閑話 レナの気持ち
私が最初に彼にあったのは、地質調査のため王都を出た、その帰り道だった。
最初は困惑した。人間が魔族領、それも、王都の近くで倒れているなど、ありえなかった。
しかし、彼の顔を見ると、泣いていたのか、涙の跡が見えた。私は彼のことをほっておけなくて、城まで運ばせた。何故だろう、彼の顔を見ていると、胸がドキドキする。
彼が起きると、早速謁見の間に呼び出した。彼の名前はユウというらしい。話を聞くと、彼は勇者なのだとか。しかし、王国に裏切られ、逃げてきたのだとか。そこで私は、彼を城の置くことにした。
みんなも異論はないようだ。
その後も、デートをしたり、勉強を教えてもらったりした。何故かデートをするたびに、変なカップルに会ったりもしたが、楽しかった。
そんなある日、魔物氾濫が起こった。しかしそれもユウがあっという間に全滅させてしまった。
ユウは、優しいし、カッコいいし、強い。それでも、何故か全然モテなかった。
今日は、王都の近くの山の裏でドラゴンが見つかった。古代種らしく、相当な死闘が予想された。しかし、ユウが一人で向かうと言い出した。止めようとしたが、もうユウは城を出ていた。
どれくらい時間がたっただろうか。突然外なら爆発音がした。
慌ててテラスに出ると、北門が破壊されていた。そこから、人間がいっぱい出てきた。
全部で五万人しかいない魔族は、全員で必死に戦った。でも、人間は三十万人もいて、そのうち四十人ほどの人間たちはものすごい強さだった。
やがて人間たちは城までたどり着き、私を探して城の中の人たちを殺していった。
やがて私が隠れていた部屋にも兵士が入ってきた。
「うおおおおおおおおお!!!!」
レスという兵士が、人間たちに斬りかかる。
「陛下!お逃げください!」
レスはそう言って、突破口を開く。
私はそこから城の外へ向かって、無我夢中で走る。
私が城の外に出ると、人間の兵士が大勢待ち構えていた。一人の、まだ少年という年頃男の子が前に出てきた。
「魔王だな?」
私は恐怖で言葉が出ない。
「まあいい。魔族は皆殺しだ。」
「陛下!」
その時、レスの部下のマティが私の前に躍り出た。
「陛下はやらせんぞ!」
そう言って、マティは少年にハンマーを叩きつける。しかしそれは、少年の剣に阻まれてしまう。
「そんな。」
マティは、絶望の表情を浮かべる。
「やはりそいつが魔王か。」
少年はそう言ってマティの首を切断する。
「やれ。」
少年が号令をすると、人間の兵士が私に突っ込んでくる。
何本もの槍に貫かれ、私は自分が死ぬことを悟った。
最後に脳裏をよぎったのは、幼いころに亡くなったお父様やお母さまでも、私のために死んでいったレスやマティでもなく、ユウの顔だった。
(そうか。)
そこで私は気づく。ユウのことを考えると何故私はドキドキするのか。何でユウといるだけで幸せな気分になるのか。
(私ユウに恋をしていたんだ。)
何度もデートをした。しかし、自分の感情は恋とは違うと言い聞かせていた。
(告白していればよかったなあ。)
私は消えゆく意識の中、せめて愛しい人に届けと今一番伝えたい言葉を口にする。
「ユウ、愛してる。」
その言葉は、ユウはおろか、誰にも届くことはなかった。
デートに行ったのに、自分の恋心に気づかないとはこれ以下に。
まあ、自分の恋心を否定していたレナちゃんでした。




