終わらせます!
魔王の幹部の一人『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。俺の役目は魔王を倒し、この異世界を救うことなのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それができない。
人員が足りない……つまり、俺しか料理が作れるやつがいないということに気づいたルルナたちは人員募集のチラシを配り、候補を二人連れてきた。
それが座敷わらしの双子【ハヤト・フライト】と【イーグル・フライト】であった。
面接の時、まったく同じことを同時にしゃべっていたから、双子だと気づいたが、元気の良さ以外は何一つとして、満足にこなせない……正直、言って役立たずだった。
しかし、それを店長であるユミナ(黒猫形態)に話すと、二人が座敷わらしであることと、二人をどうするのかは、俺に任せるということを言われた。
俺は不採用にしようとしたが、『見習い』という形でなら、店で働いてもいいということを二人に伝えた。
二人は嬉し涙を流しながら、俺に感謝の言葉をマシンガンのように浴びせてきたが、俺はなんとかそれをやめさせた。
今回は、そんな二人が俺たちが高校に行っている間……つまり、午前中に何をしているのかについて、ユミナの証言のもと、伝えようと思う。
『ランランラ〜ン♪』
やはり、同じことを同時に言っていた【ハヤト・フライト】と【イーグル・フライト】は、テーブルを拭いている……。(同じテーブルを半分ずつ)
それを心配そうに屋敷の2階から見ていたユミナ(黒猫形態)は螺旋状になっている階段の手すりを滑り台代わりにして、スーッと滑ると、1階の赤いカーペットの上に着地した。(屋敷の床は全て赤いカーペットが敷かれているが、別にここに来た人間の血でできているわけではないから、安心してほしい)
「おーい、二人ともー。調子はどう?」
二人のところに歩いていったユミナがそう言うと、二人は、こう言った。(それぞれ見習い用の執事服とメイド服を着ている)
『ね、猫がしゃべったー!?』
その反応を見たユミナは、糸目でこう言った。
「猫がしゃべるくらい、この世界では当たり前でしょ? それに、私はこう見えても、魔王の幹部の一人なのよ?」
『ま、魔王の幹部の一人なんですか!?』
「あー、はいはい、オーバーリアクションはいいから、早く仕事に戻ってねー」
『イエス! マム!!』
ビシッと敬礼をした二人を見たユミナは、この二人は軍隊に入った方がいいんじゃないかな、と思った。
「あー、そういうのいいから。とりあえず手を動かそうかー」
『はい!』
ケンジが言ってた通り、返事だけはいいね……。
長くもなく短くもない黒髪と漆黒の瞳が特徴的な【ハヤト・フライト】……。
黒髪ロングと純黒の瞳が特徴的な【イーグル・フライト】……。
二人の髪の色が気になったユミナは、仕事をしている二人を呼び止めた。
「……二人とも、ちょっといいかな?」
『はい!』
こちらに体を向けて、敬礼をした二人に何のツッコミも……いや、もはやツッコミを入れるのに飽きてしまったユミナは、赤い瞳で二人をじーっと見ながらこう言った。
「一つ訊きたいんだけど、君たちの出身はどこなのかな?」
その時、二人の表情が急に曇った。なにかまずいことを訊いてしまったかもしれないと思ったユミナは、慌てて付け加えた。
「あ、いや、別に無理に言わなくてもいいよ。ちょっと気になっただけだから……」
しかし、二人は真剣な表情で自分たちの出身地を語り始めた。
『いえ、お話します。これからこの店でお世話になりますから……。えーっとですね、実のところ、出身は日本……つまり……』
「この世界の出身ではないってことね?」
『はい、その通りです』
「そう……でも、よく生きてこられたわね。大変だったでしょ……?」
『いえ、座敷わらしとして、日本に住んでいた時は結構、大きな企業の社長さんの家にいたので、とても快適でした……』
「そう……。だけど、どうしてこの世界に来たの?」
『それはですね……。その企業の社長さんが亡くなった直後に借金が発覚して、家が取り押さえられてしまったからです』
「そうだったのね……それで、どうやってこの世界に来たの?」
『はい。それは、知り合いの座敷わらしが聞きつけて、この世界に行くよう手配してくれました。不幸中の幸いってやつです』
「そう……そんなことがあったのね。え、えーっと、この世界に来た経緯はわかったけど、このお店をどうやって見つけたの?」
『優しい香り……というより、幸せそうな香りがしたからです』
「えっと、それはつまり……」
『はい、ケンジさんが作る料理から常に溢れ出ている正のエネルギーのおかげで、ここにたどり着くことができました』
「ケンジの料理に、そんなものは感じられなかったけど、あなたたちにとって、それは希望みたいなものだったのね?」
『希望……ですか。それは、少し違います。ケンジさんが作った料理には【幸せ】だとか【愛】みたいな温かいものがたくさん入っていました』
「なるほどね。じゃあ、二人はケンジの料理が気に入ったから、この店で働きたいって思ったのね」
『そうですね。なんだかんだ言って、あの人は【見習い】として採用してくれましたから』
「そう……それじゃあ、この話はこれでおしまい。ほら、早くしないとケンジたちが来る前に終わらないわよ?」
『はい! 速攻で終わらせます!』
笑顔でそう言った二人からは、もう負の感情は感じられなかった。
ユミナは、そんな二人がせっせと手を動かしているのを螺旋状の階段の手すりから見守ることにした。




