ギャンブラー
チルスが偵察から帰ってきている時に伝達魔法が来た。
「どうした?何かあったか?」
「大変です!聖都に魔軍侵攻です!」
「分かった、すぐ向かう。」
伝達が終わり、テレポートしようとした瞬間、身体が動かなくなった。
「なっ!?」
動こうとしても動かない、まるで石のようだった。
「ダメだよチルス君、いや、ベルラルク君。邪魔をしちゃあダメだよ。」
「久し振りだな、フロール。昔の名を忘れていたよ」
「100年前に私に負けて種族追放をされて人間側に着いた貴方如きが私の名前を呼んでもいいと思ってるのかしら?」
フロールは銀のナイフをチルスの顔に近付けた。
「中身は人間でも身体はどうかしらねえ?」
フフと笑みを浮かばせている、その姿はサディストそのものだった。
「ま、やらないけどね。」
ナイフをしまい、フロールは続けた。
「あの子達が戦い終わるまで、貴方はここにいてもらうわ。貴方がいると負けちゃうからね。」
「なるほど、だがこちらにも強い奴等がいるんだ、そう簡単には勝てないさ。」
「ザウリス君かな?あの子は強くなるよ。私達以上にね。」
「どういう事だ?」
「君は知らなくていい事だよ、という訳で暫くそこからザウリス君達を見ててもらうわ、死ぬ様を見届けてあげてね?」
チルスは黙って見る事しか出来なかった。
「くっ、ちょこまかと。」
ザウリスが剣を振るうが、容易に避けられてしまう。5回もダイスを振られてしまい、全体的に能力が上がっているのだ。
「次のダイス、行くわよ?」
彼女が引いたのは「6」だった。次の瞬間、彼女が持っていた武器が変形し、短剣から長剣と変わった。
「武器変質かあ、これもいいかも。」
ザウリスへと近付き、攻防戦へとなっていった。ここから長引くと消耗戦になってしまい、体力が無くなっているザウリスにとってはここで仕留めないと負けてしまう。サーニャから回復魔法をもらってはいるが追い付かない状況なのだ。
「戦技:鎌鼬」
風を飛ばし切り裂く戦技を彼女目掛けうったのだが、擦り傷がついただけだった。
「こんなやわな攻撃で通用すると思うな!」
彼女はザウリスの攻撃の倍以上の風を放ち、ザウリスを吹き飛ばしつつ切り刻んだ。幸い魔装があり助かったが、無かったらそのまま木っ端微塵になっていたかも知れない。
「危ねえ、魔装のお陰で助かったが、こりゃ全身傷だらけだな。」
「助太刀するぞ。」
マールとデオルが助っ人として来てくれた。
「助かります、こりゃ一人じゃ難しいですからね。」
「デオル!サポートを頼むぞ。」
「了解です!上位魔法:俊敏向上」
「速さをあげれば同等に戦えそうですね、行きますよ!マールさん!」
剣と剣が交わる音が響き、それは一種の音楽になり、見た者を虜にしていった。サフォイアも虜になっていた、自分もこのように強くなりたいという目標も出来る程に。
「小賢しいわね、さあ次のダイスよ。」
出た数字は「4」だった、女はニヤリと不気味な笑みを浮かべた。
「死ね!最上位魔法:死の接吻<キス・オブ・デス>」
投げキッスをし、その飛ばした方向がマールの方向だった。それをいち早く気付いたデオルはマールめがけて走り、デオルを庇い、そのキスはデオルに当たった。
「マールさん…生きて…下さい…」
彼はそう言い残し、死んでしまった。マールはデオルの遺体を強く抱きしめ、泣き崩れてしまった。守れなかった罪悪感と憎しみがザウリスを襲った。
「…マールさん、万が一の場合があるので逃げて下さい。」
マールは頷き、デオルの遺体を運び、後方へと下がっていった。そしてザウリスは呪文を唱えた。
「魔装:暴」
甲冑は形を変え、ザウリスを包んだ。理性を無くす代わりに攻撃力を一時的に高めるスタイルに変更し、確実に仕留める。ザウリスは理性を失い、暴走状態へと入った。
「ザウリス、あの技を使ってしまったか、止められる方は居ないのに…!」
「ルーダさん、チルスさんから渡された笛がありますが、これで何とかなると思います。」
話している間にも、剣がぶつかり合う音は止まなかった。ザウリスはマルシューラの腕を切り落とし、下へ叩きつけた。そして、持っていた剣で切り刻んだ。—何度も何度も刺した。
—彼女の叫び声も惨めな命乞いも聞こえず
—ただただ切り刻んだ。
そして暴走したザウリスの叫びは勝利宣言の如く轟いた。—だがそれに続き喜ぶ者は居なかった、何故なら皆唖然としていたからだ。ザウリスは目標を変え、味方陣営の方へ向かってきた。すぐさまサーニャが笛を吹き、暴走状態を解除でき、黒い鎧は剥がれ、ザウリスが出てきたが、酷く損傷しており、まるで鎧を貫通しているように見えた。痛みに耐え切れず、ザウリスは倒れ、そのまま意識を失った。
「ふっ、良くやったザウリス。」
「やっぱり可愛いわあ、食べちゃいたいけど、まだまだ成長するから殺さないでおかないと。」
フロールは振り向き続けた。
「忠告しておくわ、次の進行は水都よ、ロード君単体で向かうと思うわ。」
それじゃとフロールはテレポートした、テレポートした瞬間にチルスが動けるようになった。
「ベルラルク…か、棄てた名をまた聞くとは思わなかった。」
チルスはテレポートし、帰って行った。




