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お引き取りください!

 魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。

 この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。

 俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。

 俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。

 俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。

 俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。

 え? 高校が午前中で終わるわけがないだって? それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。

 だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。

 さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。


「お兄ちゃ〜ん、【レインボーパフェ・スーパーノヴァ】五つ追加だよー」


「はいはい、ただいまー」


 メイド服と猫耳とシッポを身につけた状態で俺に客が注文した料理を伝えてきたのは、銀髪ショートと水色の瞳が特徴的な美少女『ルルナ・リキッド』。


「お兄ちゃ〜ん、ついでに私の分も作ってー」


「はいはい、ただいまー……って、どさくさに紛れて自分の分まで注文するなよ」


「あはははー、ごめんなさーい」


「……ったく、義理の妹でも、やっていいことと悪いことがあるだろ……」


「んー? お兄ちゃん、今なんか言ったー?」


「いや、なんでもない。ほら、俺と話してる暇なんてないぞ、早く持ち場に戻れ」


「はーい」


 ルルナはそう言うと、自分の持ち場……つまり、接客の仕事に戻っていった。(イメージは無気力妹)

 まったく……真面目に働いてもらいたいものだ。


「お兄様ー! 【レインボーハンバーグ・メテオシャワー】を一つ、お願いしますー!」


「あー、はいはい、ただいまー」


 俺をお兄様と呼んだのは、赤髪ロングと緑色の瞳が特徴的な美少女『マキナ・フレイム』。

 ルルナと同じ格好で、こちらにやってきたマキナは、俺がせっせと【パフェ】と【ハンバーグ】を同時進行で作っているのを、じーっと観察していた。


「なんだ? マキナ。お前も作ってくれるのか?」


「い、いえ、私が料理を作ると見た目しかうまくできないので、遠慮します」


「……そうか。なら、ここは俺に任せてくれ。お前には、お前にしかできないことがあるだろう?」


「そ、そうですね! 頑張ります!!」


「おう、行ってこい」


「はい!」


 マキナはビシッ!と敬礼すると、接客の仕事へと戻っていった。(イメージは清楚妹)

 その直後、事件は起こった。


「きゃーー!」


 その声に聞き覚えがあった俺は、パフェ五つとハンバーグを秒で完成させ、声の主のところへ走っていった。(それと同時に、ルルナとマキナに出来上がった料理を運ぶよう指示した)


「……マリア! 大丈夫か!」


 何かにつまづいて転んでしまったであろう、マリアは運んでいたパフェの中身を被ってしまったらしく、クリーム等が体のあちこちに付いていた。

 金髪ロングと赤い瞳が特徴的な美少女……いや、美幼女の『マリア・ルクス』の頬に取ってくれと言わんばかりのクリームがついていたため、俺はマリアの目線まで屈んだ。(イメージは無邪気妹)


「マリア、ケガはないか?」


「う、うん、大丈夫。それより、ごめんなさい。お兄さんが作ってくれたパフェ……ダメにしちゃった」


「料理は材料と時間があれば無限に作れるから別にいい。それより、顔にクリームが付いてるぞ」


「え? どこ? 早く取って」


「え、あ、ああ……」


 俺がマリアの頬に付いているクリームを取ろうとした時。


「……ペロ」


「ひゃっ!!」


 黒髪ツインテールと黒い瞳が特徴的な美少女……いや、美幼女『ミーナ・ノワール』が急に現れて、マリアの頬に付いていたクリームを舐めとった。(イメージは無口妹)


「うん、おいしい」


「な、ななな! ミ、ミーナちゃん、急に何するの! ビックリしたよ!」


「別に普通でしょ? とにかく早く着替えに行こう」


「え、あっ、うん」


 ミーナに手を引かれて、その場から去っていったマリア。それを見ていたお客さんたちは、なぜか俺のことをじっと見ていた。

 俺はそれに気づくと、スッと立ち上がって、咳払いをした。


「失礼しました。まだまだ至らないところがございますが、あれでもうちの自慢のメイドですので、何卒(なにとぞ)……」


 その時、マリアが運んでいたパフェを食べ損ねた男性客が急に怒鳴った。


「なにが自慢のメイドだ! あんな使えないメイドは初めて見たぞ! こんな店、潰れてしまえ!」


 俺は即座にその男性客のところへ行き、謝った。


「申し訳ありません。ご主人様。お料理の方は、私がすぐにお持ちしますので、もう少々お待ちくだ……」


「もういい! 貴族である私を待たせるような店など私が潰してやる!」


 貴族……か。なに不自由なく育ったせいで我慢の仕方が分からないおぼっちゃま……ってところか。


「まあ、そうおっしゃらずに。あのメイドもわざとやったわけではないのですから」


「知ったことか! この次期ガンマ家当主『ライジング・ガンマ』を怒らせてしまったことを後悔させてやる!」


 その時、俺の背後にピンク髪ロングと赤い瞳が特徴的な美少女『アヤノ・サイクロン』の殺気を感じたが、俺がアヤノに目をやって、首を振ったため、アヤノは彼に殴りかかるのをやめた。

 俺は、短めの金髪と緑色の瞳が特徴的で白いタキシードをまとった男性客に目をやるとこう言った。


「そうですか。では、お引き取りください」


「なんだと? 貴様、今、なんと言った!」


「お引き取りください! と言ったのです。聞こえませんでしたか?」


「くっ……! こ、この平民風情が! 調子に乗るなああああああああああああああ!!」


 彼は手の平から金色の光線を放ったが、ルルナたちと『兄妹契約』を結び、戦い、それぞれが司る属性を全て自分のものにした俺にとっては、それは水鉄砲ほどのものにしか見えていなかった。

 俺は、右手に闇をまとわせると、その金色の光線を右手の闇で吸収した。


「あなた様は今……この店で攻撃魔法を使いました。よって、あなたには1ヶ月間、この店に入れない呪いがかけられます」


「なんだと! そんなの聞いてないぞ!」


「店で攻撃魔法を使うような野蛮人には、然るべき罰を与えなければ分かりませんからね」


「き、貴様! 私にそんなことをしたら、どうなるのか分かっているのか! 貴族を敵に回すことになるのだぞ!」


「そんなの関係ないですよ。ここに来ていいのは、最低限のマナーを守りながらも、楽しいひと時を過ごすことができる人たちだけですから!」


 ケンジは、指笛を吹いて、店長であるユミナ(黒猫形態)を呼んだ。

 すると、ケンジの頭の上にユミナが出現し、その赤い瞳で『ライジング・ガンマ』の目をじっと見つめ、呪いをかけた。


「……これであなたは、1ヶ月間、この店に来ることができなくなったわ。おとなしく立ち去りなさい!」


 ユミナがそう言うと、まるで何かに操られたかのように、彼はトボトボと店を出ていった。

 この呪いは、この店に関する情報を一時的に消去でき、誰かから、その店の名前や関係する言葉を聞くことができなくなる。

『ライジング・ガンマ』が出ていくと、俺はユミナを抱きかかえてこう言った。


「今のは私の腹話術です。皆さま、お気に召しましたでしょうか?」


 パチパチとお客さんが拍手をしていたため、俺たちはこの場をなんとかやり過ごすことに成功した……。










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