38曲目
プロットなどおさらい。
景色の表現などの勉強。
展開の持って行き方などで、遅くなりました。
申し訳ありません。
なんとも不甲斐ないことだろうか。
先輩たちの中途半端な考えと行動を目の当たりして憮然とし苛立ちが溜まる俺の代わりに、ケンが塾や予備校などに一目散に向かうであろう先輩たちをのんびりと見送った。
そうして先輩たちはバンド練習もほどほどにとかいうふざけた時間しかせずに帰って、軽音部の活動で使用する音楽室には俺とケンだけが取り残された。
文化祭本番前間近だというのに、なんという緊迫感もなく熱意の無い意志だ。
「チッ……クソッタレっ!」
俺は先輩方の理不尽で張りが無い態度に一瞬にして感情が高ぶる。
グツグツと煮えたぎる怒りに身をまかせて近くの椅子を蹴っ飛ばした。
ケンが、そのけたたましく派手な音を聞き思わず顔をしかめる。
俺はそのまま譜面台に乗せた歌詞ノートを取りあぐらをかいて地面に座る。
そしてテレキャスターからシールドを繋いでいるアンプに点いた"Marshall"チャンネルから"Clean"チャンネルへと切り替えて、テレキャスターの弦を弾き固く軽い音になったことを耳で確かめてから、いつも通り自分の楽曲を作詞作曲する作業へと入る。
怒りや悲しみ、そういった感情が出るといつもこうだ。
「陽ちゃん、イラつくのはわかるけど、物に当たるのは止めなよね」
「んだよケン、だってあんなふうに言われたらムカつくだろ!?」
俺はノートから視線を外し注意したケンに目を向ける。
正直言って、俺は今ものすごく焦りを感じさせられている。
先輩が塾や予備校で勉強している間、女子軽音部はさらに練習を積んでいる。
なのに男子軽音部の気持ちも練習に対する態度も、全然なっちゃいないんだ。
これでは女子軽音部と男子軽音部との差はみるみるうちに広げられてしまう。
俺はそれも踏まえてこうして当たりたくもない物に当たってしまったのだ。
「うん。わかるよ……せっかく練習に来たのに先輩も部長も塾や予備校に行かなきゃって、さすがにあんまりだよね。本当に残念だし、陽ちゃんが言ってた通り今日はここに来なくてもよかったかも。本当にゴメン」
テレキャスターの音以外のは静まり返った音楽室に、ケンの声が広がる。
文句を言わずに部活に出て先輩や部長さんに顔を出そうと俺を誘ったことに責任を感じているのか、ケンは申し訳なさそうにどんよりとした顔を覗かせながら言って頭を下げる。
俺は理不尽で身勝手な先輩方や部長の代わりに謝る友人を見て思わず言葉を失い、もう一度地面に置いて開かれた歌詞ノートの方へと目を移してテレキャスターでオープンコードやロックコードなどのコード弾きやアルペジオなどを試しながら熱した気持ちを落ち着かせる。
「いいんだよ。大体ケンのせいじゃないんだし、俺に謝んないでくれ」
俺はケンの方に振り向かずギターを弾きながらそう言った。
もちろん、ケンは悪くないし真面目に練習をするいいヤツだ。
悪いのは勉強の片手間に音楽をやる考えを持つやる気のないヤツらだ。
その場しのぎで音楽に触れて何気なく時間を無駄に過ごしてヘラヘラする。
そういう何事もやる気のないヤツを見ていると俺はイラついて仕方がない。
クソっ、自分自身がイラついているからか歌詞が全然いいのが浮かばねぇ。
浮かんでくるのは今俺自身が抱え込んだ憎悪と激情からくる怒りを表す言葉。
例えいい曲を作れたとしても、禍々しくどんよりとした楽曲しか仕上がらない。
「まあ、過ぎた時間のこと考えても仕方ねえな。2人で合わせるか」
「うん、そうだね。音楽室の鍵も置いてってもらったし時間もあるしね」
俺は歌詞ノートを手にスッとその場から立ち、先ほどの譜面台に置く。
そしてアンプのチャンネルを"Clean"から"Crunch"に切り替えて音を確かめる。
乾いた感じの音が出てギターのスイッチを切り替えたりボリューム調整をする。
調整がし終わり音作りができた俺は、同じくギターを構えるケンに目くばせ。
向こうもそれに目を見て応え、こくんと首を小さく縦に振る。
そして俺とケンの2人で、文化祭でやる曲の練習を始める。
俺がコードを弾き、ケンがアルペジオを弾いて構成を確かめていく。
楽曲は俺のオリジナルを入れてやりたいと願ったが、多数決でカバーとなった。
先輩たちがこぞって好きな楽曲を言い争いしてしまい部長がなんとかまとめた。
そこで後輩である俺の言い分が通るわけがなく、ほぼカバー曲で攻めることに。
まあ俺としてもこんなやる気のない男子軽音部で、俺自身が1から熱心に考えたオリジナルを弾かせたりするのは癪に障るし、どうせなら夏休みで作る俺のバンドでケンとまだ見ぬ新たなバンドメンバーと共に合わせてライブでドカンと決め込んだ方が気分も最高潮になれるだろう。
ケンと楽曲を合わせながらふと考える。
それにしても先輩や部長は、どうして俺をメンバーに選んだんだろう。
例えば、まだまだ先なのにもう受験を控えて勉強しなきゃという3年生が帰るならともかく、今日はそういったことも大した用事も無さそうな2年生まで楽器をケースなどにしまってそそくさと帰ってしまって誰もいなくなっている。
三岳部長と3年生が帰るときに、流れでなんとなくいなくなってしまったのだ。
それも俺の顔を見ては訝しげだったり、怯えたりしてそそくさと音楽室を出た。
ああ、そうか。
こういったことはよくあることだし俺も別に気にすることはないのだが、多分、いや十中八九真っ赤に染めて不良感出しまくって口も態度も悪い俺のことが気に食わないのだろう。
俺がいないときは、いつも遅くまで学生カバンや服のどこかに隠し持っていた携帯ゲームとかスマホのアプリでダウンロードしたソーシャルゲームとか持ち出して部活動ができる時間を目一杯使って遊んでいるらしいからな。
そんで俺の悪口を何度も何度も言って笑いのネタにしているらしい。
ま、そういった陰でコソコソやることしかできない人の特権なんだろう。
音楽をないがしろにしてバカにする人とセッションするのは、反吐が出るぜ。
俺の中でまた新たな激情が生まれて、不満を湧き上がらせてしまう……。
ご愛読まことにありがとうございます。




