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青春空手道部物語 ~悠久の拳~ 第2部  作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
第3章 開幕   美ら海沖縄総体!  激闘! 熱闘! インターハイ!
52/106

2-52、競技一日目、終わる

   ~~~一日目の日程が終了しました。明日、二日目の競技は・・・・・・~~~


 一日目の競技日程が終了した。田村たち柏沼メンバーは観客席に戻り、ほっと一息ついているところだ。

 二日目は個人戦もあるため、明日は川田や森畑、小笹に堀庭、二斗、畝松も大暴れすることだろう。

 団体組手は初日でベスト8のチームが出揃った。ここからはもう、超名門の強豪しかいない。

 そんな中に柏沼メンバーが勝ち残れたことは、前原たちにとっては「本当に現実なのだろうか」と思ってしまうことだろう。

 明日の団体戦は、次のとおりとなった。


 《男子団体組手》

 Aコート、瀬田谷学堂 対 県立柏沼高校

 Bコート、松大学園 対 御殿城西

 Cコート、山梨航空学舎 対 山之手学院

 Dコート、拓洋大青陵 対 福岡天満学園


 《女子団体組手》

 Eコート、花蝶薫風女子 対 日国大山形

 Fコート、宮崎第二学園 対 西大阪愛栄

 Gコート、学法ラベンダー園 対 白波女学園

 Hコート、県立糸洲安城 対 等星女子


「明日の団体組手四回戦が、怖くもあり楽しみでもあるな。・・・・・・いや、ここまで来たら、楽しもう!」

「そうだね中村君。僕たち、本当にここまで勝ち上がれたんだね! まだ実感がないや」

「悠樹も陽二も、もっと胸張ろうぜ! もう、入賞は確定なんだからよぉ俺たち!」

「だははっ! そうそう! 泰ちゃんの言うとおりだ! こうなったら自信持って明日の瀬田谷学堂戦を楽しもうじゃんか」

 

 神長は豪快に笑って、前原の肩をばしんと叩いた。井上や中村も、笑顔で頷いている。 

 田村はその隣で、川田や森畑と談笑中。


「男子ぃっ! ほんっとお疲れーっ! ベスト8だよベスト8! インターハイのベスト8!」

「すっごかったよねぇ! そして、初日から強いとこばっかだったねぇーっ!!」

「そうだねぇー。さすがに疲れた。宿に帰って休みたいねぇー」

「田村は明日、個人戦もあるもんね! アタシが今日は、宿でいろいろ癒やしてあげよう」

「やめろよぉ。川田、何すっかわかんねぇもんなぁ! いろいろってのが、恐いねぇ」

「あー、何よそれ! アタシだってねぇ、明日、個人戦のための準備があるけど、男子のためにねぇー・・・・・・」

「まーまー。川田さんも田村君も、そのくらいで。・・・・・・あれ? 日新学院や等星女子の人たちは? 堀庭君もいないけど? 黒川君、何か知ってる?」

「あぁ、日新や等星の人たちは、一足早くバスに乗ってホテルに帰っちゃいましたよ。あっという間に着替えて準備して、だだーっと行っちゃいました。また明日、って」

「そうか。おれたちも日新や等星の声援に支えられた面もあるから、礼を言いたかったが。ま、明日だな」

「そうだね。僕も中村君同様、お礼を言いたかったんだけどな」

「あ! 先生! どうっすか、俺らの試合結果! 最後は陽二がめっちゃ粘った結果っすよ!」

「いや、それは違うぞ井上。この結果は、全員で得たもんなんだからな」

「お疲れ様なぁ! 先生、さっき校長とPTA会長に電話して、団体組手ベスト8まで来たっての伝えたぞ! いやぁ、すごいっ! 明日、東京の強いとこを倒して、このまま優勝だ!」

「いやいや、先生! 明日の瀬田谷学堂は、ほんとやばいっすよ! ぶるぶるぶる・・・・・・」

「なぁによ井上! また結局震えてるの? あんたも、かっこいい組手だったのにぃ」

