが、末永小笹なんかぁ! アッハハハ! これも何かの縁やねーっ! そや! 今日の個人戦出るんやろ? どんな形か見せてぇな! 組手も確か出てたやろ? ウチな、強いやつと戦うの、めっちゃ好っきゃねん! なぁ、あんた、ウチと当たるん? あ、ちがうか。そっちの、川田真波って、あんたや! あんた、等星の朝香が言うてた! あんたもめっちゃ強いんやってな! あー、楽しみやわ! ええか? 

絶対勝ち上がるんやで! でも、テッペン獲るのはウチや。あ、森畑菜美っちゅーんはあんたかいな? そしたらウチらとな・・・・・・」


   ペラペラペラペラ ピーチクパーチクピーチクパーチク ペラペラペラペラ

   ピーチクパーチクピーチクパーチク  ピーチクパーチクピーチクパーチク・・・・・・


 西大阪愛栄高校の藤崎は、まさにマシンガントーク。

 小笹とぶつかってから、止まらずひっきりなしに喋りっぱなしだった。小笹だけでなく、川田や森畑にまで話は振られ、そのあとは、同じ大阪のなにわ樫原を下した田村たちにまで飛び火。


「(ちょっと・・・・・・。真波、そろそろとめてよコイツ・・・・・・)」

「(す、すごいね。なんか、大阪のオバチャンて感じがするよ・・・・・・。どーしよう)」

「(おい、末永。なんとかしろよぉ。お前がぶつかったから、変なやつにつかまっちまったじゃねーかぁ。どーにかなんないのかねぇー)」

「(なッ・・・・・・なんでワタシなんですかぁッ? 知りませんよぉッ。あー、誰か止めてぇ)」


   ~~~本日の競技は、午前九時三十分より、団体組手の四回戦を・・・・・・~~~


「・・・・・・藤崎主将、そろそろ。他の先輩方が、待っとりますよ?」

「あ! なんやねん! 遅れてまうやんか! 急がなあかん! じゃ、ぶつかってすまんかったなぁ! またな! あ。・・・・・・テッペン獲るの、ウチやからね? 覚えといてーな?」


 そして藤崎は、一気に去っていった。柏沼メンバーと小笹は大渦に巻き込まれた後のように、ぐったりとその場で疲れていた。


「な、何だったんだあいつは! あー、なんだかよくわかんねーけど、疲れたねぇー」

「菜美ぃー・・・・・・アタシ、大阪のアレと当たるんだっけ?」

「勝ち上がれば、ね・・・・・・。まぁ、さすがに試合中は喋りまくらないだろうからさ」

「す、すごい話しっぷりだったな。どういう性格なんだありゃ! 道太郎、あんなのが俺らのチームにいなくてよかったな・・・・・・」

「は、始まる前から、技も出さずに俺らを疲れさせるとは・・・・・・。全国は広いな泰ちゃん」

「と、とりあえず、栃木陣営のとこに荷物置いて、僕たちも準備しようよ。今日は、最初から全力で行かないとね。身体、温めよう!」

「そ、そうだな。朝一番から、なんだかすごかったな・・・・・・」


 柏沼メンバーが観客席の栃木陣営のところへ行くと、堀庭や畝松、二斗らがもう来ていた。

 等星女子のメンバーは既に公式練習場で汗を流しているらしい。

 松島や新井、早川先生に末永は、打ち合わせ会議で大会議室へ。保護者は、たぶんもうすぐ合流するのだろう。


「・・・・・・・・・・・・どうしたんだ、柏沼は? ・・・・・・・・・・・・昨日の疲労か?」

「に、二斗。ありのまま起こったことを・・・・・・俺は話すぜ。お、俺たちは、さっき、大阪のオバチャンパワーというものを、少しだけだが、体験した。末永ちゃんや、真波が話したと思ったら、いつの間にか、マシンガンだった・・・・・・。何を言ってるのかわからねーと思うが、俺たちも何だかわかんなかった。トークとか会話とか、そんな簡単なもんじゃねー。もっとすっげぇものの片鱗を、俺たちは味わった気分だぜ・・・・・・」

「・・・・・・。・・・・・・は?」

「ご、ごめん二斗君。僕も井上君が、何を言ってるのかわかんないよ」

「あ、二斗、井上のことは気にしなくていいから。もぉー、漫画の読み過ぎよ井上!」

「とりあえず、準備して、招集かかるまでは公式練習場行こうぜ。二年も一年もな」


 全員その後すぐに組手の準備をし、公式練習場へ向かった。

 井上のせいか知らないが、日新学院メンバーや堀庭は、ぽかんとその場で鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔で固まっていた。

 外は、雨が横殴りに降ってきた。会場の窓ガラスに、バチバチと吹き付ける雨音が響き、どこかから漏れる風の音も廊下へ響いてきている。

 二日目の激闘を暗示する何かなのだろうか。

 それとも、各選手の勢いを暗示する何かなのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