やっちまえ!
今日の朝、学校で最後の妹候補である『ミーナ・ノワール』と『兄妹契約』を結んだ。(お互いの血を飲めば完了)
ミーナに放課後に会おうと言われたため、俺とルルナとマキナとマリアとアヤノは放課後、急いで家に帰ると異世界へと転移した。
「さてと……ミーナ! 来たぞー! どこにいるんだー!」
俺がそう叫ぶと、背後から声が聞こえた。
「こっちだよ、ケンジ」
俺が振り向くと、そこには黒い瞳と黒髪ツインテールと黒いゴスロリ服が特徴的な美少女……いや、美幼女がいた。(常にジト目)
「よう! 待たせたな!」
「待ちくたびれたから、罰として私と戦ってもらう」
「え? なんでだ?」
「私は放課後に会おうとは言ったけど、その前からずっと待ってたんだよ? 女の子を長時間待たせたら、ダメ……」
「す、すまない! これでも急いで帰って来たんだ! 許してくれ!」
「許してください。『ミーナ』様でしょ?」
「え、あっ、うう……」
「そんなことも言えないの? 兄として……いや、人として、ここは覚悟を決めるべきでしょ?」
「うーん、でも……」
「ケンジ。私が嫌いな人の特徴を教えてあげるから、それに当てはまらないようにしてみて」
「え? あー、うん。分かった」
「分かりました、でしょ?」
「わ、分かりました!」
「よろしい。じゃあ、私が嫌いな人の特徴その1。……それはズバリ、はっきりしないところだよ」
「はっきりしないところ?」
「今のケンジみたいにオロオロしてる人を見ると無性に腹が立ってくるから、気をつけてね?」
「あ、ああ」
「はい、でしょ?」
「は、はい!」
「よろしい。じゃあ、次ね。私が嫌いな人の特徴その2は……ズバリ、バカ……だよ」
「バカ?」
「これは頭の良さじゃなくて、おかしな時に空回りする人を指すから、間に受けないでね?」
「ああ」
「んー?」
「あっ……は、はい!」
「よろしい。じゃあ、最後の一つを言うよ。私が嫌いな人の特徴その3は……ズバリ、人の気持ちを理解しようとしないところだよ」
「そんなやついるのか?」
「いるよ。意外と近くに」
「え? 誰だ? それ」
「……ケンジのことだよ」
「え? 俺?」
「だって、そうでしょ? ここに来てすぐに私を探し始めるし、他の4人と一緒に異世界に転移したのにも関わらず、全員放ったらかしにするし、私がどれだけ待っていたのかも知らないくせに呑気にやってきて、反省の色がまったくない。正直に言うと、私はケンジのこと……嫌いだよ」
その言葉が俺の心にグサっと刺さった。ズバズバ言うなー、ミーナは。けど、俺だって言われっぱなしじゃないぞ!
俺は反撃を開始した。
「じゃあ、言わせてもらうがな! 俺はお前の命令を聞くつもりなんてないし、他の4人に命令されても俺は自分にできることしかしないぞ!」
「ううん、私の言うことは絶対に聞いてもらう」
「じゃあ、試してみるか?」
「望むところ……だよ」
その時、ルルナが俺とミーナの間に割って入った。
「はいはい、2人ともそこまでだよー」
「ルルナ! なんで邪魔す……」
「なんか言ったー?」
ルルナは俺に笑顔でそう言ったが、その顔からは妙な威圧を感じたため。
「い、いや、なんでもない」
そう言うしかなかった。
「分かればいいんだよー。分かればー。えーっと、ミーナちゃんだったかなー?」
「そう……だよ」
「そっかー。なら、お兄ちゃんの代わりに私たちと戦ってくれないかなー?」
「あなたたちと私が戦う?」
「うん、そうだよー。お兄ちゃんがミーナちゃんと戦っちゃうとミーナちゃんの闇魔法もお兄ちゃんが使えるようになるから、勝つのは難しくなるでしょー?」
「たしかに、四属性を使えるケンジと戦ったら、私は不利だね……。いいよ、やってあげる」
「そっかー、じゃあ、もう始めていいかなー?」
「いつでもいいよ」
「よーし、それじゃあ、みんなー! 行くよー!」
『おおー!!』
ルルナ・リキッドとマキナ・フレイムとマリア・ルクスとアヤノ・サイクロンは一列横隊になると、ミーナ・ノワールに攻撃を開始した。
ルルナの水魔法は水でできた巨大なヘビ。マキナの炎魔法は巨大な炎鳥。
マリアの光魔法は巨大な雷獣。アヤノの風魔法は風でできた巨大な隼であった。
だが、ミーナの闇魔法はひと味もふた味も違った。なぜなら、闇でできたヤマタノオロチだったからだ。
俺はこの時、ルルナたちがミーナに勝てるわけがないと思った。
理由はヤマタノオロチは酒で酔わせた状態なら、アメノハバキリで倒すことができるが、こんなところに酒があるわけがなかったからだ。
だが、俺の考えとは裏腹にルルナたちはアイコンタクトをすると、四方に散らばり、ぐるぐるとヤマタノオロチの周囲を走り始めた。
なるほど! これなら、相手の攻撃を避けながら、自分の攻撃を当てることができるな! やるじゃねえか! あいつら!
俺はその時、感心していたが、闇製のヤマタノオロチはルルナたちの攻撃を吸収できることがわかった瞬間、一気に絶望した。
光をも喰らう闇……か。ははは、そんなの勝てるわけないねぇ……。
俺がそんなことを考えていた時、ルルナたちは空を飛んだ。
な、なんだ? 一体なにをする気なんだ? ルルナたちは円になって手を繋ぐと。
『集まれ! みんなの魔力! そして、全てを滅する力となれ!』
ルルナたちの体がそれぞれの属性の色に染まったかと思うと、それぞれの属性を隣の人に送り、それをまた隣の人に送り……という行動をし始めた。
まさか! 全員が四属性の力を一時的に使えるようにしているのか! なんてやつらだ!
ミーナはそれに気づき、ヤマタノオロチの九つの頭をルルナたちがいる方向に向けさせ、エネルギー波を出そうしていた。
だが、ルルナたちの儀式はすでに終了していたため、あとは突っ込むだけだった。
「やっちまえ! みんなー!」
俺は思わずそう叫んでいた。すると、ルルナたちは闇製のヤマタノオロチがいる方へ急降下し始めた。
『いっけえええええええええええええええええ!!』
果たして、ルルナたちはミーナを倒すことができるのであろうか?