えいっ!
ルルナたちは最後の妹候補ミーナに勝利したが、ミーナはケンジとの戦いを望んだため、彼はそれに応じた……。果たして勝つのは、どっちだ!
「ミーナは闇魔法で作った鎧と大剣を装備している。対して、俺は炎、水、風、光の四属性を使える。……が、ミーナの闇魔法は四属性を重ね合わせないと、吸収される……か。ちょっとずるくないか? ミーナ」
「そんなことない! 私が闇魔法を習得するのに、どれだけかかったと思ってるの!」
「うーん、見た目から判断すると、3〜4年って、とこかな?」
「5年よ! 5年! 研究と実践を幾度となく繰り返して、やっとものにできた! なのに、ケンジは、あっさり他人の属性を四つも、ものにした……。私はケンジのその力が嫌いなの!」
「たとえ嫌われようと、俺は構わない。……けどな、俺はこう見えて負けず嫌いなんだよ。だから、この勝負、勝たせてもらうぞ」
「……! 調子に……乗るなぁあああああああ!!」
黒い瞳と黒髪ツインテールと黒いゴスロリ服が特徴的な美少女……いや、美幼女『ミーナ』は大剣を頭上に構えると、黒いエネルギー波を俺に向けて放った。まったく、エ○スカリバー・モルガーンみたいだな。
「うーん、試してみるか」
彼は呑気にそんなことを言うと、先ほど(前話)使えた盾を召喚しようとしたが、感覚だけで召喚したことを思い出した彼は、四属性の力を己の拳に纏わせてみようと思った。
「体の中のエネルギーを右拳に込めるイメージ……。おっ、できた」
彼は拳を構えながら、それをやっていたため、すぐにそのエネルギーを放出することができる状態となった。
「行くぞ! 超圧縮式四属性付与拳!!」
彼の放った四属性の力が込められたエネルギー波はミーナの闇のエネルギーをかき消すと、そのままミーナの方へと直進した。
「そ、そんな……! 私の闇魔法が……! く……くっそおおおおおおおおおおおおおお!!」
ミーナはそれをなんとか大剣で受け止めたが、四属性の力は弱まらず、それどころか、その勢いは増していった。
「こんのぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ミーナは渾身の力でそれを真っ二つに切り裂いた……だが、しかし……。
「はい、隙をついての王手」
ミーナの目の前にいつのまにかやってきていた彼はミーナが頭に被っている黒い兜を取ると。
「えいっ!」
「ふにゃ!」
軽くデコピンをした。ミーナはなぜ彼がそんなことをしたのか分からないまま、鳩が豆鉄砲をくらったかのような顔をし、目尻に涙を浮かべていた。(ついでに額を両手で押さえていた)
「可愛い声だったぞ? 今の」
ミーナは我に帰ると。
「い、いきなり何するのよ! 女の子に手をあげるなんて、最低だよ!」
「言っただろ? 俺は幼女相手でも容赦はしないって……。それにデコピンされた程度なら、ちょっとびっくりするだけで済むだろ? 大袈裟なんだよ、お前は」
「なんで……なんでこんな人が私の兄になるのよ……。嫌だよ……こんなの……」
「お前、俺の妹候補の一人なんだろ? 俺のことはなんかの資料で見たんじゃないのか?」
「見た……けど……」
「けど?」
「私……人とあまり関わらない生活をしてきたから、家族とか兄妹とか、よくわからなくて……。だから、私の兄になる人がどんな人で私に相応しい存在なのかどうか、テストしたの」
「なるほど。それで俺と勝負したいなんて言ったんだな。……で? 俺はそのテストとやらに合格できたのか?」
「うん……合格……というか、好きになっちゃった」
「え?」
「ケンジ……これからはケンジのこと、なんて呼べばいい?」
潤んだ瞳でこちらの顔を見上げるミーナを見た俺は、とても心が痛んだ。なんか、妙な罪悪感を感じるけど……まあ、呼び方は自由でいいよな。
「それはお前で決めろ。俺が決めることじゃない」
「じゃあ、お兄ちゃん?」
「それはルルナとカブる」
「お兄様?」
「それはマキナとカブる」
「お兄さん?」
「それはマリアとカブる」
「兄貴?」
「それはアヤノとカブる」
「じゃあ、もう、ケンジでいいかな?」
「好きにしろ。俺はそういうのはよくわからないからな……それに」
「それに?」
「お、俺がこう呼べって言ったら、なんか妹に対してじゃなくて、奴隷に命令してる感じになると思うから、嫌だなって……」
その直後、ミーナは突然笑い出した。
「な、何がおかしいんだ? 俺、なんか変なこと言ったか?」
「……い、いや、その……こんな面白い人が……私の兄になるんだと思うと……おかしくて、つい……」
腹を押さえながら、そう言ったミーナに対して俺は……。
「やっと笑ったな、ミーナ。ジト目より、俺はそっちの方が好きだぞ?」
「……! ほ、本当?」
「ああ、本当だ。可愛いよ、ミーナ」
「か、かわっ!? も、もうー! ケンジー! からかわないでよー!」
「あははは、ミーナは可愛いなぁ……」
俺はそう言いながら、ミーナの頭を撫で始めるとミーナは「子ども扱いしないで!」などと言いながら、小さな手で俺の腹を殴り始めた。(全然、痛くない)
その光景を目の当たりにしたルルナたちが俺とミーナと共に家に帰った時、頭ナデナデを要求してきたのは言うまでもない……。