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いつでもいいぜ!

 魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。

 この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。

 俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。

 俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。

 俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。

 俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。

 え? 高校が午前中で終わるわけがないだって? それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。

 だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。

 さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。


 夏休み……俺の家……俺の部屋……。


「さてさて、お兄ちゃんはいつ目覚めるのかなー?」


「さぁ、それは私にもわかりません」


「そっかー。でも、きっと大丈夫だよね」


「ああ、そうだな」


「でも、少し心配」


「ミーナちゃん、そんなに心配しなくても大丈夫だよー」


「そう……かな?」


「ええ、そうですとも」

 

「うん、そうだね」


「だな」


「そっか……なら、もう少し待ってみる」


「うんうん、そうしよう、そうしよう」


 ルルナ、マキナ、マリア、アヤノ、ミーナはベッドに横になっている彼がパワーアップした五属性の力をきっとものにしてくれると信じることにした。


 *


「こ……ここは……どこだ? 俺は……いったい……何を……していたんだ?」

 

「ケンケン、大丈夫か?」


「その声は……クロエか?」


「ああ、そうだ。お前の使い魔であるクロエ・ドロップアウトだ」


「そうか……。けど、なんでお前の声が聞こえるんだ?」


「私はお前の使い魔だぞ? お前の心の中だろうと容易に潜り込める」


「そ……そうなのか?」


「ああ、そうだ。それにしても、ここは暗いな」


「ああ、そうだな。真っ暗だ」


「まあ、あれだ。お前の体の中にあるパワーアップした五属性の力をものにできれば、ここから出られるから頑張るのだぞ」


「え? あー、うん、わかった」


「では、私はそろそろ行くぞ」


「え? もう行くのか?」


「ああ、いつまでもこんなところにいたら、息が詰まりそうだからな」


「そうか……。じゃあ、またな。クロエ」


「ああ、またな。ケンケン」


 それっきりクロエの声は聞こえなくなった。

 さて、これから何が起こるのだろうか……。

 俺がそんなことを考えていると、俺の周囲に真っ赤な炎が出現した。


「おいおい、冗談じゃないぞ。おいしく料理されるなんてごめんだ」


 俺はそう言いながら、炎を振り払おうとした。

 しかし、その炎はまるでヘビのように俺の体に巻きついた。


「こ、こらっ! 離せ! 俺はこんなところで終わるわけにはいかないんだよ!」


 俺はその炎を消すために体の周囲を水で覆った。

 すると、それはパッと消えた。


「な、なんだったんだ? 今のは……」


 俺がそう言うと、体の周囲を覆っていた水が俺をミノムシ状態にした。


「……もがっ……あがっ……ぐうっ……!」


 俺は自分で作り出した水に殺されそうになったが、咄嗟にそれを操作し、風でそれを吹き飛ばしたため、なんとかなった。


「はぁ……はぁ……はぁ……し、死ぬかと思った」


 俺はほっと胸を撫で下ろしたが、次はその風に吹き飛ばされた。


「……ぐっ……! こんなもので……俺を……どうにかできると……思うなあああああああああああ!!」


 俺は咄嗟に闇でそれを吸収した。


「……こ、これで……終わり……か?」


 しかし、今度はその闇が俺を吸収し始めた。


「こ……この! 俺は……まだ……死ぬわけには……いかないんだよ……!」


 俺はその闇が吸収しきれないほどの光でそれを照らした。


「ど……どうだ……! 俺は……やったぞ!」


 俺は息を切らしながら、そう言った。

 その直後、黒い体と赤い瞳が特徴的な俺が目の前に現れた。


「なるほど……最後はおのれに打ち勝てということか」


『お前は弱い。魔王の足元にも及ばない』


「そうだな。たしかに俺は弱い……けど……!」


 俺は五属性の力を身にまとうと、もう一人の俺に右拳を向けた。


「来いよ! 俺が弱いかどうかはお前のその拳で確かめろ!」


 そいつは、闇の力を身にまとうと、右拳を俺に向けた。


『では、そうさせてもらおう。だが、お前は俺には勝てない』


「そんなのやってみないと分からないだろ!」


『闇とは、全てを黒く塗り潰すもの。それすなわち色の究極形態。そんな俺に勝てるとでも思っているのか?』


「たしかに、闇は……黒は全部を真っ黒に染めちまう色だ。けどな……それに唯一対抗できる色があることをお前は忘れているぞ!」


『ふん、では、それを俺に見せてみろ。できるものなら……な』


「ああ、やってやるさ! じゃないと、みんなに顔向けできないからな!」


『そうか……。では、行くぞ』


「ああ! いつでもいいぜ!」


 両者は数秒後、激しくぶつかった……。

 どちらが勝つのかは、まだ誰にも分からない……。

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