第一話 夢を叶える絵画
私はもうすぐ古希を迎えようとしている。
そんな私の夢は、ロリータファッションで街を歩く事。
到底叶う夢ではない。
せめて絵画でも見て夢に浸ろうと、美術館に足を伸ばした。
そこでは王室絵画の展示をしていた。
可愛い王女が豪華な椅子に座り、レースのフリルがたくさん施されたロイヤルブルーのドレスを纏っていた。
ーーなんて素敵で可愛いドレス。私も着てみたい。
うっとり眺めていると、どこからかラベンダーの香りがしたかと思うと、ひと吹きの風が頬を撫でていった。
次の瞬間、私は絵の中にいた。
豪華な椅子に座り、ロイヤルブルーのドレスを纏っている。
ーーこれは……どういう事!
何が起こったのかわからない。
もしかして絵の中に入った?
そんな事ってある?
不思議に思いながらも、フリルがたくさん施されたドレスを着てまんざらでもなかった。
ーー神様が私の夢を叶えてくれたのかしら。
ロイヤルブルーのドレスは私にピッタリフィットしている。
しかも若返っている。
夢が叶った幸福感で興奮してるのかしら、なんだか胸が苦しい。
ーーいいえそうじゃない.......もしかしてコルセットが私を締め付けてる?
それにこのドレスよく見ると、赤茶けた血のようなシミがついてる。
部屋の空気もなんだか重苦しい。
ーー嫌!ここから早く抜け出したい!
もがけばもがくほど、コルセットが身体を締め付け身動きできない。
その時、侍女が慌てて入ってきた。
「お姫様、大変です。革命が起きました! 早く逃げてください!」
ーーえ、そんな! 夢は叶ったばかりなのに!
コルセットに動きを止められた私は革命兵士に捕まり、断頭台に連れて行かれた。
断頭台の周りには見物人が大勢いる。
違う。これは断頭台の見物人じゃない。
美術館で、ロイヤルブルーのドレスを着た私の絵を眺めている人たちだ。
ーー助け......て.....
私の叫びは誰にも聞こえない。
断頭台の綱が切られ首が落とされた。
ロイヤルブルーのドレスは、飛び散った血を吸い込み、不穏な紫色へと変わっていく。真っ白だったフリルは真紅に染まった。
絵画の前でカップルが話している。
「ねえ、この絵のドレスってさっきロイヤルブルーじゃなかった?紫色になってる。フリルも真っ赤だわ......やだ!王女の首がない!」
さっきまで座っていたはずの椅子には、今は真っ赤なフリルが施され紫色に変色したドレスをまとっている、私の残骸が残されているだけだった。
その横にはラベンダーの花が生けられていた。
そして絵の題名にはこう書かれている。
『断頭台から戻った王女』




