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なぜ父は魔王になったのか

 僕は父さんのことが大好きだった。父さんはみんなから英雄と呼ばれていて、いろんなダンジョンを制覇している。パーティーメンバーとも仲が良くダンジョンから帰ってくるとよく遊んでくれた。


 「ノアーー!!父さんが帰ってきたぞー!!」


 「父さんおかえりー!!」


 そう言って父さんの方へ走っていくといつも僕を抱きしめてくれた。抱きしめる力は少しだけ強いけど、父さんの強さを感じられて少し嬉しかった。


 「アレス、おかえりなさい!」


 「ただいま、セレン!」


 僕を抱きしめ終えると父さんはすぐにお母さんを抱きしめた。僕の両親はとても仲がいい。こうして父さんが帰ってくるといつもイチャイチャしている。


 「ノア、聞いて驚くなよ。今回のダンジョンでついに12個目のダンジョンを制覇したんだ!父さんすごいだろーー!」

 「うわーー!!やっぱり父さんは英雄だね!あと一つでダンジョン全部じゃん!」

 やっぱり僕の父さんはすごい。どうしてこんなに強いんだろう。


 それからしばらくして父さんはついに13個目のダンジョンを制覇して帰ってきた。けれどその日は様子がおかしかった。


 「父さんおかえりーー!!ついに13個目のダンジョン制覇したんだね!父さんすごいよ!!!」


 「ああ、ノア ただいま」


 父さんの元気がない。なにかあったのだろうか。


 「父さん何かあったの?」


 「....いや、なんでもないぞ!それよりお腹が空いたな、セレン!ご飯の準備はいつできそうだー?」


 「もう少しでできるわよー!ちょっとまっててね」


 そう言って父さんは元気が戻ったかのように振る舞った。僕はそんなに気にすることでもないかと、ご飯の準備を待っていた。

 寝る前、僕の部屋に父さんがやってきた。


 「ノア ちょっといいか?」


 そう言って僕が座っていたベットに腰をかけた。父さんの表情は少し暗く、何かを伝えようか迷っているような感じだったが、決心したのか、ゆっくり僕に目を合わせ口を開いた。


 「父さんはもしかしたら、2度とノアに会えなくなるかもしれない。母さんとノアには迷惑をかけるだろう。だからもしそうなったら、父さんがノアの父だということは秘密にしなさい。そして10年後の冒険者になれる最低年齢を満たしたら、すぐに冒険者になって、いろんな人と交流し、ダンジョンを制覇しなさい。」


 僕は意味がわからなかった。父さんに会えなくなる?父さんがダンジョンを完全制覇したから冒険者はもうほとんど必要なくなるはずだ。なのになぜ冒険者になるんだ?


 「父さん、意味がわからないよ。」


 「今は意味がわからなくてもいい、これしか言えないんだ。お母さんにはもう説明しておいた。ノア、お母さんを助けてやってな。」


 そう言って父さんは僕を寝かしつけて部屋を出て行った。


 それから父さんは家に帰ることが少なくなった。パーティーのみんなと集まって何か話をしていたり、ダンジョンに向かうようになった。そして1ヶ月後、父さんは魔王を名乗り、世界の敵になった。僕は意味がわからなかった。街の人が父さんのことを悪く言っているのを聞くと、涙が溢れ、父さんは何か理由があるに違いないと言い返しそうになる。けれど僕は何も言わなかった。父さんが秘密にしろと言ったからだ。今思うとあれは僕が息子だとバレれば、何をされるかわかったもんじゃないから秘密にしろと言ったのだろう。そしてあの時言っていた冒険者になれという言葉、あれはきっと何か僕に伝えようとしていたに違いない。必ず真実を見つけ出して、父さんを助ける。僕は強くそう思った。






 あれから10年後、僕は17歳になり冒険者になった。これまでの10年間は体を鍛え、父さんが家に残した魔物や冒険者の知識をまとめた本を読み込んで、今日という日のために準備をしてきた。


 「ここがダンジョンか」


 やってきたのはここ10年でまだ制覇者がでていない、オブセルダンジョン。このダンジョンは30階層あり、1~10階層は初心者向け、11~20階層は中級者向け、そして21~30階層は上級者向けのダンジョンだ。幅広いレベル帯の冒険者に適しているため、13個のダンジョンでも一番冒険者が多い。冒険者が多いのになぜ制覇者が現れないのかというと、最下層にあるボスエリアは1人しか入場できないらしい。1人でボスに挑むバカは流石におらず、上級者もボスエリアを避けて戦っているらしい。しかし父さんはダンジョン制覇を目指せと言っていたので、僕はそのバカになるつもりだ。そのために一刻も早く強くなる必要がある。


 「今日は自分がどこまで行けるのか確認して、明日から本格的に進めていこう。」


 そうして僕はダンジョンへと足を踏み入れた。

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