表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雷帝は修羅の道を歩く  作者: 九日 藤近
第一章 レムナット
20/148

19

 優が王都に入ると、死体がそこら中に散乱していた。


 「ごめん。」


 ユウは死体に向かって謝ると、王城に向かって走り出した。


 「アレンさん!ユーラさん!バズさん!トコミさん!」


 ユウは、今までここで知り合った人の名前を呼んでいく。


 「くそぉ!」


 ユウが知り合った人も、矢知りあわなかった人も、皆等しく殺されていた。


 しかし、いくら探してもレナの死体だけがない。


 ユウは城を出て、町を見て回る。


 『アミーダの服屋』のアミーダさん、名も知らぬ、奇行を多々するカップル、そのほか、ユウが知り合った、もしくは見たことのある人間の死体が転がっていた。


 やがて、ユウは城門までたどり着く。


 北の城門だけ開け放たれており、そこには大量の死体が転がっていた。


 ユウは、死体に刺さっていた一つの剣を引き抜く。ユウはその剣に見覚えがあったのだ。そう、検問で引っかかる原因になった、王国兵の剣だ。


 「まさか!?」


 ユウは北門から外に出て、草原を疾走する。


 すると、軍隊が見えてきた。そして、ユウの強化された視覚がとらえたものは、なん本もの槍で貫かれた、レナだった。


 ユウは、それを見た瞬間、ありえないほどの殺気を放出した。


 それに気づいた王国兵が、こちらを振り返る。


 王国兵が見たものは、正に悪魔だった。


 ユウは王国兵に向かって一歩踏み出す。それだけで、王国兵は二歩下がる。


 「あの子は…。」


 ユウは小さくつぶやく。


 「まだ八歳だったんだ!」


 ユウはそう言って地を全力で蹴る。


 ドン!という音とともに、ユウは弾丸など話にならないほどに速度で走り出す。


 「まだ子供だった!」


 ユウが剣を振る。それだけで、およそ三十万いた王国兵たちのうち、五万が物を言わぬ屍と化した。


 「ただの強がりな女の子だった!」


 ユウは、レナが強がっていることを知っていた。いつも、笑顔を絶やさずにいたが、ユウと一緒話しているとき以外、本当の笑顔というものを見たことがない。


 ユウは、再度剣を振る。今度は、八万の兵士が骸と化した。


 「それなのに!」


 ユウがただの飛剣を発動させるが、兵士たちは防ぐことができず、両断されていく。


 「やめろ!」


 その時、ユウに声がかかった。声がしたほうを見ると、ユウと一緒にこの世界に召喚された、勇者たちがいた。


 「なのになぜ殺せる!?」


 ユウは構わず構築していた魔法を発動させる。


 「雷滅轟槍グングニル!」


 ユウが放った魔法は、勇者もろとも王国兵をすべて吹き飛ばした。さらに、あまりの熱量に砂漠がガラス化していた。


 「ガフッ!」


 死体の中で、一人生きていたらしい男が血を吐く。


 ユウはゆっくりその男に近づいていく。その男は自分の最期を感じたのか、胸の前で手を組み、


 「神よ、命令を全うした私たちに、祝福を与えたまえ。」


 そう呟いた瞬間、ユウに首を落とされた。


 「神?」


 ユウは男が最後に言った言葉を、頭の中で反芻した。


 「神だと?」


 ユウは顔を上げる。その顔は、笑っていた。


 「ククク、ハハハハハハハハハ!」


 ゆうは、笑い出した。


 「神!?神だと!?ふざけるな!」


 ユウは笑うのをやめると、底知れない憎悪を顔に浮かべる。


 「あ、主?」


 ルキがユウに追いついたのか、声をかけてきた。


 「町や、近隣の状況を見てきたのじゃ。」


 「生存者は?」


 ルキはギリッと奥歯をかみしめると、口を開く。


 「いなかった。」


 「そうか。」


 ユウはそう言ってルキのほうを振り返り、【イカヅチ】を向ける。


 「主?」


 ルキは困惑しながら聞いてきた。


 「俺の質問に答えろ。いいな?」


 ユウが命令すると、ルキはこくこくと首を縦に振る。


 「お前は神を信仰しているか?」


 ユウがそう聞くとルキは首を横に振る。


 「我らドラゴンは、紙など信仰しておらぬ。」


 「信じていいんだな?」


 「魔物が、神を信仰すると思うか?」


 「それもそうだな。」


 ユウは【イカヅチ】を鞘に納める。


 「手伝え。」


 ユウはそう言って、ルキと一緒に魔族たちの墓を作った。



 すべての魔族の墓を作り終えると、ユウは南に向かって歩き出す。


 「どこに行く気じゃ?」


 「どこだっていいだろ。」


 「しかし…。」


 「頼むから!」


 ルキは急に声を荒げたユウを見て、言葉を詰まらせる。


 「一人にしてくれ。」


 そう言ってユウは、歩いて行った。



 その場に残ったルキは、寂しそうに呟く。


 「しかしお主はあの時…。」


 (泣いておったではないか。)


 ルキは後につながる言葉を飲み込み、里に向かって羽ばたいた。


 




 ユウが夢で見た日付は、こうして終わった。

最終的にはハッピーエンドになるので、批判などはご容赦を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