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雷帝は修羅の道を歩く  作者: 九日 藤近
第二章 シナーラ
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86 佐村紫音

 今日から私、佐村紫音はヘルスーナ魔術学院に入学する。


 周りからは出来損ないだとか、魔術師失格とか言われているが、魔術が使える以上どこかしらの学園には入学しなくてはいけない。幸い私には魔力量も、魔術に対しての知識もある。入学するだけなら、たいして難しくはなかった。


 しかし、そんな私に最初の関門が迫ってきた。


 学年別サバイバルゲームだ。


 魔法使う才能はあっても、戦う才能はない私は、すぐに外に出た。


 最初のほうに丘のほうから花火が上がったような気がしたが、その後すぐに戦闘をしたため、それは定かではない。


 すぐに、三条君の活躍が私と、他の脱落者が待機している広場のモニターに映し出される。


 やっぱり、三条君はものすごく強い。


 普通、式神なんて一度に動かせて三百ほどなのに、今索敵を含めて、五百の式神を展開している。


 三条君の式神は、次々と生徒たちは葬っていく。


 始まってからそんなに時間はたっていないのに、脱落者はもう八割はいる。


 そんな時、三条君以外の生徒の戦闘がモニターに映し出された。


 一人の五組の生徒と、五人のチームだ。


 五組の生徒は、男の子なんだろうけど背が小さく、可愛い顔立ちをしていた。


 五組の生徒は、丘の上に陣取っている。


 私は五組の生徒が、ひどい目に合うんじゃないかと、少し心配になった。


 しかし、その心配は無用なものだった。


 五組の生徒が居合の構えを取ると、五人チームの生徒たちが、一瞬で戦闘不能になった。


 この場にいる何人が、彼の動きが、彼が何をしたのか見えただろうか。


 私には、何も見えなかった。ただ、五人が戦闘不能になったことしかわからなかった。


 スクリーンが切り替わる。


 また、三条君が戦っている場面だ。


 三条君は、式神を操って、六人のチームをすぐに戦闘不能にする。


 しかし、その戦闘には先程の五組の男の子のような圧倒的な力の差があるようには思えない。


 三条君の戦いは、数で押しているだけに見える。


 事実、さっきの戦闘でも、何体かの式神は撃破されていた。


 ほどなくして、五組の生徒と三条君の戦いが始まった。


 三条君はとにかく式神を召喚して、五組の生徒を押しつぶそうとしている。


 しかし、五組の生徒は近づいてくる式神を次々と撃破していく。


 腕はぶれているが、この戦闘はギリギリ見ることができた。


 五組の生徒はすさまじい技量で式神を迎撃していく。


 「嘘だろ。」


 その戦闘が始まって、式神の数が、数えるのもおっくになってきたころ、一人の生徒がそう呟く。


 聞けば、この五組の生徒、親のどちらも魔術師ではないらしい。


 それなのに、この技量。


 広場は、ざわざわと騒がしくなった。


 しかし、そのざわめきもすぐに収まることとなる。


 三条君がついに十万の式神を召喚し、五組の生徒がそれに飲み込まれたのだ。


 「まあ、さすがに三条には勝てないか。」


 「出来損ガベージないには、これが限界か。」


 そんな言葉が、広場にいる生徒たちが言い合っているが、一向に五組の生徒がこの広場に転移される気配はない。


 スクリーンに目を移すと、ちょうどその時式神が丘からはじけ飛んだ。


 「!?」


 広場に集まる生徒たちが息をのむ。


 いつの間にか上級生たちもこの広場に来ていて、その光景を見る。


 「まじかよ。」


 そこに映っていたのは、あの五組の生徒だ。


 その生徒はおもむろに手を振り上げると、空間を殴りつける。


 私たちは顔に疑問符を浮かべるが、彼がもたらした結果によって、その顔は驚愕に見開かれることとなる。


 なんと、空間に罅が入ったのだ。


 その罅はどんどん大きくなっていき、すぐに大きな亀裂になる。


 「ひっ!」


 それは、誰が挙げた悲鳴だろうか。もしかしたら、全員が挙げた悲鳴だったかもしれない。


 だが、それも無理はないだろう。なぜなら・・・・。


 「幽霊?」


 そうとしか言いようのない何かが、五組の生徒が作った亀裂から幽霊が出てきたのだ。


 それも、一体だけではなく、何体も出てくる。


 やがて、幽霊たちは二万五千ほどになった。


 それでも、十万の式神を召喚した三条にはまだ数的な有利がある・・・・かに思えた。