「うるせぇ真波! 瀬田谷学堂は、やべぇだろ! おかやま白陽が去年、手も足も出なかったレベルだぞ! どーしろってんだよぉ」

「まぁ、やるしかないさ泰ちゃん! 俺たちは勢いに乗っている! だいじだっ! だははっ!」


   わいわいわいわい  がやがやがやがや  わいわいわいわい


 初日の試合が終わり、一気に気が抜けた感じのムードとなった柏沼メンバー。

 しばらくして、全員で荷物をまとめ、宿に戻る準備をした。


   たたたたたたっ  ひた  ひた  ひた  ひた


「見てたよぉーっ! 柏沼のみなさんッ! ベスト8入りだねッ! すごーいさぁ!」

「あら、美鈴ちゃん! ありがとね! どう、うちの男子? スゴイでしょ!」

「明日は・・・・・・瀬田谷学堂となんですねぇッ? ご武運を、祈ってまぁす! あたしも明日、個人形、優勝狙ってますからねぇッ!」

「お互い頑張ろうね! 私も、個人形で美鈴ちゃんと当たりたいからね!」

「あっはははァッ! いーですねぇ! 森畑サン、楽しみにしてます! 頑張りまぁす!」


 瞳をきらりと輝かせ、屈託のない笑顔で森畑と話す美鈴。そこへ、小笹が割り入るようにして加わってきた。


「聞き捨てならないなぁッ! みーすーずー・・・・・・。優勝ってコトはぁ、森畑センパイを蹴散らし、ワタシを差し置いて決勝へ勝ち上がるってコトじゃないのさ!」

「あっははははァッ! そーだよぉッ! 小笹になんか、負けてなるもんですかぁー」

「なんだとぉーっ! 言ったなぁーっ! ワタシ、美鈴には、ぜぇったい負けないモン!」

「あたしのセーパイ、なめないでよねぇッ! ふふっ。でも、小笹、インターハイであんたとも試合できたらあたしも嬉しいよ! けどぉ、糸城サンをまず越えなきゃ無理よー」

「あははっ! そーだねぇッ! ワタシも、楽しいよ! 決勝でしか当たらないけどねー」

「ふふっ。じゃ、あたし、先に戻るね。おばぁのとこでまた、夕飯食べてくから!」

「はいよぉー。おばーちゃんに言っとく。バーイ!」

「じゃぁね! 柏沼のみなさんも、また、明日! お先でぇーす!!」


 美鈴は一礼して、学校のメンバーとバスに乗って先に帰っていった。


「さぁーてと、アタシも明日、個人組手頑張ろうっと! やはり、朝香を越えなきゃな!」

「川田さん、頑張って! 個人組手も強豪揃いみたいだけど、いけるよ!」


   ぺたり  ぺたり  ぺたり  ぺたり・・・・・・


 そこへ、あるシルエットが近づいてきた。芳醇な薫りを漂わせて。


「ん? なんだぁ? 派手なねーちゃんがきたぞ? ありゃ誰だろうねぇー?」

「ホーホホホホォ! このワタクシを差し置いてェ、個人組手、イケるなんてぇ叫んでるのはどこのドナタかしらぁん? ウフフフゥー」


 どぎついキャラクターが、田村たちの目の前に現れた。

 西洋と東洋のハーフのような見た目のその選手に対し、柏沼メンバーはみな「初めて見る」といった表情。その声と話し方に、中村は顔が引きつって鳥肌を立てている。


「な、なんだぁ? あんた、何? アタシになんか用なの!?」

「コザッサ・スエナガの声がしたもんですからぁん。そしたらぁ、なんだか、明日の個人戦に出るヒトもいるじゃなぁい。ウフフフ。アハハハハァ!」

「(な、なんっだこいつ! アタシ、友達になれそうもない気がする・・・・・・)」

「朝香朋子を越えるだかなんだか、おっしゃってましたわねぇ、アナタ? 身の程を知りなさぁい。このワタクシがいる限り、アナタの朝香越えは、無理よ」

「なっ、なにー!」

「あ! こ、この人は・・・・・・」

「恭子? ・・・・・・ねぇ、何だか知らないけど、あんたアタシに喧嘩売ってんの!?」

「川田先輩。この人、北海道代表です。末永ちゃんより強いっていう・・・・・・」

