85 説明会
一部修正しました。
このヘルスーナ魔法学院だが、 中間試験がない。期末試験は各学期ごとにある。
そして、この学校は卒業試験が、期末試験とは別に存在する。
この卒業試験は、三つの項目がある。一つ目は、試験官との模擬戦。二つ目は術式の構築。三つめは術式の使役だ。この三つのうち、どれか一つでも合格できなかったら、魔法学院の高等部には進学できない。
しかし、この試験で過去合格できなかったものはいない。
そんな説明を、学園の体育館で龍川がしていた。
なぜ龍川がここにいるかは、およそに十分前にまでさかのぼる。
今日は、学院に卒業生が来て、この学院の卒業試験と、魔術協会について講義をするそうだ。
俺は、まったく興味がなかったので、それを聞き流す。
魔術協会のほうは、もうすでに魔術師免許を持っているし、たとえどんな試験であろうと、俺なら楽に突破できるからだ。
俺はそんなことを考えながら、教員の指示に従って体育館へ移動する。
体育館には、俺たち五組が最後に入った。ほかの組の生徒たちは、すでにいい席を確保している。
今日来る卒業生は、魔術協会屈指の実力者で、政府にもコネがある大物らしい。
そんな卒業生が来ると聞いて、生徒たちは興奮しているようだ。
時間が来ると、教師の一人がマイクに向かって話し始める。
『今から、卒業試験及び、魔術協会についての講義を始める。今回来てくださったのは、僅か十九歳で魔術師免許を習得した天才、龍川健吾さんです!』
そう紹介されてステージに上がったのは、殲滅部隊の隊長、龍川だった。
「ブッフォ!」
俺は、思わず吹き出してしまう。
そのせいで俺のほうに視線が集まるが、俺は咳払いをしてごまかす。
その時、龍川に見つかったが、俺はあまり気にせずそのまま座っていた。
「じゃあ、説明を始めるぞ。」
龍川はそう言って、説明を始める。
余談だが、俺はこの時初めて龍川のフルネームを知った。
そして、龍川は試験についての説明を終える。
ここが、最初に行っていたところだ。
「次に、魔術協会だが、これはざっくり言うと魔術師の仕事斡旋所のようなものだ。この魔術師協会だが、魔術師免許がなきゃその仕事の斡旋もしてくれない。」
龍川はそこで言葉を切ると、生徒たちを見渡す。
「ここで問題だ。魔術師免許を取るには三つ、方法がある。勿論一つ目は試験に受かることだが、他二つは何かわかるか?」
龍川の質問に、何人かの生徒が手を上げる。
「じゃあ、そこの男子。」
そう言って龍川が指名したのは、三条一馬だ。
「はい!魔術の研究などが認められることです!」
一馬は、弾んだ声でそう言う。
この龍川だが、さっきの紹介の仕方で分かると思うが、魔術師の世界ではかなりの有名人で、いわゆるカリスマなのである。
その龍川に指名されたのだから、喜ぶのは当然だ。
「正解だ。じゃあ、もう一つはわかるか?」
龍川は一馬に、再度問いかけるが、一馬は答えられない。
「・・・すみません。わかりません。」
一馬は悔しそうにそう言った。
「ま、気落ちするな。それが普通だ。大体、この三つ目で魔術師免許を取ったのは、一人しかいないからな。」
龍川はそう言ってこちらのほうを見てくる。
「じゃあ、そこの後ろのチビ。わかるか?」
龍川が指名したのは俺だ。
俺は静かに立ち上がり、答えを口にする。
「圧倒的な力を見せることだ。」
俺が言った言葉に、体育館にいる人間が噴き出す。
そこにいる人間が、そうではないと知っていたからだ。
魔術師協会は、どんなに力があるものでも、正確面や、様々な要素を無視して免許を発行することはありえない。そのため、俺が言った方法は、笑い飛ばされたのだ。
しかし、龍川だけは違った。
「ああ、正解だ。座っていいぞ。」
俺は座る前に、口の動きで、『次チビって言ったら殺すぞ』と言った。
龍川は笑うだけで、すぐに説明に入った。
「魔術師協会は、魔術師にランクを与えている。そのランクは1~10まであって、数が大きくなるほど高ランクになる。ちなみに、俺はランク8だ。」
俺の答えと、それを肯定した龍川に、戸惑っていたが、説明を再開したことで、説明を聞きに戻る。
「で、さっきも言ったがこの方法で魔術師免許を取ったのは一人だけだ。」
龍川は体育館を見渡す。
「ちなみに、そいつは俺よりも強い。」
龍川の発言は、体育館をざわめき立たせるには十分だった。
龍川は、ランク8。最高ランクの二つ下とはいえ、実力で言ったら魔術師協会の中でも、トップと同じぐらい高い。
その龍川でしても、勝てない相手。それは数人しかいないため、生徒たちは憶測を言い合う。
「ところで・・・。」
体育館がざわめいているところに、龍川の声が響く。
「今年の生徒は優秀なのが多いと聞いたが、一番強いのはどれだ?」
どんな意図でそんな質問をするのか、俺は一瞬で悟った。
こいつは、俺に嫌がらせをしたいのだ。
いつも俺は龍川を振り回してばかりだから、今度はお前が振り回されろ。
龍川の表情はそう語っている。
(あのクソ野郎!)
俺は心の中で龍川を口汚く罵る。
「三条君です!」
一人の女子生徒がそう言った。
「そうだ!一馬君が一番強い!」
それに便乗して、生徒達は三条が最強だと言い始めた。
「へぇ。その三条ってのはどいつだ?」
龍川は楽しそうに笑う。
「僕です。」
三条は得意げに立ち上がる。
「お前が最強?」
龍川は、三条を上から下まで見ると、溜息を吐く。
「椎名。立て。」
龍川は俺に立つように言う。
「ちっ。なんだよ。」
俺はさっきとは違い、荒々しく立ち上がる。
俺の態度に、生徒たちは避難がましい視線を向けてくるが、すべて無視する。
ちなみに、同じチームの奴らは今ここにはいない。全員、早く来ていい席を取っていた。
「お前、話してないのか?」
「話すと思うか?」
龍川はものすごく楽しそうに俺に問いかける。
「じゃあ、俺が話すぞ。」
「やめてくれ。」
「部隊に推薦したのは俺だぞ?」
「うぐっ!」
俺は、一応受けた恩は返すことにしている。なので、路頭に迷いかけたいた俺に職をくれたのは、龍川の頼み(?)は断れない。
「・・・・・勝手にしろ。」
俺にはそれしかいうことができない。
「おう!言わしてもらうぜ!」
龍川は、今日一番の笑顔でそう言った。
「さっき言った俺より強くて、バカげた方法で魔術師免許を習得した奴ってのが・・・・・。」
龍川は一瞬ためると、爆弾を落とした。
「そこにいる椎名だ。」
その瞬間、時間が止まったのかと思うほど、ざわざわと煩かった生徒たちの声が消えた。
「はぁ。」
俺が吐いた小さなため息は、ありえないほど静かな体育館によく響いた。
「おい!椎名どういうことだ!?」
一馬が突っかかってきたが、俺はそれを無視する。
「先生。体調が悪いので早退します。」
俺はそう言って、転移魔法を使用する。
「あ、おい!ちょっとま--ー。」
俺は転移で帰った自室で、これから起こるであろうことを予想して憂鬱になるのだった。
感想待ってます。




