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HUGスペース物語  作者: さゆまる
妄想編
6/26

第6話:夜の海を泳ぐ光

ユウくんが描き出した「光り輝くクジラ」は、メタバース空間の空をゆったりと泳ぎ始めた。

それは、彼が何年も心の奥底に閉じ込めていた「外の世界に出たい」という願いの形だった。

「すごい……本当に動いてる」

自分の想像力が形になり、誰かの目に触れる。その喜びで、ユウくんの瞳に少しずつ力が宿り始めた。

「これ、他の人にも見せていいかな? このクジラが、他のフロアで迷っている子の道しるべになるかもしれないから」

少女の提案に、ユウくんは少し照れながら、でもはっきりと頷いた。

HUGスペースのシステムを通じて、光のクジラはビル全体のネットワークへと広がっていく。すると、別の部屋にいた見知らぬ誰かから、次々とメッセージが届き始めた。

『そのクジラ、すごく綺麗』

『なんだか、少しだけ眠れそうな気がするよ』

自分の生み出したものが、誰かの救いになる。

それは、この場所が持つ「共鳴」の奇跡だった。

「……ねえ、次はクジラだけじゃなくて、クジラが休めるような大きな島を作ってみたいんだ」

ユウくんの言葉に、カイトと少女は顔を見合わせた。

ただ守られるだけだった子が、自分から「未来」を創り始めようとしている。

虹色のビルの中で、小さな歯車が確実に回り始めた。

少女は自分の物語の中に、新しい一頁を書き加える。

――ここは、絶望を希望の設計図に書き換える場所なのだと。

ユウくんの描いたクジラが、ビルの窓の外に映し出されるメタバースの空を泳いでいく。

それを見上げながら、カイトが静かに口を開いた。

「いい流れだね。でも、物語はここからだ。実は、このビルの『設計図』を見て、ぜひ参加したいと言っている新しい仲間が、もう一人入り口まで来ているんだ」

少女の心臓が、また高鳴る。

一人、また一人と増えていく仲間。それは嬉しいことだけれど、同時に「守らなければならないもの」が増えていくことも意味していた。

「次はどんな子が来るの……?」

「彼女は、音を失った世界で、新しい『音楽』を探しているクリエイターだよ」

新たな出会いの予感。

少女は期待と少しの緊張を胸に、一階のロビーへと続くエレベーターのボタンを押した。

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