「小笹より強いだって!? なんだそれ!? あんたどこの誰よ! アタシにそんなこと言って、明

日、小っ恥ずかしいことになっても知んないかんね!」

「ウフフフッ! アハハハハハ! 覚えておきなさぁい田舎娘。ワタクシは、ミランダ野沢シーナ! アナタごとき田舎娘、ワタクシの足下にも及ばなくてよん。ウフフフッ」

「ミランダだかオランダだか知んないけどさ! 上等だよ! あんたこそそう言うなら、明日、朝香越えしてアタシと戦いなさいよね!」

「ウフフゥ! アハハハァ! ま、楽しみにしてるわぁん! バァイ、田舎娘たち」


   ぺたり  ぺたり  ぺたり・・・・・・


「なんっなの、あいつ! ふっざけたやつだ! ・・・・・・って、中村も田村も、あんたらなんでアタシの後ろに隠れてんのさ!?」

「だーめーだー。なんか俺、今のあいつは苦手だねぇー」

「むむむ・・・・・・。お、おれもどうやら何か・・・・・・」

「はー。さっきまでのあの団体組手の凛々しさはどこへやら、だ」


 ミランダ野沢シーナは、川田を煽りに煽って去っていった。これは明日の個人戦、超大型台風以上に大荒れ必至となるだろう。


   * * * * *


   ジュワワァァァーーーーーーーツ・・・・・・

   ジュー  ジュー  ジュワワー


「あー、いいにおいだねぇー。疲れた身体が、うまいものを求めてるねぇ!」

「何か今日、三回しか試合しなかったはずなのに、ものすごい疲労感だよ田村君」


 一日目の試合を終え、キヨの民宿に戻った柏沼メンバーたち。

 ラフな部屋着に着替えてから、みんな広間に集まり、まもなく夕食だ。


「男子ぃ、もーちょい待っててぇ。いま、菜美や恭子らが作って、アタシと小笹で持ってくからさー。先輩方や先生も、もーちょいお待ち下さいねー」

「そーゆーことッ。くすっ。お腹空かせて待ってて下さいねぇー」


 今夜は、女子メンバーもキヨと一緒に夕食を作っている。県立球磨之原、なにわ樫原、おかやま白陽との激しい三連戦を制し、ベスト8入りを果たした男子メンバーへ、女子メンバーからの労いとのことだ。


「新井君も、お疲れ。いやぁ、すごかったね。俺も明日、川田や森畑の監督付くけど、やっぱりインターハイの空気って違うよね」

「うーん、そうだねそうだねー。やっぱり、相手も強いしね。むこうの監督の采配も気になるし、監督席にいても選手同様の緊張感はあるねー。松島君も明日、一緒に頑張ろうー」

「新井さんも松島さんも、ほんとお世話になります。いやぁ、私が素人なもので、お手数かけますが。福田さんも、応援に来て頂き、ほんと助かりますよー」

「いえいえ。後輩達の勇姿を見たいですし、僕も、かつて出ていた場が懐かしいですから」

「男子、みんな来て。疲労回復のマッサージやストレッチしよう。真似してやってみて」


 新井と松島は、お互いに男女の監督役としていろいろ語り合っている。早川先生と福田は、今日の試合の雰囲気や明日のことについて何やら話している。

 夕食が揃うまでの間、男子メンバーは堀内に様々なストレッチやマッサージを教わり、また新たな部分のツボ圧しもやってもらった。膝下外横の足三里、ふくらはぎの承山、足底の湧泉などのツボだ。

 ぎゅうっと圧し、みんな、少しずつ疲労回復に勤しむ。中村曰く「たった三試合でこれほどの疲労感は今まで感じたことがない」とのこと。

 保護者はみな別な民宿を予約したようで、メンバーとは宿が別。きっと今頃、今日の試合結果を肴に、保護者同士で盛り上がっているのかもしれない。


   たたたたたっ・・・・・・

   さく  さく  さく   がらららーっ


「おーい! こざさーっ、おばぁーっ。来たさぁーっ!」

「あ。あの声は、美鈴さんだ。田村君、また賑やかな声が一つ増えるよ」

「そうだねぇー。なんだかもう、よくわかんねーけど、楽しい夕食になりそうだねぇー」