 五組の生徒が手を振り下ろすと、霊たちが式神に殺到する。


 さすがに二万五千に対して十万では、話にならないと思った私は、次の瞬間目を見開いた。


 幽霊たちが式神達を蹂躙し始めたのだ。


 「すごい。」


 私は無意識のうちにそう呟いていた。


 勝負はすぐについた。


 勿論五組の生徒の圧勝だ。


 三条君の式神は、五組の生徒の幽霊に手も足も出ずにどんどんその数を減らしていく。


 すぐに三条君の式神は一体残らず撃破された。


 五組の生徒は真っ黒い大鎌を取り出し、三条君に近づいていく。


 その大鎌は、画面越しのはずなのに、私に恐怖心を抱かせる。


 周りの生徒も同じようで、足をガクガク震わせているものまでいる。


 五組の生徒は三条君に近づいて、その首を鎌で刈り落とす。


 その瞬間、三条君が広場に転送されてくる。


 三条君は自分が負けたのが信じられないのか、呆然自失にたたずんでいる。


 そして、演習場の扉が開き、五組の生徒が出てくる。


 五組の生徒は何かを言って、どこかに行ってしまった。何を言っていたかは、遠すぎて聞こえなかったが、それを聞いていたらしい五組の生徒は、何かを決心したかのように拳を握る。


 私は、遠ざかる彼の背中をずっと見つめていた。




 私はチームメイトができなかった。


 それは、私の性格にある。


 私は、魔銃を使って戦闘する流派なのだが、引き金に指をかけると、もう魔銃を撃つことしか考えられなくなるのだ。


 そのため、すぐに魔力切れを起こすわ、意味もなく魔銃を乱射するわで、仲間としてはこれ以上やりにくいものはないだろう。


 そのため、私は教師に斡旋されたチームに入る事になった。


 チームに用意された部屋に入ると、もうすでに二人の生徒がいた。一人は、静かなクールビューティーと言ったった感じの少女で、もう一人は元気いっぱいの少女だった。


 どちらも私と知り合いで、魔術師として致命的な欠点があった。


 私は少し彼女等と雑談をした後、手近な椅子に座る。


 しばらくすると、扉の前に人の気配がした。


 「失礼します。」


 そう言って、ドアが開かれた。


 ドアの前に立っていたのは、サバイバルゲームで大活躍していたあの五組の生徒だ。


 「あなたが新しいチームメイトさんですか?」


 私は、なぜかそう口に出していた。


 私たちは自己紹介をする。


 彼の名前は、繭澄椎名と言うらしい。


 椎名と言う名前は校内では有名になっていたが、苗字を聞いたのは初めてだった。


 私たちはその後、椎名君と模擬戦をすることになった。


 椎名君が、私たちの実力が知りたいと言ったからだ。


 私たちに戦う力はないのだが、それは説明しても分からないだろう。


 私たちは演習場に行くが、演習場は開いていなかった。


 どうするのかと思ったが、椎名君は演習場をあっさり離れる。


 椎名君はその後少し移動すると、周りに人がいないか確認して、魔法を発動させた。


 驚くべきことに、その魔法は転移魔法だった。


 私たちは椎名君にどういうことか問い質したが、のらりくらりとかわされてしまった。


 そして、転移した先では明らかに人間ではない女性がいた。


 どうやら椎名君と知り合いらしい。


 とにかく、私たちは椎名君が言うには修練場で模擬戦をする。


 案の定私はすぐに魔力切れで倒れる。


 その後、他のチームメイト--楓とスミレ--とも模擬戦をしたが、私たちはただ醜態をさらすだけとなった。


 椎名君は模擬戦を終えると、私たちを呼び集めた。


 「バカかお前ら?」


 椎名君が放った一言は、それだった。


 当然だろう。こんなにも弱いのに、魔法学院に入学しているのだから。


 私たちはうなだれるが、椎名君は違った。


 曰く、私たちには才能があるが、それをうまく使いえていない。


 椎名君はおもむろに散弾銃を虚空から取り出す。


 その散弾銃は、性能的にはアーティファクトと同等か、それ以上だった。


 私は初めて魔力切れを起こさずに魔銃を撃つことができた。


 その後、楓ちゃんには杖を。スミレちゃんには理論を与えていた。


 私たちは、自分たちの才能を使うすべを手に入れたのだった。


 そして私は、淡い恋心を椎名君に抱き始めたのだった。

前に、魔術師の目標について書きましたが、あれは魔術師単体ですることを目標としています。


演習場に使われている転移装置は、所詮アーティファクトと言われるもので、人類には、その解析もコピーもできません。


混乱した方はすみませんでした。


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