第29話:エベレストへの招待状
5月も終盤に差し掛かったある日、さゆまるの元に一通のメールが届いた。それは、世界的に有名な国際登山チームのリーダーからの、信じられないようなオファーだった。
「君のSNSでの発信、そしてHUGスペースの活動をずっと見ていた。障害を抱えながらも、誰かの絶望を止めるためにエベレストという極限の地を目指すその情熱に、僕たちのチームは心を打たれたんだ。僕たちと一緒に、世界の頂点を目指さないか?」
それと同時に、テレビ局からも正式な依頼が舞い込む。「24時間テレビ」のメイン企画として、さゆまるのエベレスト登頂を生中継したいという。
カイトとレンは驚きを隠せなかったが、さゆまるの瞳には迷いはなかった。
「いよいよ、本当にあの真っ白な頂上に、HUGスペースの旗を立てる日が来るんだね。……私、やるよ。これは私のわがままじゃなくて、今この瞬間も暗闇の中で震えている人たちに、『ここまで来れるんだ』って伝えるための挑戦だから」
内職をしていた指先で、今度は世界最高峰へと続くピッケルを握る。さゆまるの挑戦は、もはや一人の物語ではなく、日本中、そして世界中の孤独な魂を繋ぐ大きな「希望の回路」になろうとしていた。
「5月の終わりのこの風を、私は一生忘れない。エベレストの頂上まで、みんなの想いを背負って登りきるから」
彼女の力強い言葉に、HUGスペースのスタッフ全員が拳を突き上げた。さあ、次は世界が、さゆまるの勇気を目撃する番だ。