 台所からは、とてもいい香りが漂ってくる。香ばしい甘酢のような香り。

 そしてその香りの奥では、何かを炒めているような音もする。


「あははっ! 遅いよー美鈴。ね、こっち来て手伝ってよぉーッ」

「ほっほっほ。美鈴も来たかぁ。今日は試合なかったんだろぉ? 明日に向けて、しーっかりと食べていくといいさぁー」

「「「「「 いただきまーす! 」」」」」


 出てきて並んだのは、今夜もまた美味しそうな沖縄家庭料理だった。

 川田、森畑、阿部、そして小笹は、四種類ある料理をそれぞれ分担して作ったとのこと。


「男子の白熱した戦いで、アタシらも気合い入れてもらったしね! ベスト8入り、お疲れさま。明日はいよいよ瀬田谷学堂だよ。頑張ってね。アタシらも頑張るからね!」

「ありがとなぁ川田。いやー、しかし、何だかんだでインターハイは楽じゃないわ。おかやま白陽は、特に苦戦したなぁー」

「でも尚久、(もぐもぐもぐ)おかやまはくようは(もぐもぐもぐ)ぜんいんがまちけんってのが(もぐもぐもぐもぐ)・・・・・・げほんげほんげほん!」

「ちょっとぉーッ! 井上センパイーっ! 食べながら咽せないでよぉッ! もぉー」

「ほら、井上。水だ。喉を潤して飲み込むといい」

「げほげほ・・・・・・ざ、ざんぎゅう、ようじ・・・・・・(ごくごく)・・・・・・。あー、やばかった!」

「泰ちゃん、ゆっくり食えよ。料理は逃げないぞ! だははははっ!」


 みんなとにかくよく食べる。この美味しさと楽しさで、今日の疲れも吹っ飛ぶことだろう。

 明日はまた、どんな試合になるのだろうか。瀬田谷学堂にもし勝てれば、ベスト4進出だ。

 しかし相手は、昨年のおかやま白陽を難なく撃破して優勝した超高校級の選手たち。きっと明日は、今大会最大の激闘になるかもしれない。


「テレビで中継してたよぉー。ほっほほぉ。なかなかみんな、精悍な顔をしとったさぁー」

「え! 生放送で流れてたんですか? 開会式からですか?」

「そうさぁ。ひとりひとりな、よぉく見たよぉ。沖縄代表の子たちも、堂々と出てたさぁ」

「あたし、しっかりカメラ見て歩いたよぉッ! 小笹や柏沼のみなさんはぁ?」

「うむ。おれは、きちんと前髪も整えて、メディアを意識して行進したな。やはり、武道は身嗜みからが大切で、身嗜みが乱れるということは、精神的な面からも・・・・・・」


 中村は、入場行進の持論を語っているが、黒川と内山しか聞いていない。


「ワタシは、ひとりだったけどぉ、堂々とやったよぉッ! 大きい大会の入場行進なんて、すごく気持ちよくてぇ、ちょっと心が震えたね! あははッ!」

「ほっほっほ。若いって、いいねぇ。わしらの世代にゃ、小笹や美鈴の年齢で、あんな風に競技でたくさん動くことなどなかった。空手というものの質が、今の時代とまぁったく違うもんだったんさぁ。それは、わしには羨ましいことさぁ」

「競技化し、今や国際的なスポーツにまでなりましたよね、空手は。すごい競技人口です」

「あんた、福田さんと言ったかねぇ? 空手がかつて、唐手(トゥーディー)と呼ばれていた頃は、身を守るための秘術のようなもんだったんさぁ。鍛練を重ねて、身体の強さも人格も磨き上げてな」

「秘術、ですか。ここではそういう、文化的な面の強い武道なんですね、空手は」

「福田さんや。拳を鉄拳(ティジクン)になるまで磨き上げると、自ずと争いは起こらなくなる。そうして護身の技は、有事の際にしか見せないものとして、伝わってきたんさぁ・・・・・・」


 キヨの話は、みな食事をしながらも真剣に聞いていた。

 現在こうして、選手としてそれぞれが試合を楽しむ時代のはるか昔、先人は様々な思いを持って、空手を脈々と受け継いできたのだ。


「数多の琉球武術の大家たちは、技術の伝承によって、いまのわしらの礎になってるんさぁ」

