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要の悩み2

〈2016/8/31〜〉拍手お礼ページ掲載。


本編『60』読了推奨。

 学園内に併設された食堂で要と桜は向かい合っていた。


 話があるというから同席を許したが、なかなか会話は始まらない。

 話しながら食事をするのは行儀が悪いと言うものもいるが、要は気にしていない。

 桜も同じだろうと思ったが、持っている巾着袋からお弁当を出す気配がない。



「食べないのか? 別に食事をしながらでも良いだろう?」

「いえ、もう食べ終わりました。どうぞ北条君は食事を続けてください」



 そう言ってくれるが、桜が食べ終わっているというのなら、こちらも食事を終えてからの方が良いだろう。

 要は食事の手を早めた。

 その間、桜は膝の上にある自分の手を眺めていた。

 祀莉と違ってぼーっとしている様子はなかったので、何をどう話そうか考えているんだろう思い、桜が話を切り出すのを黙って待った。




 最後の一口を飲み込んで、最後に水を飲んだところで桜が話し始めた。


「あの……すみません、祀莉ちゃんのこと。巻き込んでしまって……」

「いや、俺が甘かった。花園をさっさと学園から放り出しておけば、こんなことにはならなかった」


 彼女の性格からして、普段ならあんな騒動を起こそうとは思わない。

 2人が揃ってしまったから実行に移ってしまった。

 花園百合亜を追い出しておけば、間宮香澄は大人しくしていただろう。




「どんなに必死になっても私の話なんて聞いてもらえなくて……。私だけならまだしも祀莉ちゃんまで……」

「そのことだが、心配する必要はない」


 証拠は揃えてある。

 監視カメラの映像で犯人はあの2人で間違いないと、学園長と確認済みであることを桜に報告した。



「それと祀莉の背中」

「あ! 足跡がついてましたよね。見た時びっくりしました!」

「祀莉が着ていたベストに足跡が残っていた。それを証拠に提示する」

「でも……あれが誰のものかだなんて……」



 要の案に桜は不安そうな顔をする。

 確かにベストについていた足跡は誰のもとは判別しがたいものだった。

 倉庫でベストを拾った諒華は、ただ汚れているだけだと思って丁寧に扱わなかった。

 大事な証拠だと気づいた時はこすれた跡と若干土が着いていた程度だ。



「踏んだのは花園だ。祀莉がそう言っていた」

「私の時みたいに言いがかりだとか……」

「——だから、決定的な証拠を造る(・・)」

「え?」




 祀莉の背中には痛々しい痣。

 これをつけたのは花園百合亜らしいが、祀莉の証言だけで映像の証拠がない。

 ならばと要はある方法に出た。


 花園百合亜が使っている靴を調べてそれと同じ物を手に入れる。

 もう製造も販売もされていないが、そこは北条家の力の見せ所。

 両親に訳を話したら快く協力してくれ、同じサイズの靴が1日で手配できた。

 そして倉庫周辺の土を使って、ベストの同じ場所にくっきりと靴跡をつけた。

 これを見れば、言いがかりだとは言えなくなるだろう。



「それってねつ造じゃ……」

「あいつが足跡を残したことには変わりないんだから良いんだよ。何かあったら北条家の力で揉み消してやる」

「そう……。やっぱりすごいね、北条君。……愛だねぇ」

「…………」



 ふふ、と笑って「祀莉ちゃんのことだもんねぇ」と楽しそうに呟いた。

 どこか寂しそうにも見えたが間を置かずに桜は質問した。


「今までの話とは関係ないんですけど、聞いていいですか?」

「……なんだ?」

「どちらから告白したんですか?」

「────は?」





 思いも寄らない質問に要は固まった。

 


(…………告白?)



 桜は興味津々の表情で要を見つめている。

 星が散りばめられているかのように目がキラキラと輝いて見えた。

 その眼差しを直視することができず、やっと問われた内容を飲み込んだ要はぶっきらぼうに答えた。



「……告白なんて必要ないだろう?」

「え?」

「俺たちは婚約者なんだから。いらねぇだろ、別に」

「……はい? …………え?」



 桜はぱちぱちと瞬きをして要を見つめた。

 冗談ですよね?と聞き返したいところだが、要はいたって真面目に答えているようで、開きかけた口を閉じた。

 はっきりと聞こえたから、聞き間違いではない。



 告白は必要ないとは如何に……。

 いくら婚約者で将来結婚することが決まっているからといって、告白していないなんて……。


 誰から見ても祀莉と要は仲睦まじい理想のカップルだ。

 告白していないなんて……つき合っていないなんて嘘だろう。

 イヤな予感がしつつも桜は恐る恐る、窺うようにもう一度質問した。


「お2人って……恋人じゃないんですか?」

「恋人だろ? 婚約してんだから」

「……」




 桜は額をおさえた。

 あちゃ〜と言葉が出てきそうな面持ちで下を向く。

 要が「どうかしたか?」と声をかけようとすると、ガタッと音をたてて椅子から立ち上がり、両手をテーブルについて身を乗り出した。


 机がなかったら、かなり近い位置まで詰め寄ってきそうな勢いだった。



「確認させてください。告白、してないんですか? 北条君も? 祀莉ちゃんも?」

「だから必要ないだろ?」

「…………あの」


 要が答えると桜はまた黙り、しばし考える素振りをみせた後、意を決したように口を開いた。








「婚約者だからって、恋人ってことにはならないと思います!」


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