「おばぁの昔話、あたしはもう耳にタコができるくらい聞いたよぉー。もぉー、みんなももっと楽しい話がいいってさぁー」

「いや、勉強になります。その昔の人たちが築き上げた技術や精神が今、世界各国にまで広がってるんですもんね! すごいよね、末永さん!」

「まぁ、ワタシも美鈴も、おばーちゃんも、東恩納厳量先生の血がどこかしらには入ってるんだけどねぇ・・・・・・。技だけじゃなく、ワタシや美鈴は、遺伝子がもう空手家なのねぇ」

「なんかぁ、なにわ樫原の猪渕みたいな表現だなぁ。まぁ、末永が強えのは、そうした昔の人の血が成すものなんかもなぁー。・・・・・・明日、末永も頑張れよなぁ」


 田村はさりげなく、ひょいとお箸でパパイヤイリチーを多めに取り、小笹へ分けてあげた。


「あ! 世界と言えばさぁ、あんのド派手な失礼女は何なのよぉ!! アタシ、明日絶対あいつと当たりたくなってきたよ! でも、当たるには、あいつが朝香朋子を倒さなきゃなんないから、まぁ無理だけどねー」

「ド派手って、あの、ミランダ野沢シーナとか言うハーフっぽい北海道のやつ? 真波に田舎娘とか言ってたよね。朝香と同じ山なのに、そんなに自信あるのかな?」

「てか、川田さんも、何気に強敵揃いの山だよね? 西大阪愛栄の藤崎さつき選手は、全空連ナショナルチーム候補にもなるほどらしいし。いろいろいるね、本当に・・・・・・」

「だいじだよ前原! 西大阪の藤崎は、ナショナル『候補』でしょ? アタシはそんなの、気にしないよ。だって、アタシ実際に、ナショナルチームの朝香や崎岡と真っ向から勝負してるし! 勝ち上がって、アタシ、朝香でもミランダでも蹴散らしてやるんだから!」

「ひゅーっ! 頼もしいねぇッ! 勢いありますねぇ川田さん。そういえば、小笹のブロックにもさぁ、個人組手、つよぉいのいっぱいいるよぉーッ! ふふっ!」

「だれー? ワタシ、わかんないなぁー。美鈴はそーゆーの、よくわかるねッ?」

「末永さんの山は、確か、東北商大高校の岡島玲菜おかじまれいな選手とか、あの朝香さんの妹、朝香舞子選手とかがいたよ。初戦の凪川学院の谷川選手も、関西では実績ある人みたいだし・・・・・・」

「くすっ。あははっ! 誰だっていーよぉ。勝てばいいんだから! ワタシも、ミランダ野沢シーナには、当たって勝ちたいんだぁッ! ・・・・・・リベンジだ!」

「末永ちゃん! あのミランダって人、どんな選手なの?」

「あれはぁ、スペイン系フランス人のハーフなの。国籍は日本って言ってたけどぉ。フランスにいた頃、ワタシ、ミランダに圧倒的差で負けたんだ・・・・・・。あれはワタシ以上の、蹴り技の名手かもしれない。・・・・・・なんで北海道代表なんかで・・・・・・」

「まさか・・・・・・。あいつが、小笹をヨーロッパで負かした金メダリストなの!? アタシ、もっと違うタイプの人間を想像してたけど・・・・・・。あいつが・・・・・・」

「ハーフじゃきっと、両親のどっちかが北海道出身とか? 小笹も沖縄出身だもんね?」

「ワタシはハーフじゃないケドね。でも、ミランダ、確実に強くなってそうだったー・・・・・・」

「フランスにいた二人が、北海道だったり沖縄だったり、運命っちゃわけわかんねーけど、なんかどっかで、人って繋がるもんなんだねぇー」


   ~~~明日の沖縄諸島は、低気圧の影響で天気は今夜から大荒れになりー・・・・・・~~~


 テレビでは、誰がかけていたチャンネルかわからないが、天気予報が流れていた。

 楽しく美味しい時間は、話が尽きずに過ぎてゆく。わいわいがやがやと、過ぎてゆく。

 そんな中で、小笹は、パパイヤイリチーをばくりと頬張り、無言でもぐもぐとひたすら食べ続けていた。

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